表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
407/583

第103話の3『風の向こう側』

 「勇者。皆よ。振り落とされるでないぞ」

 「ちなみに、仙人の次は誰が走るの?私?」

 「仙人が走るのに疲れてきたら、すぐグロウに飛び乗る感じで行きます」


 幼女のララさんに大勢で乗り込むのは無理なので、仙人が全力疾走に耐えられなくなった場面で、次はグロウの体にスムーズに飛び移ろうと思う。ヤチャはスピードを上げると魔力の発熱がともなうので、あまり長くは乗っていられない故にグロウへ2番手を託した。


 「おししょうさまあああああああぁぁぁぁぁぁ!今、行くぞおおおおおおおぉぉぉぉぉ!」

 「ヤチャよ……わしの頭の上で騒がんでちょうだい」


 あと、ヤチャは旅立って以来ずっと、お師匠様の身を案じていた訳で、つれていけるものならば師匠の元へとつれていってあげたい。なお、出発前にゼロさんが自分の存在意義について悩み出してしまう。


 「私、ここに残った方がいいのではないか?」

 「仙人……重いですか?」

 「いや?」

 「じゃあ、一緒に来てください……」

 「解った」


 ゼロさんが仙人から降りると、その分だけ軽くはなるのだろうが……俺は自分の足で魔力の床に立てない訳で、誰か足のしっかりしている人が一緒にいないとダメなのである。それもどれも、俺が普通の人過ぎて皆に迷惑をかけている次第、この話題になってから俺の声がいやに小さい理由が解るだろう?


 「ようし。そろそろ、わしは出発するぞ」

 「ひとまず、この先の角は右、左、左で、お願いします」


 四つ足の姿勢をとり、仙人が息を深く吸い込む。次の瞬間、周囲の風景がザワーッとぼやけ始めた。いや、もう仙人は走り出している。もう速すぎて風も感じず、周りの景色すらも真っ当に見えない。速さで頭がおかしくなりそうなのをこらえて目を閉じ、俺は脳内のマップで現在地を確認した。非常に速い……リアルタイムに俺は道順を口から出力する。


 「み……右、真っ直ぐ、右右左右下左右右斜め左上上下下左右左右」

 「後ろ!なんかヤバいのが来てるわよ!」

 「やろう!今度は追っかけてきやがったぜ!」


 俺が集中している最中、ララさんとグロウが背後から何か来ていると教えてくれた。何が来ているんだ?いや、そんなの確認してはいられない。というか多分、俺は後ろを見ても魔力がないから、それが目に映りすらしない。今はナビに徹しよう。そう考えた矢先、ゴウゴウという炎の音と共に、仙人のスピードが更に上がった。


 「……?」

 「追いつかれたら鍵に刺される!私が背中を押すわよ!着火!炎神気導えんじんきどう!」


 鍵……?鍵……そうか!あの逃げ回っていたのは鍵じゃなくて、俺たちを妨害する為に用意されていた敵だったのか。すると、一時たりとも立ち止まることは許されない。仙人は大丈夫なのだろうか。


 「おおお!すごい速度じゃあああああああぁぁぁぁ!ケツに火がついた気持ちじゃあああぁぁぁぁ!」

 

 とか言っているので、ララさんの炎に後押しを受けて、仙人の駆け足は絶好調らしい。本当にケツに火がついていなければいいが……ん?


 「あっ……ああ!」


 し……しまったああぁぁぁ!道を間違えた!ただちに俺は、発生した問題をみんなに明かす。


 「仙人!この先、行き止まりですうううぅぅぅ!」

 「な……なんと!」

 

 後ろから敵が追ってきている以上、行き止まりに到着したらやられるしかない。どうする。そう考え始めてすぐ、俺は仙人に叫んでいた。


 「仙人!俺とゼロさん、ここで降ります!」

 「な……なんで?」

 「仙人はUターンして、角があったら右へ曲がり続けてください!お願いします!」

 「え……なんで?」


 俺の予想が正しければ……多分、それで助かる!なお、次回へ続く!


                          第103話の4へ続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ