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第49話の2『思慮』

 今まではジ・ブーンが小さくなった姿しか見ていなかったから、ジ・ブーン本体の大きさを目の当たりとして頭が真っ白になってしまった。王子様に肩を突かれるまで、俺は思考停止したままボーっとしていた。


 「……妹の姿が見えない。別の窓に移動してみよう」

 「そうしてみましょう……」

 「……特攻せずに済んだのは君のおかげだ。執事の素質があるんじゃないか?」

 「ルッカさんの現在の胸中は、お察しします……」


 ジ・ブーンのいる部屋は城の3分の1以上を占める円柱状のもので、俺たちは20度ほど移動した別の場所から室内をのぞいてみた。依然としてジ・ブーンの体で視界の大半は隠されているのだが、今度は隙間から部屋の広さがうかがえた。水の揺らめきで反対側の壁が見えないが、マップと照らし合わせて考えると、少なくとも野球場レベルの広さはあると思われる。


 「やつは、どうやら海の生き物ではないようだ」

 「そうなんですか?」

 「どこを見てもエラがない。ヒレもない」 


 王子様にもエラとかヒレとかないんですが……それはおいておいて、今度は視線を上に移動させてみる。部屋の上半分には水がないようで、水面の上にはジ・ブーンの上半身があるようだ。その更に上には特大シャンデリアらしきものがあり、電気の輝きとも違うナチュラルで澄んだ光が並んでいる。さっき王子様が倒した為、ジ・ブーンは片手がないようだけど、もう片方の手には何かが握られている。


 「あれは……マリナだ!」


 水の中で視界が悪い俺に代わって、王子様がジ・ブーンの腕に掴まれている人の正体を突き止めてくれた。ただ、今にも捕って食われるといった雰囲気ではない気がする。


 「……どうやら妹が、化け物に怒っているようなのだが」

 「かなり危険な状態なん……ですかね」

 「最近、マリナのやつがルッカに似てきた気がするんだけど、兄として喜ぶべきだろうか……」

 「お兄ちゃん心は複雑ですね……」


 まあ……例え話ではあるが、ルルルがヤチャとばかり仲良くなって、俺の言う事を聞いてくれなくなったら、それは確かに少し寂しいかもしれない。などと呑気な会話をしている場合ではない。囚われの姫を救い出すには、正面突破ではキビシイ。何か策を練らねば……。



 「……僕に考えがあるんだ。単純な案だが、聞いてくれるか?」


 「えっと……はい。もちろん」


 「泳ぎの得意な僕が、水中から狙う。人間の君は水のない部屋の上部から。相手は腕が一本の上、もう片腕も妹を捕まえていて塞がっている。二手に分かれれば不意をつけるだろう」


 ……あっ、しまった!まだ王子様は、俺に戦う力があると勘違いしている!死に物狂いでいけば囮にくらいはなれるかもしれないが、ジ・ブーンが持っているオーブの場所すら解らない以上、勇者の俺は足手まといにしかなりそうにない。すぐに言い訳をしようとするも、それより先に王子様は頭をかきながら話を続けた。


 「本来ならば敵の上から狙うのが意表を突く上でセオリー通りなのだけど、部屋を水でいっぱいにはできないだろうからね」


 「……」


 その言葉が、なぜか俺の思考に引っかかった。待てよ。今まで、ここまでに体験したこと、知り得た情報、城内のマップを再確認する。それらを踏まえて、俺の予想が全て正しいならば……。


 「……どうかしたのかい?」


 「……あ……あ、すみません。いえ、先に謝っておきます。すみません。王子様、お願いがございます」


 「……?」


 自信は半々だ。うまく行く保証はない。でも、現時点では他に方法がない。俺は自信を持つよう自分に言い聞かせ、王子様に面と向き合った。


第49話の3へ続く

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