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第44話の4『発射』

「私どもが参ります。メダカ殿!コンブ殿!」


 ルッカさんたちが化け物の撃退に乗り出るが、敵が吸い付いているクジラ丸さんの尾びれまでは遠い。今にも化け物はクジラ丸さんから離れ、赤い海水へと逃げ込もうとしている。クジラ丸さんの肌がライトさながら金色にピカピカ光ってはいるものの、あの中に入られたら照らし出すこともできない。


 「まずい!逃げられる!」


 そう叫ぶ俺の方を振り返ることもなく、敵が今まさに姿をくらました……次の瞬間だ。何か大きなものが化け物を泡の中へと押し戻した。それは船……というよりかは、なかば沈没船の成りである。それが、果敢に化け物へ体当たりを仕掛けている。


 「ぎゃばば!助けに来たぞ!クジラ丸さんよぉ!」

 「……あっ、ギザギザ!」

 「ギザギザさん?あっ、ほんとだ!」


 クジラ丸さんの背にいるルッカさんが船に乗っているギザギザさんを見つけて叫び、おくればせ俺もギザギザさんの姿を確認した。ギザギザさんの船に体当たりされた化け物は大量の血をまき散らしているが、まだ姿は隠れていないし追い打ち可能だ。颯爽と船から飛び降りたギザギザさんが、ひよっている化け物へ向けてパンチを向ける。


 「念願かなって、王子のカタキうちだぜ!くらえ!ギザギザウロコパンチ……」

 「ギザギザ!後ろだ!」

 「ぎょえ……がああぁぁ!」


 ギザギザさんのパンチさえ入れば、あの血を出している化け物は倒せたかもしれない。が、ギザギザさんの船を追って、大きな腕みたいなものが血の海から飛び出してきた。その腕の化け物も視界に入りきらないほどの巨大さであり、腕の一振りでギザギザさんもろとも船は弾き飛ばされてしまう。ルッカさんの声が届く間もなく、ギザギザさん達は赤い海水の中へと押しやられた。


 新たに登場した腕の化け物に守られ、血を出している化け物は逃げ去ってしまう。血の化け物がいなくなったからといって、未だに俺たちの状況は良くなっていない。腕の化け物はクジラ丸さんに殴りかかり、それは間一髪で回避してくれる。


 「クジラ丸さん!その方向に真っ直ぐ、海面は遠くありません!」

 「そ……そうなんだ!早く……息を……うっ!」


 ルッカさんのナビでクジラ丸さんは進水するが、その勢いはガクンと消える。クジラ丸さんの尾が、腕の化け物に掴まれている!


 「はなせ!はなせ!ああぁぁぁ!」

 「この……化け物め!受けてみよ!清流槍!」


 ルッカさんの投げたヤリが魚雷のように発射され、腕の化け物に直撃。それなりにダメージは見て取れる。でも、人差し指を弱らせる程度におさまり、クジラ丸さんの体は自由になっていない。


 「はなせえええぇぇぇ……んん?んんん?」

 「……ん?どうしました。クジラ丸さん」

 「いや……なんだか。変だなあ」


 急にクジラ丸さんが黙るものだから、ついに窒息したのかと心配の声をかけたのだけども……そうじゃないらしい。どうしたのだろうか。戸惑いがちにも、クジラ丸さんが続ける。


 「……絶対に弾切れだったはずなんだけどなー。なぜか一発補充されたんだよなぁ。なんで?」

 「いいじゃないですか!?撃っちゃってください!」

 「そ……そうだ!おおぉぉぉ!くらええええぇぇぇ!」


 どこかからリロードされた謎の弾をクジラ丸さんが大砲から発射。それはトルネードの如く回転しながら飛び出し、腕の化け物にヒット。さすがの化け物もクジラ丸さんの尾から手を離す。やった!


 「よーし!海面に行くぞおぉぉぉ!」


 すぐさま、息継ぎのためにクジラ丸さんは海面を目指す。その最中で、俺は敵に当たった砲弾の姿を垣間に見た……。


 「あ……や……ヤチャじゃねーか!」


 俺は意図せずして、仲間を砲弾に使ってしまったのだ……が、この状況でクジラ丸さんを止めることもできない。今は、ただ、この言葉を彼に捧げよう。ごめん……。


第45話へ続く

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