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第43話の2『身の上話』

 ホッキ貝館から出ると、すでにクジラ丸さんが街の上で待機しているのが見え、岩で出来たベンチの近くには乗務員の方々も待機していた。ぼーっとしているメダカさんとコンブさんの横で、ルッカさんが宝箱のカギ穴付近にある小穴をのぞいている。


 「ルッカさん。その中に姫様が?」


 「ええ。ジ・ブーンの目的が姫様を食すことであれば、金の宝箱ごと胃に入れるわけにはいかないでしょう。運搬作業にお手間となりますが、クジラ丸さんの内部では箱を開放する予定でございます」


 「……箱入り娘ですね」


 「……まごうことなき箱入り娘でございます」


 内側にいる姫様が宝箱の覗き穴を閉め、のぞいていたルッカさんも足を立てる。まだ俺の仲間が到着していないとあって、その沈黙の中でルッカさんは俺に語り掛けた。


 「……これは、まことに私的な事情ではございます。勇者様には無関係と前置きさせていただきます」


 「ええ。どうされました?」


 「いえ、勇者様よりギザギザのお話をうかがいまして、私にも考えたことがございます。血の海の魔物を討ち取るに至れば、ギザギザが国へ戻ってくるかは解りません。しかし、王子様が行方不明の現状、旧友は彼の他におりません」


 「俺が会った時、ギザギザさんは魔物の事より仲間の飢餓を訴えていましたが……まあ元気そうでしたよ」


 「ありがとうございます。王子様を死に追いやった罪の意識か、国民からの非難を恐れてか、ギザギザは自分から牢獄へ入り、あまや脱獄したと思いきや仲間と共に船を乗っ取り失踪。乱心に任せて命を捨てに行ったのではと気が気ではなりませんでした……」


海は広いからなあ……消息不明だった親友が生きていたという事実だけでも、ルッカさんとしては有益な情報だったのだろう。もしギザギザさんに出会えていなければ、ここまでルッカさんも惜しみなくは協力してくれなかったかもしれない。


 「待たせたな。勇者」


 ルッカさんの事情をうかがっている内、遅ればせゼロさんたちが到着した。待たせたのはゼロさんじゃなくて仙人なのだが、すっかり仙人もキレイに……キレイ……いや、金ぴかじゃねーか。


 「なんで仙人、全身キンピカなんすか……」

 (さあ……)

 「おお!金ぴか!お前、ボクの仲間だな!」


 仙人を見つけたクジラ丸さんが、なにやら嬉しそうに尻尾を振っている。自分と同じ金ぴかぴかの生き物に仲間意識を持っているようであり、ゆえに金ぴかに塗られた理由も自動で判明した。


 「血の海だろう?すぐ着くぞ!どんどん乗り込めー!」


 どうやって乗るんだろう……などという疑問が生じた矢先、クジラ丸さんは俺たちの方へと突っ込んできた。その大きな口は土や海水ごと俺たちを飲み込み、俺たちは心の準備もなく体内へと摂り込まれたのだ……。


第43話その3へ続く

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