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第42話の3『クイズ2』

 ヤチャの勉学に対する意識は不明だが、旅立ちに際してナビゲート役を担ってくれた人物である。この世界での一般教養は備えていると見ていいものの、記憶喪失という壁の前には全てが無意味と言っていい。


 「絶対に答えられない問題を出すぞ!準備いいか?」

 「……はい」


 先方の2人に呆気なくクイズを突破されたせいか、クジラ丸も難易度を上げていくと息巻いている。もはや、これ以上の難題はヤチャにとってオーバーキルなので止めて頂きたい……。


 「問題!パワーアップの塔の高さは?」

 「……はい」


 それを手足で登ったのはヤチャであり、ゆかりはあるが……そんな高さなんて知っているわけがない。こっそり、俺はルルルに答えを聞いてみた。


 「知ってる?」

 「知らんがな。じじいだって知らんよ」


 ヤチャに告げ口する告げもなく、もはや解答は任せる他ない。最悪の場合、クジラ丸に乗ることを諦める気持ちで、俺は静かに事を見守った。


 「……解りま……せん」

 「えっ……本当に?何にも答えないのかぁ?」

 「……解りま……せん」

 「……んん。正解」

 「……ええ?何で?なんでですか?」

 「うるせー!次、お前で最後だからな!とっておきだぞ!覚悟しろよぉ!」


 謎会話の末、ヤチャは正解したらしい。その理由を問いただしかったが、そもそも塔にいた仙人もルルルも知らないって事は、未だに誰も知らないって事なんじゃないかと推測した。


 「次の問題は、普通そうなお前が答えろよ!」

 「ええっと……はい」

 「問題!ツラヌグスタのヒュージヒッジにあるブランオラノーダは?」

 「……え?なんって?」

 「ツラヌグスタのヒュージヒッジにあるブランオラノーダは?」


 俺に回答権が回ってきたので聞く耳にも気は入ってはいたが、あまりにも聞きなれない言葉が次々と飛び込んできた為、思わず問題を聞き返してしまった。しかし、やはり意味が解らない。


 「……1つ、いいかな?」

 「なんだ?」

 「俺、ツラヌグスタには思うところがあるんだ。聡明なる君の意見を聞かせてほしい」

 「……そっか。あそこも大変だもんな。いいぞ」


 クイズに質問を返すのはご法度なのだろうが、まったく活路を見いだせなかったので時間をかせいでみた。いや、ツラヌグスタなんて聞いた事もないが、これで判断材料が出てくれば儲けものである。


 「ボク、ツラヌグスタのカチュオーはシャドルーした方がいいと思うぞ」

 「わかった……わかった……」


 ダメだ。解らない単語の意味を調べたら解説の中に解らない単語があって、それの意味を調べたら更に知らない単語が出てきたような気持ちだ。どうしよう……。


 「カウントダウンするぞ!10……9……6……5……」

 「く……」


 まずい!カウントダウンが始まった!しかも、数字を無意識に飛ばしてやがる!何か答えねば……そう考え、適当な言葉を口走ろうとしたすんで、世界はピタリと時間を止めた。


 『勇者はクイズの答えを迫られている!』


 やった。選択肢の能力が発動した。2択……せめて3択に絞ってくれれば、知らない言葉でも確立として正解の可能性はある!よし!こい!


 『このクイズの答えはチワワです……が、勇者は、どうする? 1・こたえる 2・まちがえる 3・かえる』


 バカな。答えまで教えてくれる……だと?


第42話の4へ続く

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