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第39話の2『王様?』

 ホッケ貝館は名前の通り、巨大な貝の殻を加工して作られた建築物である。壁についている光る石にそって廊下が長く続いており、エビゾーさんのヨロイを簡略化したような装備の人たちが、その通路を忙しそうに行き来している。あわただしくも兵隊さんたちは姫様を見ると立ち止まり、丁寧にお辞儀をしたり敬礼をしたりしている。


 「姫!ご無事で!」

 「姫!ご無事で!」

 「姫!ご無事で!」


 エビゾーさんの指導でも入ってるのかと思うくらい兵隊さんたちのリアクションは統一されており、大至急で運ばれてきた巨大カップに入れられ姫は通路の奥へと持ち去られていった。ルッカさんやエビゾーさんが横にいるおかげか、俺たちも不審者な扱いは受けずに先へ進めたが、体が浮かばないよう大きい石を抱えている俺だけは警備兵の方に職務質問されてしまう……それでも、なんとか王様の部屋の前まで到着する。


 「私は王様と女王様へ、ご報告を差し上げます故、皆様、しばしお待ちください」


 建物の奥にある大きな扉の前まで来ると、ルッカさんは俺たちをステイさせて先に部屋へと入っていく。姫様が思いがけずも美少女マーメイド然としたビジュアルだった為、自然と王様や王女様にも期待が高まる。それはもう、ポセイドンのような神々しい人物であろう。 


 「皆様……お待たせいたしました。どうぞ、お入りください」


 石を持っている俺を気遣ってか、ルッカさんがドアを開けたままにしてくれている。そこを潜り抜けると最低限に飾り付けられた大きくも小さくもない部屋があり、とてもゴージャスな赤いヒレを持った魚っぽい人の姿が目に入った。


 「失礼しますー」

 「ちょ……お前、止まれ!止まるのだ!」


 目についた赤いヒレの人へ挨拶しようとした矢先、なぜかエビゾーさんに襟首をひかれて足を止められた。なんですか?


 「王様の御前であらせられるぞ!踏みつぶすつもりか!」

 「え……下にいるんですか?」

 「下におるぞえ!」


 何か足元で甲高い声がする。石を落とさないように後ろへ何歩か戻ると、俺の死角となっていた場所に魚……いや、シャコみたいな生き物がいる。頭に王冠が乗っている。すなわち、彼こそが王様であろう。無礼なくお辞儀をしようとしたところ、石を両手で持っている都合から勝手に土下座となった。


 「お……王様。お目にかかれて光栄であります。俺、時命照也と申します」

 「一目で吾輩を王様と見抜くとは、なかなか見どころがある若者ぞえ」


 多分、姿が小さいから一目では王様として認識されない人なのであろう。そうっと移動したつもりだったのだが、俺の体を包んでいる泡で王様をドついてしまう。でも、特に激怒の兆しはなく、ささいにも王様の器の大きさを垣間見た。


 「あなた。みなさんのお話をうかがいたいわ。立ち話もなんですし、こちらへ」


 その口ぶりから察するに、やはり奥にいる派手なヒレを持つ魚っぽい人が女王なのだろう。ただ……ただ……ムシっぽい見た目の王様と、熱帯魚っぽい女王様と、その娘が人魚姫……いや、深くは考えないようにしよ。


第39話の3へ続く

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