第50話の4『防御』
「う……うううぅ……」
ジ・ブーンが顔をおさえてうろたえた拍子、囚われていた姫様が解放された。幸い、姫様にケガなどはないようで、こちらへと自力で戻ってきてくれる。
「姫様!こちらへ!」
「……は……はい!」
俺が呼ぶ方へと姫様は勢いよく泳ぎ、そのまま俺……じゃなくてルルルに抱き着く形で後ろに隠れた。それはともかく、先程のヤチャの攻撃はジ・ブーンに効果あったと見られ、相手は更に化け物を集めて摂り込み、急いで体の修復を図っている。
そんなジ・ブーンの姿に俺は目を凝らしているのだが、まだ探しているものは発見されない。ここで追い込んでいけば、一部を除く人体パーツは全て、ジ・ブーンの本体へと集まると考えたのだが……。
「はあ……はあ……人魚……返せ!」
敵の目的は姫様だった訳で、こちらに姫様がいる限りは必殺技を出すことはできないだろう。という俺の憶測に反し、ジ・ブーンは両腕をロケットパンチさながら切り離すと、指さすようにして俺とヤチャだけを両側から押し潰そうとしてきた。ひとまず、俺はヤチャの腕を一方へ向けて対処しようとするが、両方同時には攻撃が撃てない!しまった!
「まずい!逆からも来るぞ!ヤチャ!」
「勇者、仲間、潰す!」
「……はああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺が成す術なく目を閉じてしまうと、それをこじ開けるようにヤチャの声が響き、すさまじい光が放たれた。すぐに俺も思い直してマバタキをし、何が起こったのか確認する。
ヤチャは俺が導いた方の腕と、ねじ曲がった片腕から同時に衝撃波を放ち、ジ・ブーンの両腕を撃墜してくれた。そんな無茶をしたヤチャの体勢といえば、重力のある場所かつ正常な身体では到底とれないクネクネしたポーズであり、一周まわって逆にスタイリッシュである。かっこいいぞ!ヤチャ!
「うううぅ……」
ジ・ブーンは苦しげな声をあげつつ両腕を体へと戻し、完全に防御の姿勢へと入った。四天王が勇者にしか倒せない以上、このまま耐え抜けば相手は回復を図れるという魂胆であろう。一難去った今、ここで待ちに待った声が俺たちに入って来た。
(……よし!)
きたっ!仙人のテレパシーだ!つまり、ルッカさん達は城の頂上……海面上にいる『ジ・ブーンの肺』と戦い、うまくやってくれたのだろう。同時に、俺はジ・ブーンのみぞおちの辺りに、青色のオーブが装着されているのを見つけた!あとは、他のメンバーを信頼して待つのみ。ギザギザさん!クジラ丸さん!頼みます!
第50話の5へ続く






