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『後日談』の2

 「テルヤアアァァ!体育祭……だあぁ!」

 

 俺が体育祭の話を識者からうかがっていたところへ、ヤチャが教室へと窓の外から飛び込んできた。強く強く、体育祭への意気込みを叫んでいる。やる気満々だな。ヤチャは同じクラスだし、上半身裸で学校に通うくらい身体能力は抜群だ。そして、この人だけで体育祭は勝てちゃうんじゃないかと思うくらい、見た目のパワーが強い。ごつい。


 「テルヤァ!体育祭……だぁ!」

 「ヤチャ……お前、なにしてるんだ?」

 「ふははは……走り込みだぁ。テルヤアァァァ!滝に打たれに行く……ぞぉ!」

 「俺はもう、滝には打たれないって決めたんだ……やめてくれ」


 照也とヤチャは一緒に滝に打たれる仲らしい。どんな仲だ……そもそも、滝なんて近所の銭湯くらいにしかない気がする。それはいいんだが、運動神経バツグンなヤチャがいてくれれば、体育祭も安心そうだな。


 「魔王さん。それはどうかなぁ?」

 「太郎。お前、心を読むな……」


 太郎が俺の発言を先読みし、挙手ながらに問題を提示した。


 「ところがだ。体育祭の競技は原則、1人1つずつしか出れない」

 「……んじゃあ、太郎はパン食い競争に出たら、それ以外は出なくていいのか?」

 「うん。楽なんだ」


 そうなのか。だけど、俺は足の速さも普通だし、魔法も使えない。俺が出て勝てる競技って、何かあるのかな。そう太郎に質問しようとしたところで、照也が俺の肩を強く叩いた。


 「お前は体育祭、最後の華。チーム対抗リレー走者だ」

 「……ぬ?」


 ……なんか解らんが、大トリを任されてしまった。そうだった……俺、今は主人公だ。勝てるかどうかじゃない。直々にエリザベス先輩と対決して、んでもって勝利せねば、先輩とお付き合いする資格はないに決まっている。


 「よ……よーし!照也……俺、やる!リレーの選手!」

 「おし!最終種目までは俺たちで繋ぐ!勝った時の先輩のお願い、考えといて」

 「お……おお!」


 勝ったら、なんでも言う事を聞いてくれるんだったっけ……どうしよう。『俺と付き合ってくれ』とか言うのもおかしいかな。気の利いたセリフを考えておかないと。


 「照也君。でもさ。エリザベス先輩は……あれじゃないか」

 「体育祭で勝ったら、エリザベス先輩の秘密が明かされるんだよなぁ」


 なんか太郎と照也が俺よりヒロインに詳しいんだが、勝ったら何が明かされるのだろうか。まぁ、とにかくエリザベス先輩とお近づきになるには、体育祭で勝つしかないんだ。やるぞ!


 「はい。生徒諸君……席につきたまえ」


 チャイムが鳴ると同時に、国語の先生が教室へとやってきた。俺たちは各々の席に戻り、午後の授業の用意を始める。なお、俺と照也の席は教室の最前列。授業中の居眠り常習犯として危険人物認定されている。


 「……宿題を集める。後ろの席から順にプリントを送ってくれ」

 「先生……宿題、出てないっす」

 「む……やぶさかではない」


 シュッパ先生は体育の教師と見間違うくらいのガタイの良さで、室内なのに深々と帽子を被っている。まだ先生も学校での仕事に慣れていないようだが、この人の授業は説明が丁寧だから、勉強の不出来な俺でも全集中力の……90%くらい出せば理解できる。いい先生だ。


 「……終わった!」


 午後の授業が終了した放課後の事、考えるべきは体育祭の攻略だ。体育祭の決行は明後日。にわか仕込みとはいえ、何もやらないよりはマシだろうし、俺も走り込みでもするか。


 「友世。今日、時間あるか?」

 「ん?」


 照也だ。いつもは特に何もなければ、彼女と早めに帰ってしまうのだけど、今日はあちらから俺に声をかけてくれる。体育祭の練習にでも付き合ってくれんの?


 「じゃあ、体育祭に向けて、今日からやるぞ!解ってるな?」

 「おお!当然だぜ!」

 「決戦前。男は黙って……」

 「男は黙って……走り込み!」

 「……いや、敵情視察だ」


 ……敵情視察?


『後日談』の3へ続く

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