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第120話の3『図書室』

 「お兄ちゃーん……えっと、あの敵は?」

 「ああ。今のところは、大丈夫……ゴウさんが足止めしてくれてる」


 敵の下をくぐって廊下を戻ったところ、T字路でルルルや仙人、ヤチャと再会した。敵が迷わず俺を追いかけた次第、その様子を見て戻って来てくれたらしい。ルルルの呼びかけに応じたと同時に、窓の外からも声がした。


 「勇者。あいつは……ッ!」


 カラスの姿のグロウが窓ガラスに激突している……割って中に入れると思ったのだろうが、この学校は普通の建築物ではないので、壁などを破壊するのは困難である。ぶつけた顔を赤くしながら、人の姿に戻りつつ中へと入ってきた。


 「まあ……なんだ。あれが幻でもねぇ限り、どっかに弱点はあるんだろ?そいつを叩こうぜ」

 「だよなぁ……」


 極めて合理的な判断をグロウに投げられる。幻か……でも、ヤチャの放った魔力砲は確実に当たっていたし、ゴウさんの作った光の壁にも動きを封じられていた。コンテニュー前に入った城が敵の変身したものだとすれば、触ることもできる。幻ではない気がする。


 「……」


 いや、触れるから幻ではない……が、あれが本体ではない可能性はあるのだろうか。何かヒントはなかったか?コンテニュー前の記憶を呼び戻す。そういえば、入った途端に俺が死んだ部屋……あれ、なんの部屋だったんだろう。今いる魔王城と偽の魔王城の構造が全く同じならば、こちらの魔王城にも、あの部屋はあるに違いない。


 「ちょっと気になる場所があるので、行ってもいいですか?」

 

 いつまでゴウさんが白い恐竜を閉じ込めておいてくれるかも解らないし、早く対処しないとゴウさんだって危ない。他のみんなも敵を攻略する方法が思い当らないようで、俺の提案に黙って頷いてくれた。妙に静かな校内を、階段のある方へと目指して歩き出す。


 入った途端に死んだ謎の部屋へ、今から調査に向かうのである。怖くないかと言われれば非常に怖い。あの部屋は階段を上がってすぐ、4階にあったはずだ。怪しい物音の1つも聞くことなく、俺たちは部屋の前に到着した。


 「図書室か……」


 ここは図書室だったのか。扉は開いている。コンテニュー前に入った時とは違い、暗いながらも室内は見える。一応、慎重に慎重を重ねて、近くにあったホウキを部屋へと投げ入れてみた。カランカランと音はするが、ホウキは消滅したり、バラバラに砕け散ったりはしていない。


 「ルルル……ここ、何か感じるか?」

 「何かはある……けど、よく解んないんよ」


 やっぱり、ここに敵の何かがある。図書室……確か、俺の知ってる恋愛アドベンチャーゲームのヒロイン・小和井夢子は、妄想にふける癖のある図書委員だったな。あの恐竜が魔力で生み出されたものだとすれば、本という情報の集合体である、ここに本体がいるはずだ。


 「行きます」


 念入りに部屋の中をのぞいて、俺は部屋に足を踏み入れた。蛍光灯のスイッチを入れてみるが、灯りはつかない。まずはカーテンを開いて、部屋に光を取り入れよう。そう考え、窓のある方を目指して進む。すると、急に周囲が白い輝きに満ちて、唐突なことに俺は目を細めた。


 「……?」


 空だ。青くはない。白い空。太陽。俺の左右には高い壁のように草木が切り出されている。全て白い。色のない世界だ。また死んだのか?天国かとも思ったが、でも呼吸は続いている。


 『入ってこないで』


 女の人の声がする。どこからだ?声に数秒だけ遅れて、正面にある道の先に、大きな本が現れた。あれは……なんだ。


 『あなたじゃない』

 「……?」

 『ここは、私が、魔王様が作った。私の世界……だから、入ってこないで』


第120話の4へ続く

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