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第48話の3『突撃』


 伝説の武具・シェルピラーが保管されているという秘宝管理室は二つほど上の階にあり、部屋の近くまでは隠し通路を使って隠れながら進むことができた。しかし、盗難防止の都合から隠し通路は秘宝管理室まで繋がっておらず、その付近にある曲がり角にて俺たちは廊下へと出る必要が生じた。


「ちなみに……ドアにカギはかかってるんですか?」

 「なに。叩いて壊れないものはないさ」


 いざという時は壊す。そのような頼もしい言葉を王子様よりいただき、俺は安心して秘宝管理室のドアへと向かった。なお、カギはかかっていなかったからドアは壊されずに済んだ。王子様と二人で石のドアを押し開ける。すると、目が眩むほどの光が俺たちを襲った。


 部屋の中には金銀財宝が積み上がっており、それらに埋もれる形で宝箱が設置してある。この際、『この中の一つくらいなら持って行ってもバレないだろう』とか、『これだけあれば一生、遊んで暮らせる』とか魔が差しそうなものだが、いざ目の当たりとすると価値あるものに近づくことすら怖くてできない。もし無くなったものがあった場合、盗んだと思われるのが嫌なのである。


 「俺、ここで見張ってます」

 「解った。少し待っていてくれ」


 王子様がガシャガシャと探し物を始め、俺は廊下に敵が来ないかをうかがっている。その中で、ふと王子様に室内へと呼ばれた。


 「いいものがあるんだ!友好の証として譲渡しよう」

 「なんですか?」


 王子様の持っているものは黄金色の浮き輪みたいなもので、質感は浮かびそうにないが見た目は浮きそうで中和されて結局は沈みそうである。試しに体を通してみると……ほほう。これは中々。


 「魚族の中でも、泳ぎの不得手なものがいる。水泳の補助器具なのだが、その中でも少しレアなものだ」


 「わぁ。借りちゃっていいんですかぁ?」


 「急いで、妹を助け出さねばならないからね」


 ずっと王子様に掴まっている訳にもいかないし、これがあれば機動性の面は向上すると見られる。王子様の探し物も見つかったようだし、いざ上の階へ出発……。


 「……」


 ドアの方を見たところ、なにやら見た事のある姿があった。あっ!あれは……手の化け物だ!


 「伸びろ!シェルピラー!」


 王子様の持っている真っ白い棒がグンと伸び、手の化け物を突き刺す!化け物を廊下の壁に

叩きつけ、その隙に俺たちは秘宝保管室から脱出した。俺の装備している浮き輪のようなものは浮くでもなく沈むでもなく、俺の腰のあたりで緩やかに回転していて、それに掴まっていると思い通りの方向へ進むことができた。


 「このまま攻め込もう!僕に続け!」

 「前から来ますよ!」

 「僕に任せてくれ!押し退ける!」


 王子様はグルンと棒状の武器を振り回し、通路の向こう側から襲ってきた化け物を一発で仕留めた。その先は縦方向に強い水流がある場所となっており、ここから上の階へと進めるようだ。


 「……むっ!はあ!」


 上昇していく俺たちの方へ、砲弾みたいなのが飛んできた。それを王子様が二、三発、打ち退ける!その後、残りの何発かが迫る!それも王子が難なく打ち払った。そのはねのけられたものを見る。どうやら、爪か何かのようだ。


 「大きな敵がくる!気をつけるんだ!」


 敵……というか、大きな足の裏が上から降ってくる!それは通路をふさぐように迫っており、隙間から通り抜けるのは無理そうだ。細いシェルピラーで突いても叩いても、こればかりは打開できそうにない。


 「どうしますか!逃げますか!?」

 「いや、逃げるつもりは毛頭ない!」


 グルグルと武器を回転させ、それを投げ出すと王子様は殻にこもってしまう。しまった!俺は防御する術がない!そう焦っている俺の思いとは別にして、王子様は投げ出した武器の回転を利用して、殻にこもったまま自分を撃ち出させた!


 「僕の覚悟を受けてみよ!シエルストライクだ!」


 バチンと打ち飛ばされた王子様は弾丸さながらで、それを受けた足の裏は皮膚を突き破られるか骨を砕かれるかの勢いで、崩れた天井の向こう側へと消えていった。


 「妹も、君も、僕が守る!安心してくれ!」


 これが……本場のお兄ちゃん力!



第49話へ続く

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