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第34話の1『壁』

 《 前回までのおはなし 》

 俺の名前は時命照也。恋愛アドベンチャーゲームの主人公なのだが、気づけばバトル漫画風の世界に飛ばされていた。水の塔へと捕らわれたヤチャを助けるため、どうするべきか現在進行形で思考中である……というとカッコよく聞こえるが、ヤチャさえ諦めてくれれば勝手に上から出てこられる状況であることは見るに明らかである。


 

 「おーい!ヤチャー!戻ってこーい!」


 遥か上空、海面より噴き出し続けている水流の中で抗い続けているヤチャへと手を振ってみる。あちらも俺の姿は見えているのか、呑気に手を振り返してはくれている。しかし、声は届いていないのか、一向に戻ってくる気配はない。


 「よっしゃサバ!任せるのサバ!」

 「サバサーバは滝登りは得意だ!頼むぜ!ギャババ!」


 サバサーバさんが水流を登って、自ら閉じ込められているヤチャを助けてくれるつもりらしい。サバが川を登る魚だったかはさておき、海の問題は海の男にお任せしてしまうのも良いかもしれない。


 「行くのサバ!」


 サバさんが海の中へと消え、水中から現れた魚影は噴き出る水の塔を登っていく。そのスピードは目で追うのも大変な速さで、あっと言う間にヤチャのいる場所の辺りまで到達した。


 「うっ……さばああぁぁぁ!」

 「おっ……サバサーバが水から弾きだされた!タコ!イカ!受け止めろ!」

 「ギョイ!」


 水流から弾き出されたサバさんは遥か高所より落下を始め、水面間際にてタコさんとイカさんに受け止められる。ヤチャが殴ったとは考えにくいが、なにか他にいるのか。ふと、空を見上げた時……俺は水でできた塔の中から大きな腕のようなものが出ているのを見つけた。


 「なんだあれ?」


 ただ大きな腕といっても、それは腕だけでヤチャの体よりも大きく、その握り拳がサバさんを水流から追い出したに違いない。胃袋の化け物同様、こいつも腕のみが意思をもって動いているように見え、それ以外の部位は確認できない。


 「えっと……このままじゃ、ムキムキもやられるん?」

 「あ……確かに」


 化け物の謎めいた容姿に暫し呆然としてしまったが、ルルルの言う通りヤチャが危険だ。いや、あわよくばヤチャのことも追い出してくれるかもしれないし……事態は勝手に一進一退の攻防を見せている。そんな俺の思惑とは別にして、クラゲさんが何か戦いの実況をしてくれている。


 「あの筋肉ムキムキ人間、流されないよう戦ってイクラ!化け物と互角の勝負イクラ!」


 まことに残念ながら、ヤチャの泳ぎは依然として流れと互角かつ、化け物とも戦力で互角らしい。このまま敵を倒してくれたとしても水流との戦いが再開されるだけだし、負けたら負けたでケガをする始末。どちらにせよ、加勢にはいかないと。


 「どうにかして上まで行けないかなぁ」


 こういう時こそ思考を働かせないといけないのは俺なのだが、今回に限っては首をひねるばかりである。そんな中、ゼロさんが俺の背中をつついた。


 「勇者」

 「どうしました?」

 「考えたのだが……バリアで上まで行けないだろうか?」

 「バリアで?」


第34話の2へ続く

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