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『後日談』の35

 「くらえ!スネ蹴り!」

 「やめ……くっそ!勇者、おい!やめろ!」


 照也がグロウさんの足を思いっきり蹴り、グロウさんがくすぐったそうにしている。


 「……いってぇ!」


 グロウさんの足は存外に硬かったらしく、蹴った照也の方が足を押さえて痛がっている……そんな照也の妨害に気づき、4組チームのシオンさんが綱から手を離して飛び出してきた。


 「勇者さん。そうはさせません。シオンです」

 「うわっ!」


 シオンさんが腰にさしている剣を振り上げ、風のような速さで照也に切りかかる。あれも刃のついた本物の剣には見えるが、日本においては銃刀法というものがあるので、きっと偽物なのだろうと思われる。


 「……?」

 「な……なにを」


 剣は照也の面前で止まっている。斬りかかったシオンさんを止めたのは……グロウさんの片腕の鍵爪だ。なんで?


 「勇者を倒すのは俺だッ!ジャマすんな!」

 「勇者さんは敵チームなのですが」

 「そうだぞグロウ。俺、敵チームなんだ」


 前後、双方からツッコミが入った。そんな照也の後ろには、照也を助けに走っていたゼロさんがいるのだけど、完全に出遅れて入る隙がない。どうしましょうとばかり、俺の方へと視線を逃がしている。その向こうでは、シオンさんがグロウさんに苦言をていしていた。


 「グロウさん。前に戦った時から思っていたのですが……あなたはおかしい」

 「うるせぇ!てめぇには前に勝ったから、もう用はねぇ!ザコは引っ込んでろ!」

 「ざ……ざこ」


 なんかグロウさんとシオンさんが、口喧嘩の気配を見せ始めた。そこへ、エリザベス先輩が説教にやってくる。


 「あなたたち!ナニしているの!」

 「こいつが、俺より先に勇者を倒そうとしてきやがったんだ!」

 「こここ……この人!ボクをザコと言った!言ったあああああああぁぁぁぁ!」

 「今、それどころではない!ツナを引いて!」

 

 先輩に続いて親衛隊が駆けつけ、今にもグロウさんに斬りかかりそうなシオンさんを羽交い絞めで止める。というかシオンさん……普段のスマートさからは想像がつかないくらい、煽り耐性が低いな。ヒステリックさん怖い……。


 「はなせぇ!僕は……そいつを許さないいいいいいぃぃぃぃ!」

 「シオンを外へ連れ出して。ミナノモノは問題ないから、クールにして!」


 暴れ出したシオンさんをエリザベス親衛隊が確保し、そのままグラウンドの外へと引っ張っていく。エリザベス先輩は親衛隊を指揮しつつ、今の一件で動揺している4組チームを落ち着かせようと声を張り出している。


 「……おわっ!」


 そんな騒動を見ている内……突然、俺たち1組チームの引いていた綱が切れ、一気に後ろへと吹っ飛ばされた。俺たちの体は後ろにいるヤチャが1人で受け止めてくれる。


 『……勝者、1組チーム!』


 お姉さんのアナウンスが聞こえてくる……え?勝った?なんで?俺はヤチャの大きな胸板にうずめていた顔を上げ、グラウンドの中央に目を向けた。綱引きの綱は敵である4組チームの手前で切れていて、綱を引いていた生徒たちは全組、勢い余って吹き飛んでいる。照也がシオンさんの落とした剣を持っており、運動場のグラウンドから持ち上げるのが見えた。


 「あ……」


 あいつ……斬りやがった。綱の中央の結び目は、ヤチャの力で2組と3組の生徒ごと1組チームの陣地へと引き込まれていた。そして……。


 「シオンさんの剣……」


 偽物だと思っていたが、素人が綱が一太刀で斬れるってことは……なかなかの切れ味だ。シオンさんと同じで、よくキレるみたいだな……。

 

『後日談』の35へ続く

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