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『後日談』の13

 「これ……どっから入るんだ?」


 ビルの正面には自動ドアみたいなのはあるにはあるんだけど、ドアは前に立っても手で引いても開く様子がない。どうすりゃいいんだ?


 「だだだ……誰?誰?」

 「……ん?」


 どこかから声が聞こえた。インターホンでもついてるのかと出どころを探って歩き回っていたら、ビルの黒い壁から目玉みたいなのがギョロリと出てきた。


 「誰……だだ……誰です?」

 「うわ……あ……あの。俺、照也に言われて来たんですけど」

 「テルヤ……テルヤ……聞いたことある。あります。えええええ……」


 照也の指示でビルへやってきたから、中に知り合いがいると思うんだが……答えはあやふやだ。でも、聞いたことはあるらしいし、建物の中にいる人に聞いてもらえば入れてもらえるかもしれない。


 「俺は心野友世。俺に、ここに来るよう言った人のフルネームは……時命照也だ。勇者とも呼ばれる。なんか普通そうで変なやつだから、一度でも会ってたら解るはず」


 「あ……ああああぁ!ユーシャ!知ってる!じゃあ、お前!ゼロだな!」


 「俺はゼロさんじゃないぞ……」


 「入れ」


 ギザギザしたキバむき出しの口が壁に開き、でろんと赤い舌も出てくる。普通にガラスのドアから入りたいんだけど、あっちが開かない以上は、こっちから入るしかない。幸いながら、口の奥には建物の中が見えているし、入った途端に胃へ直行する訳じゃなかろう。


 「オジャマします……」


 ビルの外見は怪しさ満点だったが、中は清潔感のあるオフィスビルの感じだ。人間の姿もあるし、なんかドロドロした姿の人もいる。まあ、変な姿の人ばかりの世界だから、いまさら驚くこともないんだけど……なるべく話しかけやすい人を探す。ドーナツ食べてるおじいさんがいる。あの人なら話を聞いてくれそうかな。


 「……どうも。ちょっといいですか?」

 「……おお。ようこそ、我らレーレー族の山へ」

 

 山か?ここ、どう見てもビルだと思うけど……ああ、なるほど。トーキョーをコンクリートジャングルと呼ぶ、あのユニークな言い回しのたぐいだな。ははぁ、完全に理解した。


 「レベル上げに来たんですけど……どこに行けばいいですか?」

 「これぞ、我が民族に伝わる伝統料理、ツナドーだ。食べなさい」

 「あ……ありがとうございます」


 そのお菓子はツナドーと呼ばれたが、完全にスーパーで売ってるふうなビニール包装だし、どう見てもドーナツだし、賞味期限は今日だ。食べてみた。うん。ドーナツだ。これは、おじいさんが勝手に洋菓子を民族伝統料理にしてしまった気配。製造元は……言わずと知れたコンクリートジャングルだ。


 「あれ……君、ここの人じゃないよね?誰かな?」


 おじいさんと会話のようなことをしていたら、今度は白衣を着たおじさんが声をかけてくれた。飲み物もなしにパサパサのドーナツを飲み込みつつ、俺は事情を説明する。


 「ここでレベル上げができると聞いて、勇者の照也に言われて来たんですけど……」

 「ああ、魔王の友世君か。聞いてるよ。トレーニングルームは上だ」


 誰かは知らないが、この人について行けば問題なさそうだな。銀色の壁が続く通路を進み、エレベータらしきドアの前へと案内してもらった。


 「お父様。待って」

 「おお。帰ったか。レイナ」


 後ろから女の子の声が聞こえ、そちらへと俺も振り向いた。ゼロさん……じゃないな。顔は同じだけど、あの人は隣のクラスのレイナさんか。お父様ということは、この白衣の人がお父さんなのか。


 「お父様……そちらは」

 「魔王君だ」

 「変わったお名前」

 「ど……どうも。本名は友世です」


 レイナさんを学校で見かけても、いつも横に目つきのキツイ女の子が一緒にいるもので、俺の方から話しかけたことはなかったのだ。目の前のドアが開く。エレベーターが来たみたいだ。


 「……」


 天井と床のない部屋に……太いワイヤーが1本だけ通っている。ワイヤーには辛うじて足場らしきものはあるが、しっかりと掴まっていないと落ちてしまうであろうことは想像に容易い。ワイヤーは上へ上へと流れている。白衣のオジサンが、それを指さして俺に言う。


 「よし。上に行くぞ」


 もしや……もうトレーニングは始まっているのかもしれない。いくぞ!

『後日談』の14へ続く

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