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16話 摩耗した在り方

 穣司は途中でザックを拾い、テネブラと共に螺旋階段を降りた。

 外観だけ見ても巨大な建造物であったが、内部は想像よりも広く感じ、地下へと続く螺旋階段の曲線美には、感嘆の息を漏らした。

 いくつか階層を降り、辿り着いた先には三つの扉があった。どの扉だろうかと考えると同時に、繋がれた手をテネブラに引っ張られ、穣司は右の扉に入った。

 中は奥行きのある半月型の部屋に、大きな長机が鎮座している。暖色の灯りに照らされた机には、質素に見える料理が並べてあった。人数分の赤茶色のスープと共に、白いおからのような物体が、皿の上に乗せられている。


 ティア達は壁際に立っていた。

 破れて襤褸切れのようになった服から着替えたのか、誰もが真新しい黒を基調とした服を着ていた。テネブラやアンジェリカ、ティアの着ていた服と似たようなデザインだ。穣司はこれが彼女達の民族衣装なのかなと「へぇ」と言葉を漏らし、満足そうに眺める。

 子供用の衣装はゆったりとしたローブのようなつくりだが、大人の女性向けの衣装はボディラインがはっきりと分かる、タイトなドレスのようなつくりだ。出るところは出て、くびれているところはくびれている、そんな姿が一目で分かる。


 優れた容姿ばかりの彼女達が着るからこそ映えるのだろうか。性欲があれば目が釘付けになっていたに違いないと、穣司は苦笑する。

 元の世界で旅をしていた時に、純白のアオザイを着た女性を、つい目で追ってしまった事を思い出す。あれと同様に彼女達の格好は、きっと男心をがっしりと掴むのだろうなと穣司は感じていた。


 テネブラに手を引っ張られ、穣司は真ん中の席に案内される。

 遅れて入ってきたアンジェリカは、ティア達の様子を見て一度小さく頷き、同様に壁際に並んだ。


「おとーさんは、ここ」


 テネブラの言葉に従い、穣司はその席に座る。テネブラは横の席に座った。

 ティア達は座る気配がなく壁際に立っているままだ。腹を空かせているであろう幼い少女は、物欲しげな表情で料理を見つめている。


「あれ?皆は座らないの?」


「そ、その、私達のような者がジョージ様と食事を同席するのは、失礼にあたるのではないのでしょうか。お気になさらずに、どうぞお召し上がり下さい。わ、私達は後で頂きますので」


 眉尻を下げるティアが遠慮がちに言った。


「いや、失礼にはならないと思うよ。あ、もしかしてそれが君達の文化というか、食事作法だったりする?」


「い、いえ、そういう訳ではないのですが」


「じゃあ皆と一緒に食事するのはどうかな?いや、もちろん無理にとは言わないけどね」


 穣司は良い返事が返ってくる事を願って、出来る限り優しい声色で言った。

 彼女達の食事作法と言うのであれば、気乗りはしないが穣司は従うつもりであった。だが、そうじゃないなら食事は皆で楽しみたかった。というよりも腹を空かせた少女に見られながら、ゆっくり食事をする程、穣司は図太い神経をしていないのだ。


「あの、本当に同席してもよろしいのでしょうか?」


「もちろん!」


 穣司は両手を広げ、ティア達を招くような仕草で言った。


「ありがとうございます!」


 遠慮気味だったティアの表情は花のようにぱっと開く。ついでに頬は赤く染められていた。

 穣司はその様子に若干の戸惑いを覚えながらも安堵した。急いで食事を済ませて、彼女達に順番を譲るという事態は避けられたようだ。


(やっぱりこの世界の神様と勘違いされているのかな。食事の後にでも、その辺りの誤解も解かないといけないな)


 次々と椅子に座っていく彼女達を眺めながら、穣司はそんな事を感じていた。

 瀕死の彼女達を救ったから、そう勘違いされてしまったのかも知れないが、それにしても態度がいちいち大袈裟過ぎる。天上の存在として扱われているようで、穣司は据わりが悪かった。


 穣司がそういった事を考えている内に、全員が席に着く。しかし誰一人としてすぐには食事に手をつけなかった。まるでおあずけ状態の愛玩犬のように言葉を待っている。

 その様子を見て、きっと食前の言葉が必要なのだろうと思っていた。しかし誰も言葉を発しようとはしない。もしかして自分の言葉を待っているのだろうかと、穣司は察した。


「もしかして俺が何か言うべきなのかな?」


 穣司はテネブラに微かな声で耳打ちする。


「うん!」


 テネブラは嬉しそうに答えた。


「あー、えっと……では、食材と料理を作ってくれた人に感謝を込めて、いただきます」


 少し考えた末に日本式に近い食事前の挨拶をする。

 海外の宗教にあるような、神のお恵み云々と言った、食前の祈りの言葉も頭に過った。それを女神ニナに置き換えて話そうと考えたが、そもそも穣司は元の世界でも、祈りの言葉を詳しく知らなかったので断念したのだった。


 穣司が言い終わると、彼女達は手を前に組み復唱した。

 そして穣司が木匙を手にしたところで、ようやく彼女達も食事を始める。


 穣司は用意されていた木匙で、赤茶色のスープを口に運ぶ。

 ざらついた食感が舌を撫で、仄かな酸味の後に豆の甘味が口に広がる。肉や魚とは無縁のお腹に優しい味だ。おそらく体調不良の時でも食べられるだろう。特別美味しい訳でもなく、不味いという事もない、素朴な味だった。


 続いておからのような白い物体を掬う。

 その物体の匙から伝わる触感も、おからのような軟かさだった。口に運んで咀嚼してみると、食感はおからに似ているが、味は殆どしなかった。何を食べているのか謎に感じてしまう不思議さだ。しかし飲み込む時になって、ようやく玉蜀黍(とうもろこし)に似た味が、ほんの僅かに口の中に広がる。

 それは指に嵌めて食べる事もある、円錐形のスナック菓子の後味に似ていた。


 穣司は昔を思い出して顔が綻ぶ。

 ある国に訪れた時にウガリと呼ばれている物を食べた事があった。それは穀物の粉を湯で練り上げた物で、その国では主食として食べられていた。まさにこの白い物体はウガリと似たような同じ味だったのだ。

 その時の穣司は日本から遠く離れるだけで、主食も随分変わってくるものなんだなと感慨深いものを感じた。


 こういった些細な事でも、その時の感情が甦るのが、旅の良いところだ。テレビ、雑誌、インターネット等の記事で、自分が訪れた事のある国の特集を見ると、自分がその国で体験した事をすぐさま思い出せてしまうのだ。それが自分にとって良い思い出だと、表情は緩んでしまう。

 元の世界に帰ってウガリを食べる機会があるならば、今度はきっと異世界の事を思い出すのだろう。この風変わりな褐色肌の彼女達の事を――


「そ、その、お口に合いましたか?」


 不安そうな表情のティアが、上目遣いで言った。


「あぁ、もちろんだよ」


 穣司は笑みを浮かべて言葉を返す。


「あぁ……故郷の味がジョージ様のお口に合って良かったです。上質なマイーズ粉とレンデ豆はあったのですが、他にはあまり食材が無くて簡単なものしか作れなかったのです。本来ならもっと豪勢な料理でおもてなしするべきなのですが……」


「いや、いや、これで十分だよ。ご馳走より故郷の味とか俺は食べたいし、あんまり気を使わないでほしいな。それに俺は皆が思っているような――いや、今は食事を楽しもうか」


 わざわざ食事中に言うべきでもないかと、穣司は口を噤む。

 皆は心から美味しそうに食べているのだ。わざわざ水を差す事はない。それに今はテネブラも横で嬉しそうに食事をしている。この子の前で正体を明かすにはまだ早いだろう。


 そんな中、アンジェリカだけは浮かない顔で食事をしている。

 まださっきの事が尾を引いているのかも知れない。彼女にとって、女神像の胸に触れる男は、それほどまでに嫌悪すべきものなのだうか。

 あるいは彼女の矜持を傷付けたのか。自らの胸に興味を示さないくせに、女神像の胸には興味を示した男に、痴女としてのプライドが傷ついたのだろうか。

 考えるほど穣司はアンジェリカの事が分からなくなっていた。女神像の胸を触るなんて不潔よ!という、乙女の純潔さをアピールする痴女なのだろうか。いや、流石にそれはないだろうとも思うも否定材料も少ない。ともかく、今はそっとしておこうと穣司は問題を棚上げした。


 しばらくして全員が食事を済ませた。

 腹を空かせていた幼い少女は、満足そうに顔を輝かせていた。

 食器を片付けようと穣司が立ち上がると「私がやりますので」と、機敏に片付けをしていたティアに阻止される。

 触れるだけで艶かしい声を上げたティアであったが、こうして片付をしている姿を見ると、家庭的で気立ての良い女性に見える。あの時の様子が嘘のようだ。

 仕方がないので、穣司は椅子に腰を降ろし、手持ち無沙汰にテネブラの頭を撫でた。テネブラは気持ち良さそうに目を細めていた。


 片付けが終わったティア達が、次々と食堂に戻ってくる。

 再び椅子に腰を降ろし、全員が揃ったのを見計らって穣司は声を掛けた。


「話したい事や聞きたい事があるんだけど、時間はあるかな?」


 その言葉に彼女達は姿勢を正した。

 口を開け「はい」と答える仕草を見せるも、音にして言葉は発しなかった。ティアは咳払いをしながら心配そうにアンジェリカに目配せをする。


「え?あ、はい!大丈夫です!」


 心ここに在らずと言った様子のアンジェリカは慌てて答える。


「……アンジー?」


 テネブラが冷ややかな声で名前を呼んだ。


「あ、いや、疲れてるなら明日にしようか?無理はする事はないからさ」


 穣司は事が大きくならないように、場を収めるように言う。

 アンジェリカが気落ちしている理由を辿れば、女神像の件に行き着いてしまう。たとえそんなつもりがなかったとしても、女神の胸を撫で回していた等の発言をされてしまっては、晒し者になってしまうに違いない。そのせいか愛称で呼ぶテネブラに穣司は反応出来なかった。


「も、申し訳ありません!ジョージ様がいらっしゃるのに呆けてしまいました。どうぞ何なりとお聞き下さい」


 穣司の不安をよそに、我に帰ったアンジェリカは腰を折り謝罪する。


「え、あ、うん……。じゃ、じゃあ、この島に来るまでのアンジェリカ達の事を教えてくれないかな?」


「私達ダークエルフは、ここより遥か遠くにあるラシルヴァ大森林というところに住んでおりました。そこは豊潤な魔素(マナ)と巨木で形成される肥沃な地だったのですが、その……大きな争い……いえ、その……そこには居られなった事情……のようなもの出来てしまい、あの……」


「ごめん、言い辛い事だったんだね……。そこは無理に言わなくていいよ、ごめんね」


 言い淀むアンジェリカの事情を察し、穣司は続く言葉を謝罪で遮る。

 内紛か侵略か。そのどちらにしても国から逃げざるを得ない状況だったのだろう。彼女達の中に成人男性がいないのは、今もなお戦っているからなのかも知れない。つまり彼女達は難民だ。穣司にも国を奪われ帰れなくなった顔見知りがいる。

 それに女子供だけで避難するのは過酷な筈だ。言い淀みたくなるような目にあっている可能性だってある。誰だって表に出したくない辛い過去はあるのだ。その証拠にアンジェリカはテネブラの事を気にしながら、何度もちらりと目をやっている。この島で独りぼっちだったテネブラには知らせたくない事柄なのだろう。無理に言わせてしまう形になり、穣司は深く自省する。

 そのせいかダークエルフという聞きなれない単語に反応出来なかった。おそらく人種名なのだろうと勝手に解釈する。


「い、いえ。それで……私たちは故郷を離れ、安息の地を求めて流浪の旅をしていました。そしてある女性に会ったのです」


「女性?」


「はい、謎めいた雰囲気を漂わせた物腰の柔らかな淡緑の長い髪の美しい女性でした。その女性は私達にこう言いました。貴女達の探している地を教えてあげる、と」


「……そう」


 テネブラが遠くを見るような目で呟く。


「そして、この地へ行く手段や方法を教えて下さり、こうして辿り着く事が出来ました」


「……それで、あの獣に襲われたという事か」


「あ、その、はい。……そういう事になってしまいます」


 (おおよ)そではあるが事の発端を把握した穣司は深く息を吐く。

 安息の地を求めて旅をした難民の少女達と、縄張りを荒らされたと勘違いして角と牙を剥いた、病に侵された様子の巨獣。手負いの獣同然だ。攻撃性が増していても不思議はない。

 そのどちらかが悪だとは穣司には判断が出来なかった。アンジェリカ達も獣も、自らの身を守るために必死だったのだ。故にあの惨劇は巡り合わせが悪かったとしか言いようがない。

 ただ、穣司はあの獣を殺さなくて良かったと安堵した。


「……あの獣をどうする?アンジェリカ達が一先ずこの地で暮らすにしても、あの獣がいる以上は危険が伴うよ」


 穣司は遠慮がちに尋ねる。

 言い終わるのと同時に何故かテネブラは、飛び上がるバネのように背筋を正し、不安に苛まれた表情で穣司を見上げる。


「おとーさん、おしおきするの?」


「ううん、俺はしないよ。あの獣にも凶暴になってしまう理由があったんだよ。それに――」


「と、とんでもないです!私達が悪かったのです!あの黒き獣に何かするつもりなどありえません!出来る筈もありませんので!」


 言葉を遮るようにアンジェリカは慌てふためき言った。

 額から冷や汗を垂らし、妙な緊迫感が漂っている。アンジェリカ以外のダークエルフも顔が強張っていた。


「そ、そう?ならいいんだけどさ。ただ、皆が不安にならないかなって気になっていたんだ。あの人懐っこい姿を見ると、もう大丈夫なんじゃないなって気もするんだけど、皆にとっては恐ろしい獣だろうしね」


「大丈夫!」


「大丈夫です!」


 まるで口裏を合わせていたかのように、アンジェリカとテネブラの声が重なる。

 愛称の件といい、いつの間に二人が仲が良くなったのだろうかと、穣司は笑いが込み上げそうになる。

 大丈夫だと言い切れるのは彼女達の危険察知能力がそう感じているのだろう。今の自分には失われてしまったものだが、彼女達が大丈夫だと感じているのならば、きっと安全なのかも知れない。


「そっか、俺にはあの獣も可愛らしく思えるから良かったよ」


「おとーさん、あの獣が可愛いの?」


「うん、綺麗な毛並みだったし、抱き締めたくなる可愛さだね」


「そうなんだ!」


 何故かテネブラは嬉しそうに笑った。

 その理由は穣司には分からなかったが、テネブラの笑顔が愛らしかったので、わざわざ理由を聞くような野暮な真似はしなかった。


「あとは……これからの事かな?とりあえず衣食住は揃っているけど、食材は不足気味なのかな?新たな食材の確保も考えないとね」


「それでしたら私が探しにいきます。私には食材の良し悪しは分かりませんが、食べられる物かどうかくらいは判別できます。せめてそのくらいはさせて下さい!」


 アンジェリカは声を張り、縋るように言う。

 その表情からは並々ならぬ決意を感じる。


「一人で……やるの?」


 アンジェリカから危うさを感じ取った穣司は、彼女の瞳をじっと見据え、静かに尋ねた。


「はい」


 アンジェリカは言い淀む事なくはっきりと答えた。


「今までも……そうだったの?」


「はい」


 アンジェリカは迷いなく言い切る。

 その真っ直ぐな瞳は、ある男の表情に似ていた。穣司は心の奥底に、鍵を掛けて仕舞いこんである思い出が氾濫する。

 その男と子供達はある日を境に故郷を追い出された。離れた地で住まざるを得なくり、それでも男はいつか故郷に帰る事を夢見て頑張っていた。弱さや辛さを見せようとする事なく、訪れる旅行者に笑顔を絶やさない。

 しかし現実は酷で、その結末は惨憺なるものだった。

 穣司は深く息を吐き、思い出と共に氾濫した自責の念を力ずくで堰き止める。


「その、さ……。もういいんじゃないかな?」


「……え?」


「俺なんかが軽々しく言える事じゃないだろうけどさ、きっと辛い事や苦しい事の連続だったと思う」


「い、いえ、そんな……」


「それでも諦めずに、皆を率いたアンジェリカはとても頑張ってきたんだと思う」


「が、頑張ったなど……そ、それが……あ、当たり前の事で……」


 言葉を詰まらせアンジェリカの目尻には涙が溜っていた。

 その様子を見て穣司はやはりかと思った。


 アンジェリカはおそらく二十歳にも満たない。そんな少女が仲間を率いて、遥か遠くの故郷から旅をしてきたのだ。それは辛く長い旅路だったのだろう。その心労は計り知れないし、精神的にも限界に近いだろう。それでも使命感の強い彼女は、この地に辿り着いても尚、頑張ろうとしている。

 何が彼女を突き動かしているのか穣司には分からない。もしかすると故郷に帰るまで自分を律しているのだろうか。それでも、今だけは心を休めてほしかった。せめて、この地にいる今だけは少女らしくいてほしいと願うのは感傷のせいか。


 それに、今にして思えば彼女の奇行は兆候だったのだろう。女神像の件や痴女紛い行為は、情緒不安定になっていたからだ。アンジェリカに限らず、彼女達が涙をよく流すのは、心が摩耗しているからだろう。そんな人達を変な目で見ていた穣司は自分に呆れ果てる。


 穣司は席を立ち、アンジェリカの下へ向かう。

 アンジェリカは椅子をずらして立ち上がろうとするが、穣司はそれを制止する。そして椅子に座ったままの彼女の横に屈み込み、彼女の膝に添えられている手に、自らの手を重ね置いた。


「これからも頑張ろうとするアンジェリカの気持ちは尊重したい。でもね、今だけはゆっくり休んでほしいと俺は思うよ」


「わ、私はそれが、使命……なので、それが当たり……前の……事で、それに……」


 アンジェリカは言いながら嗚咽した。瞳からは涙が溢れ、止めどなく頬に伝い落ちる。


「アンジェリカは凄く頑張ったんだよ。だから、せめてこの地では肩の力を抜いてほしいな。俺は自然体で皆がいてくれた方が嬉しいよ。それにさ、一人でじゃなくて、皆で一緒にやろうよ。もちろん俺に出来る事なら手伝うから、ね?」


「あ……、うぅ、うぁぁぁぁぁぁぁ」


 柔らかな声色で言う穣司の言葉に、アンジェリカは堰を切ったように声を上げた。椅子からずり落ちるように膝を地面につけ、親に甘える子供のように穣司に抱き付き、大粒の涙を流した。

 穣司はアンジェリカの背中に手を伸ばし「よし、よし」と、あやすように撫でた。その姿に感化されたのか、ティアや子供達も涙を流す。


 いくら肉付きが良くてもまだ子供だ。おそらく両親も失くし、甘えられる人もいなかったのかも知れない。だから、せめて今だけはこの子達に安らぎが得られるますようにと心から願った。


 その瞬間、自らの体から淡い光が溢れ出し、煌々とした粒子が舞い上がり、食堂に充満した。

年末なので、少し更新が遅れてしまうかも知れません。

出来るだけ1週間以内に書けるように努力します。

※12/26、唐突に感じた箇所の修正と書き足しをしました。

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