表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
423/583

第106話の1『何が起きたのか』

 《 前回までのあらすじ 》


  俺は時命照也ときめいてるや。バトルものの世界に割となじんできた恋愛アドベンチャーゲームの主人公だ。魔王四天王の最後の1人である師匠を倒すべく、大賢者様の元で修行に励んでいる。課題は……水の上に立つことだとか。俺にできるのだろうか。

 「……」


 修行終了のタイムリミットまでは、およそ3日と6時間程度。まだ時間はある。まだ時間はある。そう考えながら、自分に言い聞かせながら悠長にやっていたのだが……なんの進捗もないまま、もう丸2日が経ってしまった。残り時間は1日と少しばかり。さすがに焦ってきた……。


 「うりゃ!」


 俺は勢いをつけて湖へ飛び込む。チョポンと音を立て、俺の足は湖へと沈み込んだ。クツを脱いで、湖の底の感触を足の裏にこすらせる。泥が積もっているのか、ややヌルヌルザラザラとした質感が伝わってくる。このまま、立ったまま浮けばいいのだろうか。どうやって?体を軽くすればいいのか?


 「テルヤァ!メシ……だぁ!」

 「……俺、食べないで頑張ってみるよ。なるべく体を軽くする」


 頭をなやませている俺には構わず、ヤチャは果実を丸のみにしている。あちらは余裕しゃくしゃくといった態度であるが、俺と同様に大賢者様の課題はクリアーするに至っていない。岩を破壊しないことを目標としているはずなのだが、俺が見るにはヤチャの攻撃は威力ばかりが上がっていて、いいのか悪いのか修行は逆方向に成果を上げている。


 「もぐもぐ!もぐもぐ!」


 ヤチャのやつ、飯を食いながらも手に魔力を集めている。器用だな……。


 「そうだ……ヤチャ。俺、考えてたんだけど……」

 「はああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……ぬぬっ?」


 俺の声に気を取られて、ヤチャがよそ見をする。その直前に放った魔力の波動、それの軌道上に、なにやらタヌキみたいな動物が飛び出してきた。


 「ヤチャ!前!」

 「……ッ!ふうううううううぅぅぅぅぅ!」


 ヤチャは開いていた手を閉じて、魔力を止めようと試みる。ダメだ。食事の片手間に放っているとはいえ、その勢いはすさまじい。止まらない!当たる!


 「……ッ!」


 バリバリという魔力の弾ける音が響き、魔力の光も閃くようにほとばしる。その発光が、徐々に収まっていく。


 「……あれ?」


 消えゆく光の中に小さな影が見えてくる。そこにはタヌキの……いや、タヌキは無事だ。ケガをしている様子もない。ただ、酷く驚いた様子で、勢いよく森へと帰っていった。


 「……ヤチャ。今、何をした?」

 「……?」


 確かに攻撃はタヌキに当たった。岩にも当たったはずだ。でも、ヤチャの魔力は何も壊さず、一直線に森まで突き抜けていった。今までとは違う。何が起きた?


 「……あれ。ヤチャ、もしかして……できたんじゃないか?」

 「……ん?んん……おお!やったぞおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 偶然とはいえ、これは……成功したと言っていいのか?喜び勇んでヤチャは再び岩へと向けて魔力を放つ。景気よく岩は爆発した。


 「むう……?」

 「成功したのは偶然か……」


 無意識にはできたものの、やろうと思ってやれるわけではないらしい。でも、先程の要領が理解できれば、岩を砕かずに魔力を貫通させられる。それが解ったのは1つ進歩だ。ヤチャの体からはギラギラした色は抜けていて、すっかり人間の肌色に戻っている。今の一件を通して、聖なる泉で付加されたラックが消費されたとも考えられる。


 「……待てよ」


 ヤチャの魔力は岩を突き抜け、そのまま貫通していった。そして、水の上という特殊な環境とはいえ、俺の修行は、ただ立っていること。なんで俺とヤチャだけが、この島へと修行の為に連れて来られたのか。霊界神様や、大賢者様の意図をくんでみる。


 「……」

 

 解ってきたかもしれない。師匠を倒す。その方法が。


                                 第106話の2へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ