第49話の3『決行』
「お願いと言いますと、それは……」
王子様への頼み事の途中で、やはり俺を含めて時間が停止した。四角いウィンドウが俺の前に表示され、5つの選択肢が表示される。
『1・城の頂上へと向かう 2・城の最下層へ向かう 3・シャンデリアを落とす 4・正面突破 5・城に穴を開ける』
王子様が相当な強さとはいえ、俺と王子様の二人では巨人を倒せる気がしない。となれば、正面突破は現状だと決行できない。また、ここで『シャンデリアを落とす』選択肢がある以上、シャンデリアを落とすという行為は可能だと思われるが、それで敵を倒せるかというと解らないし、姫様を巻き添えにしてしまう危険性がある為に避けたい。
それぞれ、行動の一つ一つでは効果が薄くとも、物事には順序立てというものがある。最初にやらねばならないことが決まれば、おのずと次にすべきことが見えてくるはず。まだ手探りの状態だけど、今の段階でできることは、恐らく……これだ!
『2・城の最下層へ向かう!』
俺が行動を決定すると、停止していた時間が進み始めた。城の中をここまで上がってきて、また城の下側まで移動するというのも無駄骨に思えてしまうが、ここまで来たからこそ解った事もある。だから、あえて今度は下層へ向かわないといけない。
「実は、この城の外には強い水流が渦巻いていて、それは城の下層部から発せられているようなんです」
「下まで戻り、水流を止めるのかな?脱出より先にまず、妹を助けたい気持ちではあるが」
「それでですね。すみません。おこがましいとは存じますが……あの敵と姫様のことは全部、こちらに任せていただけませんか?」
「……ほう」
ここは虚勢だろうが、強気に出ねば相手を心配させる。先に謝ったのはなんというか……それなりのことをする予定なので、後々に向けてのフォローである。
「100数えてくれ」
「……?」
「僕たちが通って来た隠し通路は、城の地下にある脱出通路まで一直線に繋がっている。下層へ向かうには、それほど時間はかからないだろう。城の最下層に何があるのか、僕には解らない。しかし、君がやるというのであらば、100数えてほしい。その間に必ず、成功させる」
「あ……ありがとうございます!」
王子様一人に最下層へ向かってもらう……というのが、最もお願いしにくいところだったのだが、そこは詳しく理由を聞かずに快諾してくれた。そうと決まれば、すぐにでも動き始めなければ俺の方がまごついてしまう……。
「……勇者君。健闘を祈る」
「……ご武運をお祈りします」
この言葉を合図にして王子様は殻の中へと入り、コマのように回りながら全速力で隠し通路を進んでいった。俺も目を閉じて、マップから最短ルートを探し始める。ダンスホールの下の方には大きな出入口がある。ここから……こうして……これで、ルートは繋がった。さあ、作戦開始だ!
第50話へ続く






