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第46話の2『逃亡』

 水流に流されないよう壁や管を掴みながらの移動となる為、俺の移動速度は常人のそれである。到底、姫様の泳ぐ速さにはついていけないが……このまま行けば、下の階へ降りた場所で会えるはず。そう予想した場所に先回りし、薄暗い通路の先をうかがった。


 「……誰かっー!誰かー!」


 姫様が悲鳴を交えて叫びながら、助けを求めるように手を前に出して泳いでくる。そんな彼女が俺を見つけ、少しばかり安堵の表情を見せた次の瞬間、姫様を追って迫る目玉の化け物が見えた。なんだあれは!目玉だけで俺と同じくらいの大きさがある!全身目玉の巨大目玉だ!


 あまりの敵の不気味さに俺も逃げ出したくて仕方なかったが、逃げ出したところで俺が姫の足手まといになるだけである。それに、周りに使えそうな武器はないし、すでに姫様は俺の後ろに避難している。何も対策は考えつかない。


 「くるなああぁぁぁ!うわああああぁぁぁ!」


 このままでは化け物に殺される!そう思った俺は、いつかと同じくペンダントで殴りかかっていた。何か、殴ってはいけない柔らかなものを殴ったような気持ちの悪い感触。ボンッという音。つむってしまった目を開く。すると、化け物は白目を充血させながらフラフラとよろめいていた。


 「……あ……あれ?」

 「勇者様……がんばってください。応援の限りを尽くします故……」


 こいつ、さては弱いぞ!自分より弱いやつを見つけた弱者の気持ちといえば、それはそれは拍子抜けである。姫様の応援にそえるよう、倒すなり逃げるなりしないと。俺が姫様の手をとって逃げようとしていたら、逆に化け物の方がクルクルと回りながら撤退を始めた。しめた!このまま俺たちは仲間の元へ逃げて、みんなで捜索して敵を……。


 「……勇者様。あの魔物は、よろしいのですか?」

 「俺は姫の身が第一。そう思っております……はい」

 「クジラ丸さん……大丈夫でしょうか……」


 敵は、きっとクジラ丸さんが海中で口をパクパクしていた時に入り込んだのだろう。そうだ。あれが侵入しているということは、クジラ丸さんの体内で悪さをする可能性があるということだ。移動手段を失うのは許容範囲だが、仲間の危機を見過ごすわけにはいかない。追いかけないと……。


 「俺だけでは、あれに追いつけない。君を一人にするわけにもいかない。ごめん!手伝って!」

 「……は……はいっ!かしこまります!」


 敵が一体とも限らないし、せめて俺だけでも姫様の近くにいた方がいいだろう。まだ敵の後ろ姿が見える内に考え直し、俺たちは目玉の化け物を倒しにかかる。姫様が俺の入っているシャボン玉をグッと押し、俺は前方を確認しながら敵の逃げた方向を報告する。


 「その先を右に行きました!」

 「はいっ!」


 姫様に力仕事を頼むのも気が引けたが、俺の気が引けているのを差し引いてもスピードは十分である。もうすぐ追いつく……追いついた!


 「追いついたぞ!」

 「えーいっ!」


 姫様が俺の入っているシャボン玉を強く押し出し、その勢いのまま俺は目玉の化け物に殴り掛かった!


 「くらえええええぇぇぇ!」

                                  


第46話の3へ続く

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