第42話の4『最終問題』
『このクイズの答えはチワワです……が、勇者は、どうする? 1・こたえる 2・まちがえる 3・かえる』
まさかの、クイズの答えまで教えてくれる親切さである。が、その上で更に問題を投げかけてきた!ということは……これ、正解しちゃダメなのか?そもそも、3つ目の『かえる』ってなんだよ。黙って帰ったら、さすがに可哀そうだろ……。
……いや、待てよ。そうだ。恋愛ゲーム主人公の俺には解る。これは、相手の好感度を上げる選択肢だ!正解を言えば勝負には勝てるが好感度は下がる。不正解ならば好感度は上がるかもしれないが勝負に負ける。なぜ、恋愛ゲーム主人公の俺が、クジラを攻略せねばならんのか。そんなことは、この際だから置いておく。
さて、どう答えたものか。正解しても不正解でも角が立つ。ならば、そのグレーゾーンを狙う他ない。どうする。ならば、俺だったら……本当の正解は、これだ!
『3・変える!』
「えっと……えーと……確か、チ……チクワ……かな?」
「……ファイナルアンサー?」
「……ファイナルアンサー!」
「……ひゃはは!不正解!残念!敗北者!でも、惜しかったぞ!正解はチワワだ!人間!」
「負けた……やはり、クジラ丸さんには敵わなかった。帰ろう」
「勝手に諦めるなタラコ!諦めるなんてバカだタラコ!」
モズクさんに触手で叩かれながらも、俺はホッキ貝館へ帰ろうと提案する。
「帰れ帰れ!クイズ下手な勇者め!」
モズクさんにはバカと言われ、クジラ丸さんにも帰れとののしられ散々である。選択肢の結果、『変える』ではなく『帰る』になってしまったのは極めて誤算であり、好感度上げに失敗して恋愛ゲーム主人公としてプライドも微妙に傷ついたが……まあ、ひとまず俺たちは暴れるクジラ丸さんを落ち着かせてホッキ貝館へ戻った。
客室には泥だらけの仙人が先に帰ってきていて、部屋のベッドや椅子に座り込んだ仲間たちの視線は俺に向いている。ただ、その目に俺を責める意思は感じられず、ルルルからも少し優しい言葉が出た。
「一文字だけ間違ったとはいえ、よく知ってたんよな……」
「勇者は、色々なことを知っていて凄いな」
「はい。すごい……です」
「まあ……タネを明かせばカンニングなんですが、ここ一番でしくじったな。とにかく、クジラ丸さんがダメとなれば、別の乗り物を探さねば。あとで、その件については俺が交渉に行きますよ」
責任問題について表明したところ、部屋の外からドアを叩く音がした。近くにいたヤチャがドアを開くと、真面目な顔をしたルッカさんが現れた。
「皆様、お集まりでしたか。この度、クジラ丸さんより伝言を預かりましたので、ご報告に参りました」
「……クジラ丸さんからですか?」
「今回は特別に勇者様一行を乗せて頂けるとの事と、いずれまたクイズ対決するようにと。大変、ご機嫌がよろしい様子でございました」
「……そうですか」
俺は選択肢を間違えたのだと考えていたが、これは……どうにも正解だ。ルッカさんの報告を受けて、俺たちは脱力するように息を吐き出した。そういや、報告なら立ち会っていたモズクさんが来てくれていいはずだけど、なぜルッカさんが来てくれたのか。つかぬことを聞いてみる。
「あの……モズクさんは、どうされました?」
「王族の乗り物を無断で運転した為、短めの謹慎となりました……」
ああ……。
第43話に続く






