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第46話の3『接近』

 俺は非力の限りを尽くし、目玉の化け物に殴り掛かる。その殴ったショックで目玉の化け物は壁に激突し、体ごと目を回している。とどめ……といきたかったが、勢い余って俺も変な方向へ投げ出されてしまい、かといって俺だけの力では素早く動けない。そのすきを見て、敵は隠れるように先の角を曲がった。


 「姫!もうちょっとで倒せるかもしれません!」

 「つかれましたが……がんばります!」


 姫様が追い付くのを待ちながらも、俺は目をつむって曲がり角の先をマップで確認する。この先は……行き止まりだ!


 「あの角の先で追いつめましょう!」

 「……よいしょ!」


 姫様が疲れているのは目に見えて明らかだが、ここで引き返しては意味がない。むしろ、姫様が自分で殴りに行った方が効率はいいのだが、不気味な目玉を素手で攻撃してもらうのは生理的に無理かもしれない……。


 「ど……どちらでございますか?勇者様……」

 「化け物は、あちらの角を左に!」


 そして、その先は行き止まりだ。俺は武器……ペンダントを右手に握りしめ、今にも拳を振りぬこうという構えで姫様と一緒に角を曲がった。目玉の化け物の後ろ姿が見える。その向こうは壁……行き止まり……のはずなのだが、その闇の中に目玉の化け物は消えていった。何かがおかしい……。


 「すみません!姫様、ストップ願います!」

 「……ふえ?」


 とはいえ、地に足が着いているわけでもない為、すぐには停止できない。減速している俺たちを待たず、今度は向こう側の壁が俺たちの方へと動き出した!あれは壁……じゃない!道をふさぐように待機していた大きな口の化け物!つまり、目玉の化け物はおとりだ!


 「な……何度もすみません!姫!バック願います!」

 「すぐには無理です~」

 「それか、すぐに逃げてください!」

 「どうしてですか?もう少しで倒せるのでは……」

 「びゃゃあああああぁぁぁ!ごはごはごはごはああぁぁぁ!」

 「うわあああぁぁぁ!きたああぁぁぁ!」


 口しかない姿の化け物は自慢の口を開いたまま、声にならない声を発して俺たちの方へと迫る。完全に罠にハメられた!この状況で、俺が足をバタバタさせてもタカが知れている。せめて姫様には逃げてもらいたかったが、俺を包んでいるシャボンが視界を妨げている為、あまりにも姫様に現状が伝わっていない!


 化け物の口には歯が不揃いに並んでいる!危ない!俺は咄嗟に姫を両手で押し出した。俺を包んでいた泡は噛み砕かれ、大量の冷たい水が俺の体を包む。同時に口の化け物が俺に覆いかぶさり、全ての光を奪い去る。水に襲われ、もう呼吸も出来ない。流されていく。奥へ、どこへ続くかも解らない闇に飲み込まれてしまう直前、何か脆くて柔らかそうなものが俺の手をとった。


 でも、それが何かは、俺には解らなかった。


第47話へ続く

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