第106話の4『かわいい子が、かわいい事をしてるだけ』
「では、俺は修行に集中するので、あとは大賢者様にお任せします」
「うむ……うむ。何を?」
「その辺りで独り言を言いながら、だらだらしていていただければ……」
舞台は用意した。小道具もそろえた。美女もいる。これでしばらく、俺はお役御免である。大きな岩の上にペタンと座っている大賢者様は、俺の学生服とYシャツだけを身につけている状態だ。大きな胸のせいでボタンは全てとまっておらず、なのに胸のお肉はグッと服によせられて、深い谷間がエリの内にのぞいている。
「……んー。天気がよいよい日であるなぁ」
彼女の赤い髪は長くて毛量があり、束ねた髪の先はキツネのシッポのように膨らんでいる。大賢者が乱れた髪に手ぐしをかけて、からまった髪をサッと伸ばす。髪の赤色から炎から散るが如く、金色の輝きが太陽の光に照る。白い肌は太陽光を怖がる様子もなく、その証として肌には黒ずみ1つも浮かんでいない。岩の上に乗せられた太ももは太くて柔らかそうであり、岩の硬さにも負けてぷよぷよと軽く潰れている。
「眠い……」
そう小さくつぶやいて、大賢者様が岩の上に寝転ぶ。岩にほほを押しつけて、太陽の温かさと岩の熱さを楽しんでいる。ふとももの付け根は足先に隠れ、絶妙に裾の奥が見えない。寝返りをうって仰向けになれば、張りのある豊満な2つの胸が重量に引かれて、やや楕円に形を変える。そのまま逆向きに寝転んで、岩のふちから足をブラブラさせている。
「……ううんん」
20分ほど日向ぼっこを楽しむと、髪をぼさぼさにしながら大賢者様が体を起こした。近くに置かれている果物の1つ、ブドウのようなものを手に取る。
「ふふふ……」
嬉しそうに1房から1粒をつまみとり、皮をとらずに口の中へと押し込んだ。味は酸っぱいのか、口をむにむにさせてクチビルをすぼめている。
「んふふ……」
房についた身を半分ほど食べ終え、それを元あった場所へと戻す。今度はリンゴに似た果物に手をのばし、果物の真っ赤な皮に天の光を映している。そして、ちっちゃな口で果物に噛りつく。カポッと音がして、果物の一部が歯で噛み取られた。
「んっ……ん~……甘い」
そうして少しずつ、口いっぱいに果物をほおばっていく。食べるよりかじる方が早いので、次第にほほの中にリンゴがたまっていく。ほんのり赤く色づいたほほに、果汁のついた手をそえておさえる。ごくんと全て飲み込むと、口の周りをなめるようにして赤い舌をチロつかせた。
「んっん。食べたー。わらわも水で遊ぶぞ」
素足を岩から下ろし、ゆっくりと草原に足をつけて歩く。湖面に足の先をつけて、そこから広がる波紋をじっと観察している。足を深く水に入れ、波を立てながらジャブジャブと進んでいく。
「あー、冷たい。いいぞいいぞ」
服をぬらさないよう、ふとももが水に浸る程度まで見て進む。楽しそうに水を蹴って移動し、大賢者様は川へと入っていく。ゆるく流れる水に足を立てて、川の流れに逆らいながら歩いていく。
「あはは」
大賢者様は水と大いに戯れ、満足すると川から足を上げた。ふとももから下に水が滴っており、足を岩に乗せて足あとをつけている。思いつく限りのダラダラのんびりを行使したのち、大賢者様は大きな岩の上に戻って座り込む。そして、呆れたような声で俺に尋ねた。
「んん……満足したか?」
「あ……ありがとうございます。できました」
この作品の読者か視聴者、ユーザーかもしれない方々に大賢者様を満喫していただいている間にも、なんとか俺は湖の上に立つことに成功した。
第106話の5へ続く






