第118話の5『理屈』
「……う~ん」
ゼロさんの後ろに回り込み、逆光をおさえて光の輪を観察してみた。言われてみれば、ちょっとばかり大きくなっている気がする。この大きさなら、今度は通り抜けられるかもしれない。
「よーし……おお?くっ……あっ……ダメだ。これ、ダメだ」
輪の中に俺の体は腰まで入って、もう通り抜ける分には問題ないのだが……そこから先が押しても引いても入らない。頭頂部に何かがつっかえている感じ。まだ、輪の奥は貫通していないのかもしれない。でも、どうして光の輪は大きくなったのだろうか。
「テルヤ。ダメそうか」
「もっと大きくしないといけないみたいですね」
でも、ちょっとは広がっているのは事実である。光の輪を落として転がしたら、いつの間にか大きくなっていたのだ。ということは、理屈としては……転がしてみたらいいのかな?
「……それ」
試しに光の輪を岩場に転がしてみる。軽く転がしただけなのに、光の輪が通ったあとには溝ができた。光の輪は重くもないし、ギザギザしている訳でもない。つまり、この光の輪が岩を吸収したと考えられる。
「おおお……おお……」
「……楽しそうだな」
「あ……すみません」
光の輪を自然物に近づけると、岩でも溶岩でも氷でも、どんどん光となって吸い込まれていく。それに伴い、光の輪は少しずつだが大きくなっていく。なんでも吸い込む掃除機を手に入れたような、楽しい気持ちになってしまった次第、ゼロさんにみっともないところを見られてしまった。
「ええと……」
情報を整理しよう。この光の輪は、どこか別の世界へと繋がっている。今は通り抜けられないが、自然を吸い込む事で大きくなる。そして、これが置いてあった台座のある場所は、吸収されない素材で作られていた。つまり……。
「ゼロさん。多分、どんどん吸い込んで大きくすれば、門が完成すると思うんです」
「どのくらい、吸い込めばいいのだろうか」
「それは解りませんけど……」
確かに……どのくらいの作業が必要になるのか。この場所にある自然物を全て吸い込まないといけなくなった場合、時間が幾らあっても足りない。それは考え物だ……ッ!
「……うわ。また地震だ!」
「おお、勇者よ!無事か!」
地響きが俺たちの元へと近づき、豪快に氷の山を砕いて仙人が現れた。背中にはルルルも乗っている。その後ろを……巨大な姿へと変貌した黄色い頭の竜が追随している。あれだけの大きな竜に成長していては、地面の揺れも酷いわけである。
「勇者!見つけたぜ!これ、どうにかしろ!」
今度は地面に空いた穴の中から、カラスの姿のグロウが飛び出してきた。グロウを追っている竜も土や岩を吸収して、更に大きくなっていた。どうにかしろと言われても……俺たちも逃げるしかない。
「ゼロさん!逃げます!」
「ああ」
光の輪を持って逃げ出そうとしたところ、俺たちの方へと進んでいた2頭の竜は急に方向転換を見せた。その代わり、グロウを追っていた竜が、もう一頭の竜と体をぶつけて合体し、仙人とルルルを引き続き追っていく。
「なぜ、こちらに!?さらばじゃ勇者よ!うおおおおおおおぉぉぉ!」
仙人が走り去り、竜の進行する音も遠くへと去っていった。追手から解放されたグロウは息を整えながら、俺たちの足元にゴロンと寝転がった。
「はあ……やろう……全然、攻撃が効かねぇ」
なんで、あの竜は俺たちを避けて行った?そして、グロウを追っていた竜は、どうして仙人とルルルの方へ合流したのか。いや……これって、光の輪とも関連しているんじゃないのか?
「……」
光の輪は自然を吸収する。竜も同じく、地面などを食べて大きくなっていた。門を開く為には、オーブが必要らしいし、オーブを落とした場所から竜は生まれた。これらは関連していると考えられる。
「……そういうことか」
段々と解ってきたぞ。この考えが正しければ……やりようはある。
「ゼロさん。すみませんが……お願いがあります」
「任せてくれ」
「……かなり危険が伴う仕事ですが」
「構わない」
即答に次ぐ即答である。頼もしいけど……その期待には、俺も必ず応えなければならない。覚悟はできている。でなければ、お願いもできなかったに違いない。
「……俺が門を開きます。その手伝いを、よろしくお願いします」
第118話の6へ続く






