『後日談』の4
「ミオさん。エリザベス……軍であってるんすか?誤植じゃなくて?」
「エリザベス軍っす」
俺とエリザベス先輩が勝負すると決まったのは、今日のお昼休み。なのに、すでに新聞には勝負の件がでかでかと書かれていて、編集者の敏腕さが目立つ。そんな新聞をながめてみたところ、1つツッコミどころを見つけた。新聞の見出しにはエリザベス『軍』と書かれている。『軍』って……字づらが強すぎん?その辺、ミオさんに事情をうかがってみた。
「あー、エリザベス先輩のチームは4組なんっすけど、はっきりいって各学年4組に強い人がそろってるんで、名付けてエリザベス軍っす。逆に、1組と4組以外はないものと思っていいっす……」
「2組と3組の立場ないじゃん……」
「2組に私の姉らしき人がいるんだが……」
「レイナさん、病弱設定なんで……」
照也が言うところでは、ゼロさんの双子のお姉さんは体が弱いので、過度な運動はおすすめされていないらしい。ところで……ミオさんって何組なの?
「で……ミオさんって何組?」
「私とカルマ隊員は、1年3組っす。まあ……新聞部は、別の仕事あるんで。勝ち負けは気にしないっす」
そっか。新聞には写真も幾つか載っているし、当日も撮影や取材で忙しいんだな。俺は再度、新聞へと視線を落とした。まず目に入ったのは紙面の左上にある、ハカマっぽい黒い服を着た怖そうな人の写真だ。グロウさんというらしいけど……両手に竹刀を持っているな。どんな人なんだろう……。
「ミオさん。グロウさんて、どんな人?」
「グロウさんは10刀流の使い手で、バスケットボール部の人っす。体育祭の種目にバスケットないっすけど」
「バスケット?剣道部じゃないの?」
「なんか細いものを手に持ってないと落ち着かないらしいっす……」
変わった人だな。グロウさんのインタビューも載っている。どれどれ……。
『エリザベス軍?はあ!他のやつは知らねぇが、俺だけはグロウ軍だぜ。そうだ!勇者は俺が、ぶったおす。首を洗って待ってろよ!』
紙面の上で、すでに軍から離反者が出ているんだが、この人は照也しか眼中にないようだな。照也は女の子にも男の子にもモテモテで、半分はうらやましいけど半分はうらやましくない……。
「う~ん……他には」
あとは……新聞の真ん中にシオンさんという人の写真が載っている。女子と見間違うくらいの美少年だ。なぜか制服の前を大きく開き、胸元をおっぴらけにしている。暑いのかな?こちらも短めのインタビューが掲載されている。
『シオンです。体育祭には特別、興味はありませんが、グロ……なんとかという人には負けたくない』
グロなんとかって、グロウさんだろう。負けたくないとか言ってるけど、そもそも同じチームです。戦わないでください。
「クロル先生の声明文が載ってるんだが……」
照也が指さした場所、新聞の左下隅の方を見てみたら、体調の悪そうな男の人が小さく写っていた。この人は理科の教師だ。
『体育祭。生徒諸君には障害物競争とかいう競技に参加する権利をやろう。障害物競争は楽しいぞ。それはもう、死ぬよ。いや、死ぬくらい楽しいから、絶対に参加するように。以上!(ここで高笑い)』
インタビューっていうか、普通に犯行声明文だ……絶対に参加したくないぞ。というか、もう不穏な感じしかしないから、学校側は今から対策とっていいと思う……。
「クロル先生は謹慎明けなんで、ちょっとテンション高いっすね」
「謹慎くらってたのか……」
職務復帰したばかりだけど、また謹慎処分になりそうな予感。あ……新聞の下の方に照也の写真がある。ええと。そのインタビュー内容は……。
『特にない』
せめて、なんか言えよ……。
『後日談』の5






