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第41話の1『快諾』

 《 前回までのおはなし 》

 俺の名前は時命照也。恋愛アドベンチャーゲームの主人公なのだが、気づけばバトル漫画風の世界に飛ばされていた。海の中にある王国の王様と女王様に面会し、血の海という場所にいるバケモノの事を聞く。それを探りに行く体で話が進んでいたのに、なぜ俺は……。


 「マリナ。任せておけ!必ず俺が解決する!」


 などと、普段の俺からは絶対に出ないような、主人公然としたセリフが口をついて飛び出す。もちろん、俺は自己平和主義を体現したような人間である為、どこにでもいる普通の高校生らしい凡庸な答えを心に秘めている……。


 「勇者……私も手伝うぞ」

 「お兄ちゃん……まじめに正気なん?」


 ゼロさんは期待の視線を向けてくれるが、ルルルは前回と同じ質問を俺に投げかけている。実のところ、全力でルルルに同意なのだが……その……今さら、セリフを間違えましたとは言えないです。


 「勇者……さん。それは……なんです……か?」

 「え?これは運命のペンダント……ん?」


 隣にいるヤチャに指さされペンダントを見ると、それは久々にキラキラと光を放っていた。こうなっているという事は、なにか能力が発動していると考えられるが……俺の能力に強気になるものなんてあっただろうか。


 えっと……俺が持っている能力は確か、ピンチの時に出る『選択肢』、死んだ時に何度か時間を巻き戻す回数制限技『やり直し』、女の子を転ばせる『ラッキーパンチ〇』、『選択肢』と『やり直し』のレベルアップ技と思われる『一つ前の選択肢に戻る』。これだけだったと思うが……いや、もう一つあった気がするぞ。


 『お兄ちゃん属性』


 これだ……間違いない。レジスタの街でルルルと仲良くなった時に習得したのだが、こんなところで発揮されるとは思わなんだ。これが吉と出るか凶と出るかは謎だが、もう引くには引けない。


 「う……うええええぇぇ」


 ふと視線を正面へ戻すと、姫様が目をグッとつむって泣いている。泣いているとは言っても、ここは水の中だから涙が出ているかは解らない。近くにいたルルルが姫様をなだめ、すると姫も少し恥ずかしそうに顔を隠して呟いた。


 「お兄様の件は残念ですが……ギザギザさんを責めるつもりはありません。私たちだって、ギザギザさんがいなくなって悲しいのです」


 「……王様たちもギザギザさんたちも迫害する気持ちはないって事か」


 「ギザギザさんの両親も悲しんでいることでしょう。きっと、ルッカさんだって……」


 さっき話を聞いた時も、ルッカさんはギザギザさんを呼び捨てにしていたな。別の会社の人と話す時、自社の社員を呼び捨てにするのと同じ事かとも思ったが、すればルッカさんとギザギザさんは親友だったのかもしれない。


 「血の海のバケモノを討ち取るまで、ギザギザさんは帰らないと思います。既に一度、助けていただいた身として申し上げにくいのですが……その……」


 「解った!全部は言わなくていいぞ!」


 「あの兄ちゃん、ちょっとバカだから……期待半分くらいにしとくといいんよ……」


 すでに俺が普通じゃないことに気づいているからか、ルルルのフォローがメチャメチャ優しい。見た目はルルルより姫の方が姉に見えるのだけど、姫の肩を抱いている姿はルルルのが年上っぽくも見える。


 さて。これから、どうしようか。光を失ったペンダントと共に俺の不敵な笑みも消えたわけで、血の海までの移動手段も、血の色に染まって視界の悪い海を探索する方法も、化け物と戦闘になった場合の対処法も検討がつかない今、俺は腕の中に納まっているコケ付きの岩を撫でる他ない。


 「皆さん!会議の結果が出たタラコ!」


 姫様が通って来た狭い穴の中から、触手のついた生首みたいなものが飛び出し声を荒げ出した。イソギンチャクっぽい見た目なのに語尾はタラコ……これはいかに。


第41話の2に続く

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