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『後日談』の29

 グロウさんの刀がオモチャと解れば恐れることはない!よし!


 「俺が止めている間に、みんな行け!」

 「いや、あいつは……」


 プラスチックの棒でしばかれる程度なら、俺だって耐えて見せる。その隙にゼロさんでも照也でもいいから玉をゴールに入れてくれれば、玉入れ競争は俺たちの勝利だ!俺はタックルをくらわす勢いと意気込みで、グロウさんに飛び掛かっていった。


 「ジャマだ!うらぁ!」

 「うわ!」


 グロウさんが剣を一振りすると、その刃からは黒い風が発せられた。しまった!魔法か!ズドンと重い音が鳴り響き、俺は連続で後転しながら大きく吹き飛ばされる。思いっきり体を打ちつけたせいで、頭と背中と……もう全部がイテェ……。


 「いてて……」

 「魔王!しっかりしろ!」

 

 そう言ってゼロさんは俺の腕をつかみ、俺の体を高く持ち上げた。助け起こしてもらったというか……これは、助け立たせてもらったといった方が近い。俺はゼロさんに右腕をつかみ上げてもらったまま、無気力に足をつけて立った。


 「俺の相手は、そいつじゃねぇ!勇者だ!勝負しろ!」

 

 グロウさんは俺やゼロさん、ましてや玉入れ競争には興味がないらしく、照也に剣先を向けて宣戦布告している。一応、俺が主人公なんだけど……まったく勝てる見込みがないことは数秒前に証明されている。いいや。ここは任せちゃおう。


 「待てぇー!玉をよこせ!」

 「そして、変態を殺せ!」


 うわっ!他の生徒たちとエリザベス親衛隊が追いかけてきた。ここでグロウさんに通せんぼされていては、俺たちは玉を取られるにともなってもみくちゃにされ、最悪の場合は午後のリレーにすら参加できない体にされかねない。でも、俺はギャルゲーの主人公だ。照也の教えを守って、女の子だけは助けよう。


 「ゼロさん。俺が他の人たちを食い止めるんで、玉をお願いします」

 「お……おお」


 ゼロさんだけでも守ろうと腕まくりしつつ、さあ来いの姿勢で押し寄せてくる生徒たちに向き合った。改めてみたら、俺の腕の細い事。こんな腕で何を守れるというのか。敵はざっと100人。真面目に死ぬかもしれん……。


 「グロウ!その勝負、受けてやる!」

 「やっと腹をくくったか。いざ!」


 意外にも、照也が真っ向からグロウさんの挑戦を引き受けている。照也とて、一度は世界を救った勇者だ。ここは一瞬でケリを……。


 「だが、ちょっと待て!」

 「……?」

 「お前だけ武器を持ってて、俺は素手なのはズルい。なんか武器くれよ!」

 「……ああ?」


 あれ……戦いが始まるかと思いきや、なんか照也がグロウさんに対して苦情を入れだした。ここにきて、なんで武器の交渉を始めるのか……。


 「まあ……それもそうだぜ」

 

 グロウさんも受け入れた……。


 「なんか探してくっから、ちょっと待ってろ!」

 「頼む!」


 バサッと羽の音がして、俺たちの上を大きなカラスが跳び越していった。振り返ってみる。そこにグロウさんはいなくなっていた。敵は去ったと見て、すぐに照也が体育館のトビラを開く。俺とゼロさんも、すぐに体育館へと駆け込んだ。


 「ゼロさん。あそこ!」

 「解った!」


 照也が指さしたのは、バスケットのゴールだ。体育館を駆け抜け、ゼロさんが助走をつけてジャンプする。手に持っていた赤いオーブを勢いよく、ゴールへとダンクした。女の子がダンクシュートする姿って、初めて見たな……。


 『玉入れ競争!終了です~!勝者、1組!』


 オーブが床に落ちると同時に、競技終了の放送が聞こえた。か……勝った。


 『1組チームには3点が加算されます~』


 ……大変だった割に、意外と点数が低い。まあ、命は助かったし……よかったことにしよう。

 

『後日談』の30

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