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『後日談』の7

 「カルマさん。よろしくお願いします」

 「いいいいい……ややややややや……」


 強引に3組のカルマさんをリレーにさそい、断られる前に廊下へと逃げ出した。それでもなお、あと4人も集めないといけない。う~ん……誰が足の速い人かなんて俺には解らん。それも照也に聞こう……。


 「足の速い人で、まだ残ってそうな人なんているのか?」

 「まあ、体育館に行ってみようぜ」


 新聞部の人たちとはお別れして、照也とゼロさんとヤチャ、みんなと体育館へ向かった。今日も、熱血部員たちが汗を流している。エリザベス親衛隊の人たちも体育館へ戻っているが、ヤチャが一緒にいるおかげもあって、今回は俺を睨むだけに留めてくれている。


 「あら、あなた。よくもまあ、こんなところに来てしまった!」

 「……どうも」


 バレーボールのネットの向こうから、エリザベス先輩が俺を指さしている。もう完全に敵と見なされている。敵視されすぎて、逆に好かれているような錯覚すら覚える。ぞくぞくする。俺、マゾかもしれない。


 「ここは運動を愛する者の聖なる聖域!お前のような不純ものがくるではない!」

 「そうですね……」


 肯定しながらも、俺の目はエリザベス先輩のパツパツの胸とか、防具に引き締められたむっちりハムストリングにくぎ付けである。バレーウェアって、なんでこんなに色っぽいのか。本当は、そんなスケベな目で見てはいけないものなのに……それすらも気持ちのたかぶりに貢献している。スポーツ界隈の皆さまに、先に謝っとく。ごめん。


 「照也。こんなところに……仲間になってくれる人なんて」

 「おおい。テルヤ!ヤチャ!久しぶりだな!」


 体育館にいる人たちとの険悪な感じも意に介さず、体育館の奥にある2階の方から手を振っている人がいた。えっと……誰だ?


 「久しぶり……だぁ!おおぉ!ウライゴォ!ヘイオン!」

 「ヘイオン!」

 「へ……へいおん。ウライゴさん。お久しぶりで……」


 見た目は普通そうな人なのに、謎の単語とポーズで照也やヤチャと交信を始めた。なお、照也は微妙に恥ずかしそうである。恥ずかし晴らしがてら、照也がウライゴさんに呼び掛ける。


 「ウライゴさんって、なんの部活でしたっけ」

 「ストラックアウト部」


 ストラックアウトって、野球のボールで板を撃ちぬくやつだよな?野球部と同じでいい気はするが、別の部活として認知されているらしい。ウライゴさんが2階から飛び降り、こちらへとやってくる。この気さくな感じを見るに、前の世界で照也と一緒に戦った仲間なのかな。世界を旅してきただけあって、照也の顔は広い。


 「突然なんですけど……こいつと一緒に、リレー出ません?」

 「いいよ。僕は2組だけど」

 「いや、バレないバレない」


 ……えっ?出てくれるの?なんか解んないけど、いい人だな。


 「テルヤとヤチャが同じチームなのに、僕だけ別なのは納得いかなかったんだ。また一緒に戦えて嬉しいよ」


 「……あぁ!勇者てめぇ!今日こそ死なす!」


 「やばい!グロウだ!みんな、逃げろ!」


 今の今までバスケットボールに夢中だったグロウさんが、やっと照也の存在に気がついた。ボールを投げつける姿勢で追いかけてくる。ひとまず、ウライゴさんとの約束をとりつけ、俺たちは体育館から避難した。


 「……これで2人目だ。照也。ありがとう」

 「でも、俺が紹介できそうなのは、あの2人くらいだなぁ……」


 カルマさんとウライゴさんが手伝ってくれることにはなったけど、あと3人も集めないといけない。俺からしてみれば、頼み事ができるほど仲良い人は照也と太郎くらいしかいない。最悪の場合、俺が4人分の距離を走るしかないぜ。


 「……」


 紹介できる人はいないと言いながら、照也は黙って学校の階段を上がっていく。誰か、あてがあるのか?辿り着いたのは……図書室だ。


 「友世。あとは、お前の主人公力が試されるぞ」

 「……というと?」


 図書室のカウンターに、物静かそうな女の子がいる。あの人は確か……小和井夢子さんだな。物語上でいえばヒロインの1人なのだけど、俺がエリザベス先輩のルートに一直線だったのと、小和井さんの目つきがカエルを睨むヘビのそれなせいで、あまり会話はしたことがない。見た目は清楚でキレイである。


 「行け」

 「……?」

 「友世……行け」


 ……ええええ。


『後日談』の8へ続く

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