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第122話の4『真っ向勝負』

 「話を聞いた限り、現状は敵について不明瞭と見た。わしが先に戦って様子を見る」


 攻撃すれば反撃され、何かのポイントが減点される。しかし、ただ待っていてもジリ貧だ。どう動けばいいかも解らない現状、誰かが行動を起こしてくれれば、その分だけヒントが得られる。でも……それは仙人が危険すぎる。


 「1人で4人を相手にするのは無理ですよ……」

 「いい。わしは長く生きた。ここで世界の糧となろう」


 ……そう聞いて、やっと俺は仙人の言いたいことが理解できた。自分1人を犠牲にして、俺に望みを託すつもりだ。点数が0になるとどうなるのか。敵の攻撃や動きなどが解れば、考えようはある。でも、戦うなら全力だ。1人ではやらせない。


 「……ヤチャ、やるぞ!」

 「おおおおおぉぉぉぉ!」

 「勇者……ありがとう。だが、勝ち目はあるのか?」

 「解りません……」

 「抵抗の意志を感じた。加えて、下校時間超過。お前たちは全員、2点減点。残り3点で退学。これより、措置を開始する」


 敵側の仙人が告げる。学校の電気が次々とつき、廊下も校庭も真っ赤な光に包まれる。狂ったようにチャイムが鳴り響く。残り3点……つまり、俺たちの初期値は全員5点だったらしい。すると、グロウは攻撃した際に初めて減点されたのだと解る。


 「待て!」


 待てと言われて待つつもりも、いますぐにでも拳を交えるつもりはあるのだが……とにかく、真っ向勝負となれば、ここじゃ広さも敵との距離も足りない。俺は窓を乱暴に開き、廊下から校庭へと向けて飛び出した。


 「……いってえ!」

 「あ……ごめん」


 窓の下の花壇にグロウが潜んでおり、思いっきり頭を踏んでしまった。だが、今は戦う準備を整えるのが一番だ。俺はグロウの袖を引いて校庭に出た。


 「グロウ!自分の偽物を頼めるか!」

 「もとより、そのつもりだぜ。どっちが本物か見せてやる!」


 俺の頼みも耳に入らぬ間に、すぐにグロウは刀を構えた。俺も含め、みんなは広い場所へ出た順に戦闘態勢へと移行する。偽物たちも俺たちを追い、学校の壁をすり抜けるようにして校庭へと出て来た。サーチライトのようなもの、野球の練習場のライト、学校の灯り、それらで校庭全体が赤く照らされている。


 「テルヤァ!やる……ぞおおおおおぉぉぉ!」


 ヤチャと仙人、グロウは自分の偽物と対峙できるだろう。あと厄介なのは……ルルルの偽物だ。


 「お兄ちゃん……私。1人でなんて無理なんよ」

 「俺がついてる。ゼロさん、ゴウさん。こっちをお願いします」


 敵は見た目こそルルルと同じだが、戦闘に関して臆するところが見られない。俺とルルルだけでは応戦できないと見て、ゼロさんとゴウさんにも近くへ来てもらった。偽物のルルルが、俺たちへと杖を突き出しながら言う。


 「幼稚園児が、高校に来てはいけない。校則違反だ」

 「お兄ちゃん……幼稚園児ってなに?」

 「お子様の中のお子様……みたいな」

 「あっちだって、同じようなものだと思うのん……」


 さすがにルルルの見た目は小学生の域には入っていると思うが、どちらにせよ偽物だって小さな子どもであることには変わりはない。お前が言うなと返したところ、急に偽物のルルルの体が黒く染まった。


 「……これでいいか?」


 外見的な特徴を残したまま、敵のルルルは高校生くらいの年齢まで体を成長させた。あくまで精神攻撃として体をマネているだけであり、形に固執する理由はないのだろう。なお、体が大きくなっても依然として小さい胸を見て、ルルルが自分の貧相な体をさすっている。


 「あたち……もしかして、伸びしろないのん?」

 「あくまで、あれは偽物だ……気にするな」

 「まとめて退学にしてやろう。受けてみろ!」


 偽物のルルルが杖の先で強く地面を叩く。強い風が俺たちの体を襲う。校庭の砂……土……それらが竜巻上に舞い上がり、風で作られたオリとなって俺たち4人を閉じ込めた。敵の姿も茶色い風にかき消されて、もう見えない。


 「……」


 頭上の空すら風に阻まれてうかがえない。完全に動きを封じられた。無理に通ろうとすれば、体が砂利のミキサーにかけられてしまう。さて……どうしたものか。


第122話の5へ続く

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