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『後日談』の47

 「貴様の気持ち、しかりと受け取た……あとは娘が決める」


 お父さんからの許しを得て、俺は納豆の入っていたお椀をよけて立ち上がった。リレーの最中に告白まがいの発言こそしたが、まだ本人に承諾はいただいていない。いざ、愛を伝えよう。ドアの近くへ身を引いていたエリザベス先輩の姿へ、俺は改めて目を向けた。


 「……」


 俺の前には、泣き崩れているお父さんがいる。あちらにはエリザベス先輩がいる。兵隊さんたちは眠ったまま、各々が自由に寝言を口から出している。しかし、それ以外の人物が現場に立ちあわせているのに、俺は初めて気がついた。


 「……友世……君」

 「え……ええ?生徒会長?」


 呆然としているエリザベス先輩の後ろで、ドアのふちに手をつきながら立っている生徒会長の姿が見えた。その表情には、憎悪とも悲痛ともとれる涙が浮かんでいる。な……なんで、ここにいるの?予想だにしなかった事態に思考が停止し、告白の言葉も出てこない。


 「きゃあ!」

 「う……裏切者!わああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 「生徒会長!?」


 生徒会長は無理やりエリザベス先輩の手を引き、通路の奥へと逃げ出していった。その片手にはナイフのような……キラリと光るものが握られていた。すぐに追いかけようとするのだが、俺の行く手を阻むようにして自動ドアが閉じてしまう。


 「くっ……開かねぇ!」

 

 けりとばしてみるが、やっぱりドアは手動では開かない。どうやって開けるんだ?早くしないとマズい気がする。とりあえず、困ったときは大賢者先生だ!どこにいるのか解らないから、適当に大声を出してみる。


 「先生!なんかマズいっぽいです!」

 (今、こっちは自爆を解除しようとしてるから、あとにしてくれん?)


 そうだった……俺、自爆スイッチを押しちゃったんだった!みんなの命も大事だし、そちらの方が急を要する。すると突然、目の前にある鋼鉄の扉が開いた。


 「貴様……いや、息子よ。行け」

 「おとう……パパ」


 エリザベス先輩お父さんがスイッチの1つを押し、自動ドアを開いてくれたようだ。お父さんは歩き方からして足が悪いのは明白で、先輩を助けに行けと通路を指さしている。


 「頼む!」

 「わ……解りました!」


 お父さんの意思を受け取り、俺は窓のない閉塞的な通路へと進む。2人は、どっちへ行った?


 「……いた!」


 曲がり角の向こうに、連れ去られていくエリザベス先輩の後ろ姿があった。俺は慌てて駆け出した勢いで、クツがすっぽ脱けてしまった。でも、そんなのどうだっていい。そのまま全力で走っていく。飛空艇のエンジン音が大きく聞こえてくる。それと……風の音がする。通路の先に、広い部屋が見えてくる。


 「……?」


 ここは……戦闘機が何機も補完されている場所だ。部屋の広さは体育館ほどもある。部屋の奥にある飛行機の飛び出すハッチが開いていて、大空をバックに先輩と生徒会長が立っている。


 「せ……先輩!生徒会長!」

 「動くな!」


 生徒会長は小さなナイフを手に持ち、先輩の首元へつきつけている。どうして、こんなことになっているのか。とにかく、事情を聞こうと俺は叫んだ。


 「な……なぜ。こんなことするんです!」


 「お前!散々、思わせぶりな態度を見せて……本当は、この人の事が……私は、絶対に許さない!」


 確かに……最初は生徒会長と親しくしていたのに、途中で鞍替えしてしまったのは俺の責任だ。でも、生徒会長に告白したわけじゃないし、たまに会って楽しく話をしていたくらいの関係である。そこまで恨まれることをした覚えはないけど……女の子はデリケートだ。


 「生徒会長。落ち着いて……」

 「こ……この人を殺して、私も死ぬ!近づくな!」


 目が本気だ。生徒会長はツンデレかと思っていたが、どうやらヤンデレだったようだ。エリザベス先輩のルートに進んだと伝えた時、照也が微妙な顔をしていた理由がやっと解った……。


『後日談』の48へ続く

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