表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
397/583

第101話の5『見える見えない見える階段』

 光の巨人が作り出した階段は横に広く、でも手すりなどはないから気をつけないと落っこちてしまいそうだ。俺と仙人が先頭になって歩き、空に輝く太陽や、半透明な階段を透かして映る森などをながめつつ進んでいく。あまりに足場が高くて、恐怖心から目が眩む……こんな時こそ、上を向いて歩こう。


 「……?」


 視線を上げながらも足を踏み外さないよう、ゆっくりゆっくりと進んでいく。だが、途中から急に階段がなくなっており、どうしたものかと俺は仙人に相談の目を向ける。


 「……あれ?」


 立ち止まった俺とは違い、仙人は階段のない場所を踏んで先へと進んでいく。俺には見えていないだけで、本当は階段があるのか?俺の視線を受け、その場で仙人が振り返った。


 「どうしたのだ。勇者よ」

 「え……あ。いえ、階段が……」

 「……おお!」


 仙人は自分が階段のない場所に立っていることにビックリし、すぐに俺の横へと戻ってきた。もしかして……本当はあるのか?見えない階段が。


 「……」


 ビビりつつも勇気を出して、俺も階段が途絶えた先へと足をつけ……いや、つかない!落ちる!


 「あ……あぶなかった」

 「……?」

 

 そもそも浮いているララさんはともかく、グロウも俺の方を見て疑問を顔に露わとしている。これは……なんだ?いぶかしそうにしているグロウとララさんへ、俺の立場から見た説明をつける。


 「そこ、階段がないんですが……」

 「あるじゃねぇか……」

 「階段が、どうしたの?」


 グロウもララさんも、階段は続いていると答える。すると、俺の後ろからゼロさんが顔をのぞかせた。


 「私も見えない」

 「……ふ~む」


 仙人は階段があるらしい場所へしゃがみこみ、拳を振り下ろしながら階段の調査を開始する。仙人が力強くパンチを落とすが、その拳は空を切った。


 「……この階段は恐らく、大地の魔法で作られている」

 「大地の魔法ですか?」

 「魔力を感知すると実体化するが、そうでなくては足をかけることはできん」


 でも、さっき仙人……階段がない場所を歩いてたよな?そう考えたところ、俺の気持ちを察して仙人が解説をくれた。


 「あ……わし、この姿になってからは常に少し浮いてるから」


 足場がないのに気づいてから落ち始める描写というのは、カートゥーンの世界では頻繁に見かけるけど……それの亜種だろうか。それとも、足の裏に半重力装置でもついているのだろうか。ひとまず、仙人が器用なのは解った。


 「私が試してみる」

 「ゼロさん。気をつけてください」

 

 ゼロさんはクツについている装備を起動させ、光が十分に集まったのを確かめると、階段の消えている場所へと足を降ろした。踏みつけた場所からは波紋が広がり、一瞬だけ階段の輪郭が姿を現した。足の装置は腕についている物と同じく、魔法を使うための道具なのだと考えられる。ともかく、着地には成功したらしい。


 「ゼロさん。それも魔道具なんですか?」

 「腕だけでは不十分と考え、博士に用意してもらった」


 ゼロさんの足についている装置は改めてみると、それなりにガッチリしたメカメカしいメカである。このままいくと魔王軍と戦う時には、ゼロさんは全身ロボットみたいになっているのではいかと想像してしまう。そんなことを考えている俺の体を、ゼロさんが軽々と両腕で持ち上げる。


 「私がテルヤを運んでいく」

 「あ……すみません」


 そうか。ゼロさんが自分で階段を歩けるって事は、自立していないのはチーム内で俺だけ。これは……まさにお荷物と呼んで差し支えない。ちょっと恥ずかしい……。


                         第101話の6へ続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ