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『後日談』の9

 「最近、会わなかったじゃないか。忙しいのかな?」

 「いえ、実は体育祭の件で右往左往しておりまして……」


 生徒会長と出くわしてしまった。いや別に会ったこと自体は悪くはないし……最近じゃ生徒会長の方から親しげに話しかけてくれるもので、それは俺としては嬉しい。なのに、俺は彼女と迎えるエンディングへは向かっていないのだ。それが悪いような、なんというか……すごい罪悪感を感じる。

 

 「君、リレーの選手を探しているのだとか」

 「そうなんですよ……」

 「私でよければ、チームに加えてもらえないか?」

 

 しかも、予想外の展開だ……生徒会長って、2年の1組だったっけ。同じ1組チームなら、加わってもらって全く問題ない……問題ない……よな?


 「ちょっと、相談いいですか?」

 「ああ。うん」


 俺は生徒会長の問いかけに待ったをかけ、照也をつれて廊下の曲がり角まで逃げ出した。この誘い、受けていいのか?頼っちゃっていいのかな?急いで相談をぶつけてみる。


 「照也……いいか?いいのか?これ」

 「いやぁ……いいんじゃない?」


 なんで笑ってんだよ……本当にいいのか?俺をハメようとしてないよな?とはいえ、断るなら断るで上手く言い訳をしないといけない。もうメンバーが集まりましたと言って、当日に人数が足りていないとまた面倒なことになる。それに、せっかくの好意をつっぱねてしまっていいのか。深く悩み考えつつ、俺は生徒会長の元へと戻った。


 「どうしたの?心野くん」

 「あ……いや、お願いします。リレーの件」

 「任せなさい。リレーなら去年、走った経験があるの。頼りにしてくれて構わないぞ」

 

 自らリレーの選手に立候補し、生徒会長は去っていった。今でこそああだけど、出会った頃は事あるごとに呼び止められて、服装を正されたりお説教をされたりしていた。生徒会長の積出玲さんは名前の通り、ツンデレヒロインらしい。


 「ととと……とにかく、あと2人でメンツはそろう。茶道部の茶子さんに会いに行こうぜ」

 「でも、茶子先輩は4組だから無理じゃね?」


 照也に即否定された。そうだった。和服ヒロインの茶子さんはエリザベス先輩と同じ4組だ。他のクラスの人を誘うのは100歩ゆずっていいとして、さすがに相手チームを勧誘したら先輩に何を言われるか解らん。別の人にしよう……。


 「別のヒロインの子は……ええと。照也。真理奈ちゃんって、いつもどこにいるんだ?」

 「水泳部だから、プールかな」


 プールか。照也と一緒に、何度かのぞきに行った。この学校の指定水着は紺色のスクール水着ではないんだけど、競泳水着は競泳水着でよさがある。ちょっと模様が入っていて格好がいいのだ。あと、微妙に布地が少ないのもポイントが高い。プールは学校の裏にある。でも……あれ?


 「……俺、プールで真理奈ちゃん。見た事ないな。校門近くでは会ったことあるけど」

 「あの子、中等部だからな」


 中等部……ああ。真理奈ちゃんって中学生なのか。中学生……え?


 「中学生?」

 「すぐ近くに中等部の校舎があるんだ。マリナ姫のお兄さんが高校生で」

 「……姫?」


 さすがに中学生をチームに入れたらバレるんじゃないかと。そして、中等部のプールに行ったら不審者と間違われて捕まるんじゃないかと。あと、姫ってなんだ……色々と疑問だ。


 「よし……じゃあ、行くか」

 「ま……待った」


 いざ、中学校のプールへ。ハラハラドキドキしつつ足を動かすのだが、すぐに照也に呼び止められた。なんだ?


 「友世……中学校のプール、行くのか?」


 「……お……おお!上等だ!いつもは照也に連れられてのぞきに行く俺だが、今日は違う!小学校のプールでも、中学校のプールでも行ってやるぜ!」


 「……それはさすがにマズいだろ。不審者かよ」


 「……そうだな!」


 男気を見せたつもりが、不審者として扱われた……んじゃあ、どうするというのか。


 「マリナ姫にアポを取るために、まず俺が妹に連絡をとる」

 「照也に妹なんていたか?」

 「いない。偶然に出会った幼女を俺が勝手に妹って呼んでるだけだ」

 「へえ」


 ……それこそ、不審者以外の何者でもないと思うが、いいのか?


『後日談』の10へ続く

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