表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
526/583

第122話の5『罵詈雑言』

 「魔弾掌まだんしょう!」

 

 ゴウさんが勢いよく手のひらを押し出し、広い衝撃波を放った。俺たちを囲んでいる砂嵐をゆがませるくらいはできるのだが、穴を開けるには至らない。突破口も敵の姿も見えぬまま、風の音にまじって声が聞こえてくる。

 

 『あなたは私。私はあなた。自分を見つめなおして……いましめなさい』

 

 偽物のルルルの声だ。こちらへ語り掛けてくる。それと同時に、何かが砂嵐から飛び出してくる。


 「……ッ!」


 とっさにゴウさんが攻撃の気配を察知し、背中を盾にしてルルルをかばってくれる。ゴウさんを襲った何かは、目にと止まらぬ速さで再び砂嵐の中へと戻っていく。


 「ゴウさん!」

 「ぐう……」

 『ほら。あなたをかばって、仲間が傷ついたわ。その人は、情けないあなたに代わって減点よ』

 「……うう」


 さっきのは敵の攻撃だったらしい。だとしたら、ゴウさんばかりに防御を任せてしまうと、減点が重なって危険だ。ここはダメージを分散した方がいい……とは思うが、背中を曲げてかたまっているゴウさんを見た限り、俺が生身で攻撃を受けるのは危険と見える。


 「ルルル!防御の魔法とか使えないか?」

 『ほら。できないわよね?いつも守ってもらってばかり……役立たずの、空気の精霊』

 「……」


 俺の大声を受けても、ルルルは杖を握ったまま、うつむいている。精神攻撃か?


 『見てたよ。ここに来て、あなた役に立ってないよね?みんな、命がけで戦ってるのに。やる気がないなら消えれば?』


 「……ううう」


 『昔から、まるで成長していない。みんな、あなたなんていらないと思っているのに。なんのために生きてるの?意味あるの?生まれて誰が喜んだの?死ねば?』

 

 精神攻撃というか、非常に辛辣な罵倒である。言いすぎだろ……そこまで言われたら、俺だってヘコむわ。ルルルが耳をふさいでしまった横で、ゴウさんが俺の肩を叩く。


 「防御の魔法……は……できる。でき……ます」

 「お……お願いします」


 ゴウさんが手からねっとりとした光を伸ばし、それで俺の体を包み込む。どことなく肌がピリピリはするが、これで防御力が上がったのだろうか。


 「テルヤ!」

 「……おおっ!」


 ゼロさんの声で敵の攻撃が来るのを知り、俺は両腕をクロスさせて防御の姿勢をとる。体を大きく突き飛ばされはしたが、死ぬほどの痛みは伝わってこない。まったく痛くない訳ではないが……つまようじで軽く刺された程度の痛みだ。


 「テルヤ!無事か!」

 「あっ……はい。敵は……」


 急いで起き上がり攻撃の正体を探すが、もう砂嵐の中へと消えたようで敵らしき姿は発見できなかった。ゴウさんのバリアのおかげか、これなら攻撃にも耐えられそうだけど……攻撃を受けてしまった以上は、俺も減点を避けられないだろう。敵の減点に対する宣言を待つ。


 「……」

 『……』

 「……?」

 『勇者は減点しない。ここで死ね』

 

 やっぱり、俺は退学じゃなくて、この場で殺処分らしい。この世界に来て何度も死ねとは言われているが、やはり女の人の声で言われると攻撃力が違う。つらい……。


 「……いや、減点されないってことは」


 逆に考えてみよう。俺は減点されないってことはだ。率先して俺が攻撃を受けて行けば、他の人たちは減点されないはずだ。そうして考えている内にも、次の攻撃が来る。俺はルルルをガードする形で飛び込んだ。


 「……いってぇ!」

 「お……お兄ちゃん」

 「……だ……大丈夫!」


 少し痛いが、耐えられないほどではない。これなら、砂嵐の対策を考える時間が稼げる。それはいい。いいのだが……これは。


 「ごご……ゴウさん。なんだか、体が……すごくかゆいんですけど」

 「ふ……副作用」


 思わぬ副作用により、体中が蚊に刺されたみたいにかゆくなってきた……これは痛みよりキツイ。


 『ほら、またあなたが足を引っ張っているのが解る?役立たずのルルル。役立たず』

 「ううう……」

 「ルルル……気にするな」


 俺の声は聞こえていないのか、ルルルはうつむいたまま泣き出しそうである。俺が敵の攻撃にそなえて体をかいていると、砂嵐の外からも別の声が聞こえて来た。偽物の仙人のものと思しき声だ。


 『仙人。その頭は、どうしたのだ。毛がないではないか』

 「うるさい!頭以外はフサフサじゃ!」

 『高校という場所では、ハゲは校長先生の専売特許。他の者がはげるのは許されない』

 「うぬぬ。校長先生とは……」


 仙人も精神攻撃を仕掛けられているようだが、言われ慣れているからかダメージは少なそうである。それに続けて、グロウのニセモノの声も聞こえてくる。


 『読みづらい漢字の技名ばかり口にして……ここは高等学校だ。高校生にもなって、中二病を持ち込むな』


 「んだと!?人のことを病気だって決めつけやがって!許さねぇ!」


 グロウとニセモノは微妙に会話がかみあっていないので、あまり精神的にも問題ないと思われる。それから間を置かずして、ヤチャの偽物とヤチャの会話も聞こえて来た。


 『お前は用済み。もう勇者には必要とされていない』

 「そんなことないぞおおおおおおおおぉぉぉぉ!」

 

 ヤチャも精神的に屈したりはしない様子だ。これなら大丈夫そう……。


 『勇者は女ばかり気にして、お前に構ってくれないではないか。お前は、勇者に捨てられた』

 「そんなことおおおおおおおおぉぉぉ……」

 『友情など、その程度だ。用済みのヤチャよ』

 「そん……むうう」


 ヤチャの元気が急になくなった……俺、そんなにゼロさんばかり見てただろうか。この戦いが終わったら、もうちょっと優しく接するよう気をつけてあげたい……。


第122話の6へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ