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第36話の3『相談』

 酸欠と水圧と恐怖とショックと鼻から入った水と……その他もろもろの効果てきめんにて、俺の顔色は非常に悪いらしい。ゼロさんが背中をさすってくれている。


 「勇者……大丈夫か?」

 「すみません。ジ・ブーンを仕留めるには及ばなかったみたいです……」


 口移しで酸素でももらえたら嬉しかった……などと気楽なことを考えてみるが、そんなことは助かった今だから思えることである。ぼやけた月を見上げながら、気持ちと呼吸を整える。俺たちが乗っているボートらしき乗り物の中には水が溜まっていて、今も俺の下半身は水に浸かっている。


 ボートを運転しているルッカさんと、座ったままヤリを携えているエビゾーさん、俺の反対側に乗っている姫。あとは、ゼロさんと俺……とりあえず、全員で脱出を果たしたようだ。幸い、ゼロさんとエビゾーさんも出血する程の傷は見当たらない。


 ただ、いつ追手が迫るとも解らないので、ボートは水の上を不思議な力で爆走している。いや、よく見るとボートの両脇にアヒルの足みたいなのがついていて、それがバババと水をかき進んでいるようだ。う……水が入ったのか、耳が痛い。


 「しかし、城へ攻めてきた日といい、やつは何故、姫様をつけ狙うのでしょうか」

 「そりゃあ、姫様の美貌に目が眩んでの所業!十中八九、そうに違いない!」

 「それは……ないでしょう」


 ルッカさんとエビゾーさんの会話を姫が否定しており、失礼ながら俺の目から見てもジ・ブーンは姫様を好いているように見えなかった。自称・恋愛のスペシャリストたる俺が言うのだから、恐らく違いない……。


 それはともかく、ジ・ブーンが城へ攻めてきたという情報が出た上、姫を含む3人が辺鄙な場所に隠れていたとなれば……王国で何かがあったと考えて相当である。耳の痛みが引いてきた時期を見て、そこはかとなく事件について聞いてみる。


 「そこのところ、詳しく話を聞かせてもらえますか?ルッカさん」


 「ええ。以前、我々の王国にジ・ブーンが攻め込みました。緊急避難通路にて、私とエビゾー殿は姫様の退避に成功したものの……一向に本国からの連絡がなく」


 「ああ!居場所がバレたのは、お前が地上で叫んでいたからだぞ!知らんかったとはいえ、反省しろ!」


 知らずにやったことを反省させられるとは……これが社会の厳しさか。エビゾーさんに軽く頭は下げつつも、俺は王国へ戻ってみることをルッカさんに提案してみる。


 「王国で何かあったのかもしれません。見に行ってみるのは、どうでしょう」

 「エビゾー殿。どうされますか?」

 「……このまま海を漂い、囲まれるのを待つのは馬鹿者よぉ。行くぞ」

 「姫様……いかがなさいますか?」

 「お父様、お母様が心配です。参りましょう」


 姫のお達しが出たため、どこかにある王国へと向かう事となった。ただ、やっぱり王国って海底にあるんだろうなあ。俺が中まで入れるのか、それだけが考えるだけで悩ましい問題だ……。


第37話の1へ続く

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