表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
524/583

第122話の3『退学処分』

 「誰だてめぇ!」

 「ろうかで騒ぐな。大うつけ者」


 俺の目の前で言い争いが起きているのだが……その様をいえば、グロウがグロウに怒られている状況である。はために見たら異様な光景なのだけど、姿は同じでも口調や態度は異なっており、どちらが本物かは一目瞭然だ。これだけ違うとなると、敵は俺たちの動揺を誘う目的じゃないのか?


 「お前はあと、5点で退学処分だ」

 「……訳のわからねぇことを……うせやがれ!」


 蛍光管の赤い光の下、刀がかち合い火花が走った。グロウとグロウが同時に刀を抜き、同じ形の武器が同じ姿勢でぶつかっている。太刀筋すら見えない素早い抗戦の中、先に体勢を崩したのは俺たちに近い方のグロウだ。あしらうように腹へと蹴りを入れられ、刀だけは下ろさぬままに片手をついて踏みとどまる。


 「くっ!」

 「生徒会役員への反逆につき、お前はあと4点で退学だ」

 「ちっ……」


 せまい廊下では戦いづらいと見て、開いている窓から外へ出る。だが、偽物の方はグロウのあとを追わず、改めて俺たちの方へと向き直った。


 「イレギュラーの排除。魔王様の命により、生徒会がお前たちを処分する」

 

 生徒会……この学校で生徒会長といえば、ミスコンテストにも名前があった積出玲つんでれいだ。すると、やっぱり最後の敵は彼女なんだろうが……あちらの偽物のみなさんは何をするでもなく、俺たちに厳しい目を向けている。なんだ?


 「……」


 敵側にいるのは偽物のグロウとヤチャ、仙人とルルルだけだ。どうして、俺とゼロさん、ゴウさんはいないのか。そして、当の生徒会長は見当たらないが……。


 「テルヤ。あそこ」

 「……?」


 校内の影になっている部分をゼロさんが指さし、そちらに俺も目をこらしてみる。わずかながらに、影が水のにじみに似て動いているのが解った。影から黒い線のようなものが出ていて、それがニセモノの人たちに繋がっている。あちらが本体か。今度はルルルの偽物を使って、敵が俺たちに語り掛けてくる。


 「私は、お前たちを見張るだけ」

 「……見張るだけ?」

 「校則を破るまで、退学処分を受けるに至るまで、ただ見張るだけだ」


 グロウは相手に手を出したから、制裁として攻撃を受け、なんらかの減点をくらった。さっきグロウの偽物が言っていた退学処分というのは、魔王城を追い出されるということだろう。俺にとっては死を意味するかもしれない。


 「……!」


 突然、学校のチャイムが鳴った。こんな夜に授業があるとも思えず、行内には生徒や教師だっている様子はない。なんの合図だろうか。


 「下校時間を超過している。現在時刻は夜8時」


 ニセモノのヤチャが言う。ヤチャの姿で普通にしゃべられると、いささか違和感があるが……それは今は問題ではない。下校時間を過ぎたということは、もう校内にいるだけで校則に違反しているともいえる。


 「……あ」


 なんだろう……チャイムを聞くと、ちょっとだけだが偽物の雰囲気が変わった気がする。見た目に変化はないのだけど、より威圧的なオーラが感じられる。かといって、襲ってくる気配は見当たらない。


 「テルヤァ……オレサマ、やる……ぞぉ!」


 ヤチャの言う通り、敵を倒さなければ魔王の元へは行けない。なのに、攻撃すれば何かのポイントが減点される。このまま手をこまねいていれば、時間と共に取り締まりが強化される。どうしたらいいのか。先手必勝の線もありえるし、一概にはヤチャを止めるのも得策でない。


 「ヤチャよ。待て」

 「ぬぅ……」


 俺が止めるより早く、仙人がヤチャの肩をつかんだ。うかつに手出しすれば、何をされるか解らない。その点、仙人も気づいているようである。どうか対抗策に迷い、俺は仙人に相談を持ち掛けた。


 「仙人……どうしましょうか」

 「わしがやる……」

 「……?」

 「わしが、先にやる」


 ……?


第122話の4へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ