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第34話の2『上昇』

 ゼロさんが何か思いついたらしいが、『バリアで上まで行けないだろうか?』というセリフだけでは俺の理解が追い付かない。と……急にゼロさんがバリアを解除した為、どっと水しぶきが押し寄せてきた。再びのビショビショに構わず、ゼロさんは水の中へと飛び込んでいき、何秒かするとイカダの下側からバリアが展開された。


 「あとは、このまま突っ込めば……」

 「……あぁ。なるほど。解りました」

 「んじゃあ、ギザギザたち、こいつを押し出せばいいんだな!」

 「あたちがイカダとバリアを繋ぎとめるから、あとはゼロさんたちに任せるんよ」


 バリアは平面というよりかは、ややお椀のような形をしており、下からすくい上げるようにして海水とイカダを隔てている。俺が作戦を理解したと同時、ギザギザさんやルルルも何をすべきか判断がついたらしい。そんな中、俺は手持無沙汰かつ出来ることが見当たらず、なんとなくファイティングポーズをとってみた……。


 「よしきた!サーモ!イクラ……じゃねぇ!クラゲ!3人で押し込むぜ!」

 「行くサーモン!」

 「行くラ!」


 ギザギザさんもクラゲさんの名前を間違うのか……などと気をとられた隙、掛け声もなく押し出されたイカダは溢れる水流へと切り込んでいく。水流に乗ったバリア付きイカダは水圧で壊れることなく上昇を始め、俺はイカダの揺れと強まった重力で尻もちをつく。


 「……あっ、いた!おーい!ヤチャー!」


 激しい水流の中でも俺の呼びかけが聞こえたのか、ヤチャと腕の形をした化け物はイカダの方を向く。ただ、こんな足元が大きく振動している状態では入れ歯を失った仙人も、イカダをおさえているルルルも、転んでいる俺も碌に戦えない。そんな中、悠然と立っているゼロさんは右腕を天へと向けており、なにかを狙いすましているかの如く動かない。


 こちらに気づいている腕の化け物は手を大きく広げて迫り、イカダごと俺たちを握りつぶそうと動く。まずい!そうは思いつつも行動不能となっている俺たちは成す術もなく、自動的に敵の手中へと収まった。


 なのだが……登りゆくイカダの勢いといえば撃ちあがる花火の勢いで、その中央には手を振り上げたゼロさんが立っている。ゼロさんの右手が腕の化け物へと撃ち込まれたら、どうだろう。まず、敵は一たまりもないはずである。


 「……ッ!」

 「ゴ……ゴハアァァ!俺様はぁ!」


 敵の中心へと突っ込んだイカダとゼロさんの拳は化け物を押しやりながら水流の果てを目指し、そんな敵の姿で前が見えない中、不思議とヤチャの苦しげな悲鳴も聞こえた。たぶん、化け物の後ろで巻き添えを喰らっていると思われる。


 このままではマズイと化け物サイドも勘づいたのか、こころなしか水の噴き出す威力が弱まるものの、それも虚しくイカダは水の流れをくんで飛び立った。ふと、敵の手の隙間からは空の青さが垣間見える。


 このまま宇宙まで突き抜けるのではないか。などと逆に冷静な状況判断ができてしまう程にパニクっている中、急にバリアとイカダが分離し始めた!何事かと横を見ると、なぜかルルルが目を回した様子で気絶しており、つなぎとめていた魔法も効果を失っている。


 「うわあああぁぁぁ!」


 引っ繰り返ったバリアから宙へと放り出され、上には海、下には空、すでに高さは解らない。その最中、水の噴き出しが弱まっている水の塔の奥で、何かが守られているように置かれているのを確認した。しかし、ぐるぐると目まぐるしく回転し始めた視界の中、俺は水の冷たさを感じるより先に意識を失った……。


第34話の3へ続く

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