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第35話の1『落下』

 《 前回までのおはなし 》


 俺の名前は時命照也。恋愛アドベンチャーゲームの主人公なのだが、気づけばバトル漫画風の世界に飛ばされていた。ヤチャを助けようとした反動で天高く飛ばされてしまい、そのまま気絶して無人島のような場所で遭難している。成す術なしかと腰を下ろしたところ、地面に穴が開いて落っこちた……。

 

 「おおおわああぁぁぁ!」

 「なああぁぁぁぁ!」


 岩盤が崩れて地中へと落下したのだが、そんな俺の下からも別の悲鳴が聞こえてくる。結果として、俺が開けた穴は1mほどの深さしかなく、何者かを下敷きになってくれたおかげで俺はケガもなく済んだ。


 「うわ……うわあぁぁぁ!だ……誰ですか!」

 「なんじゃー!お前こそなんじゃー!」


 勢いよく怒鳴られた拍子で、俺は謎の人物の上から飛び退いた。頭上より差し込む弱い光と、謎の人物が落っことした光る杖を頼りにし、暗がりにいる相手の姿を確認する。どうやら、鎧を着た魚人間のようだが……顔には髭のような、触覚のようなものがツンツンと生えていて、総合的にはエビにも見える。


 「上で騒いどったの、お前かー!敵に見つかるだろうが、バカヤロー!」

 「いや、なんと……すみません」


 すぐ命をとられる様子でもないようなので、ひとまず謝罪の意を見せてしまう。しかし、上で助けを呼ぶために叫んでいた俺も俺だが、この人のガラガラ声も大概の大きさである。おさまる事のない怒りに頭を下げ続けている中、頭上の穴からゼロさんが顔をのぞかせる。そちらへチラッと視線を移すも、エビの爺さんは再び俺に激昂を向けた。


 「よもや!このような場所までレデーをつれてくるとは!いかんせん、いかん!我は許さんぞー!」


 「しかし、このような場所に兵士姿とは、あなたこそ何をしているのですか?」


 「がっ……そんな事は関係なし!一切なし!立ち去れい!我が槍をかざさぬ内に!」


 言われてみれば、エビの爺さんの背中には槍が装備してある。しかし、8本以上もある鋭い手足の方が鋭く、それで刺された方が致命傷を負えそうである。上から落ちてきた時、下敷きにした部分が鎧だったのは本当に良かった。そう思っている俺をよそに、ゼロさんが俺たちの状況を説明してくれる。


 「ご老人。私たちは出ていこうにも、出て行く足がない。船などは、お持ちではないだろうか」

 「おお、遭難者でしたか。そいつは災難でしたな!」

 「そうなんですよ」

 「お前は黙れ!つまらんシャレはいらん!」


 女の人には優しい反面、男とダジャレにはキビシイ。ギザギザさんたちと話した時も思ったが、俺は血の気の多い人たちとは相性がよろしくない。あれこれといった交渉はゼロさんに任せよう……。


 「しかし、お前たちが化け物の仲間とも解らん。この先へ通すわけにはいかん!」

 「つまりは、ご老人。この下に何か隠しているのか?」

 「……いや!何もなし!我のパンツくらいしかない!見たいか?見たくないだろう!」

 「まあ、見たくないですね」

 「バカ!」


 交渉は任せようと思った矢先、ついつい口をはさんでしまい、爺さんにバカと一喝される始末。だが、この下に何か大切なものがあるのは確かと見える。地上にいても助けが来るとは限らないし、なんとかして信用してもらわねばだが……どうしたものか。


 「先程は、すみませんでした。パンツ、見せて頂けませんか?」

 「バカ!」

 「勇者……下着が見たくなったのか?」

 「そう言ったら、もしかして通してもらえるんじゃないかと思いまして……」


 あまりにも節操がなさすぎて、ゼロさんにも誤解を与えた……しかし、そんなゼロさんの『勇者』という言葉に反応したのか、エビの爺さんは声色を落ち着かせて、俺に指……手の先を向けてくる。


 「……勇者?これがかー?はははぁ!」

 「ははは」


 肯定しても否定しても変な空気になりそうで、なんとなく笑い返してしまった。すると、ゼロさんも俺の隣に降りてきて、服の下から取り出した赤いオーブをエビ爺さんに見せる


 「とはいえ、勇者は四天王を既に一人、倒した実績が……倒したのか?」

 「倒しては……いないですね」

 「さては!それが赤のオーブ!んじゃあ、お前!恐るべき魔王四天王の一角か!?」

 「そう見えます?」

 「いや、見えん!」


 なんだかフワフワとした会話になってしまったが、確かに俺自身はワルダーを倒してはいない。ただ、エビ老人も魔王四天王やオーブに関しては知識があるらしい。彼の反応からして魔王軍の手の者とも考えにくいし、ここはオーブを託してみるのもいいかもしれない。


 「俺たちが化け物や魔王の手先でない証拠として、このオーブを持っていてもらえませんか?」

 「ひょ……んなこと、言われても!だが……んん。よい!ついてこいやぁ!」


 ちょっと強引だったかもしれないが、なんとか道は開けたらしい。光る玉がついた杖を持ち上げ、それで足元を照らしながらエビ爺さんは地下へと続く通路を進む。俺たちは、そんなエビ爺さんの後に続き、薄暗がりの中を歩き始めた。


                                  

第35話の2に続く

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