表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/583

第37話の1『告白』

 《 前回までのおはなし 》

 俺の名前は時命照也。恋愛アドベンチャーゲームの主人公なのだが、気づけばバトル漫画風の世界に飛ばされていた。魔王四天王の一人であるジ・ブーンより命からがら逃げ延び、俺たちは姫様たちの故郷である王国へと急いでいるところ。


 王国へ到着するまでには半日くらいかかるらしく、それまで俺たちは運転しているルッカさんの背中と、果てしない大海原を眺めている事となった。爆走しているボートの中は水浸しで、ずっと浸かっていると風邪をひきそうだったからして、俺とゼロさんはボートの後部にある平台のような場所に乗っている。


 「エビゾー殿。こちらの方角で問題はないでしょうか」

 「オゥケーイ」


 周りに目印となるものがないのと、夜が明けていない都合から、ルッカさんはエビゾーさんが持っている方位磁石を頼りに舵をきっている。姫はジ・ブーンの騒動で疲れたのかボートの淵に突っ伏したまま眠っており、そちらをゼロさんが虚ろな瞳で見つめている。なお、ゼロさんの目が虚ろなのは、この姿になってから常時である。


 「……勇者、すまない。またしても、手をわずらわせた」

 「……え?いえ。むしろ、俺の方こそ助けてもらってばかりですよ」


 なんだかゼロさんには謝られてばかりだが、トータルでは俺の方が謝るべき事は多い見積もりである。きっと高飛車な性格の人がヒロインだったら、俺は何度もボコボコにされていたんじゃないかと思われ、それも踏まえて……。


 「俺、ゼロさんがいてくれて、本当に良かったと思ってます」

 「……しかし」

 「それとですね……俺も言ってなかったことがあるんですが……」


 多分、ゼロさんに限らず仲間になってくれた人たち全員、俺の正体が判っていないから何を任せればいいのか、もしくは頼りにしてもいいのか、そこが理解できていないのだ。とはいえ、さすがに『俺、バトル世界の人じゃないです』と言ってみても仕方はないのだが、普通には戦えないという事だけは正直に伝えておきたい。


 「なるべく、役には立とうと思いますし、みんなを助けるつもりでは動きます……けど、俺には普通に戦う力はありません」


 「……えっ」


 ゼロさんの中で、どのように俺の姿は映っていたのか。なんの肯定も否定もなく、ただの驚きが返ってきた。思えば、ワルダー城へ乗り込んだ際にはゼロさんもいなかったし、キメラのツーさんと戦った時もゼロさんは先に食べられていたから、俺が戦っている場面をまともに見た事がないのだ。むしろ、俺の方こそ戸惑いつつも、ほそっちょろい腕を見せてみる。


 「この腕、修行してきた人間の腕に思えますか?」

 「……私は良いと思うぞ」

 「あの。そこは気をつかわなくていいので……」


 あまりに俺が貧弱だったからか、フォローを入れられた……だが、そういう話ではない。とどのつまり、俺にできることは他にしかない。


 「困ったことがあったら全部、俺に任せてください。絶対に助けてみせますから」

 「……どうやって?」

 「それは……その時に考えます」

 「……解らないな」


 そういいつつ、ゼロさんが控え目に俺の肩を抱いて、そっと寄せるように肩を押しあてる。重いな……でも、温かい気持ちだ。この期待に俺は応える。たぶん、それが俺の役目なんだと思う。


 「……皆様。前方に謎の老人が」

 「謎の老人……ッ!」


 いい雰囲気の中にルッカさんの目撃証言が飛び込んできて、なんだか急に目が覚めた……。


 第37話の2へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ