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第104話の6『俺、キマってる』

 「ヤチャとやらの居場所は、こちらだな」


 どこかの暗がりが壺の底に映し出され、気絶しているヤチャの姿も確認できる。見たところによると、洞窟っぽい場所だと解る。それはそれとして……。


 「さっきの。もうちょっと見たいんですが……」

 「気になるか?ならば、さっさと師匠を倒して、あの子に会いに行け」

 「ですか……」

 

 そういうことか。ゼロさんが姫様に何かされる前に、俺は自分の使命を果たさねばならない。そのためにも、まずはヤチャを見つけよう。俺は大賢者様の住む小屋を飛び出し、周囲の景色にヤチャのいそうな場所を探し始めた。


 「……ええと」


 右手の方角には俺が降りてきた巨大な樹木が立っており、小屋の近くには広い湖がある。島の全域は見通せないが、湖の向こうに山のような場所があるな。ヤチャの倒れている映像には洞窟みたいな背景が確認できたから、あの辺りが怪しいように思える。


 湖は太陽の光を返して輝き、その隙間からは深い水の底がうかがえる。ただ……どうも水の様子がおかしい。おかしいというか……むしろ、普通である。うまく説明できないが、水としての魅力がない……みたいな。湖の外にも中にもに生き物の影がないことを確認してから、俺は湖の水へと手を差し入れてみた。


 「……んん?」


 冷たくもない。温かくもない。手を動かせば水は揺れるが、俺の手が濡れたようにも感じられない。これは水か?いや、それとなく水らしきものだ。それが水の形をして、俺の目の前にあるだけである。これは、飲んでも喉の渇きは癒せなさそうだ。


 湖は底に足がつかないほどに深く、あえて泳ぐ必要はないから迂回して進む。湖のフチを歩きながら水の中をながめてみると、湖の中に四角い岩が沈んでいるのがうかがえた。湖面が揺らいでいて詳しくは解らないが、なんだか冷蔵庫みたいな形の岩であった。


 「……」


 天気はいい。だが、温かさはない。寒くもないけど、太陽の光から栄養を吸収できていないような体感。そのせいか、ものすごく疲れる。地面も地面で踏んでいる感覚が薄くて、さながらクッションの上を歩いている気分である。この島、おかしいぞ。


 「はぁ……はぁ……」


 精いっぱいの呼吸を続けながら、なんとか湖をやりきって森の入り口へと辿り着く。日陰に入ったら気持ちが楽になるのではないかと、木の下に転がり込んで尻もちをついてみた。


 「……」


 俺はポケットから青色のオーブを取り出して、力の限りパンと両手をあわせて叩いた。勢いよく水が噴出され、それを浴びてやっとのこと、俺は体に自然のエネルギーが宿るのを感じ取った。あぶねぇ……水が出なかったら、気絶するところだった。


 四天王のオーブ自体に魔力があるからか、使うと気力は奪われるものの、俺にも魔法っぽいことができる。生きている心地を求めて、俺は顔をビシャビシャに濡らしながら歩き出した。


 「……うぇっぶし!」


 水しぶきは気持ちいいのだが、さすがに寒くなってきた。くしゃみも出てしまう。でも、寒いのっていいな。生きてるって感じがする。こうして体を冷やしていると、今度は暖かさが恋しくなってくる。オーブを叩く手も疲れてきたが、今度は赤いオーブを取り出してバチッと火花をあげる。熱い。温かい。ピリッとする。


 「あー」


 オーブを使ったことによる気力の消耗と、この変な島に漂う変てこな雰囲気。意識を保つために浴びている水と火のマリアージュと、その他にも諸々。よく解らないけど、きっと意識朦朧ながらに俺は笑い声をあげつつ島をふらついている。


 「あはははは……あはははは……」


 そういえば、クロルさんから奪った緑のオーブって、まだ使ったことなかったな。これは叩くと、どんな効果があるのだろう。興味本位からオーブを持ち替え、俺は緑のオーブをパッと叩いた。


 「……」


 いい匂いがする。体にしびれが走る。頭の中が真っ白になっていく。なんか……なんだかもう……あああ……%’#)?($’#})=(’#’(((#’’$」」*‘‘{*${’$#(*+*+#+’<ー’!!‘‘$‘~|~~=%=~#~=+#$(。


                                   第105話へ続く


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