表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
390/583

第100話の4『どちらさまですか?』

 「ララさん。毒消しです」

 「精霊は毒になんないし……」


 さすがに3つ目の毒消しは必要ないと見て、ブシャマシャさんの宝箱に戻しておいた。ブシャマシャさんの部屋から通路へと出て、再びゼロさんのをいる場所を探す。したら、近くのトビラが静かに開き、中からゼロさんが現れた。


 「テルヤ。無事だったか」

 「あ……はい。まあ、俺は戦ってないですけど」

 「よく見えなかったが、飛行船で何があった?」


 ゼロさんが乗っていたロボの頭部からでは、飛行船の外で何があったのは見えなかったらしい。飛行船の上に出られそうな階段があるので、そこを登って飛行船の甲板へと出つつ、だらんと落ち込んでいる仙人を交えて事の一部始終を告げる。 

  

 「先程、仙人が敵の大将と戦ってくれたんですけど、相手は昔馴染みで恋敵だったようで……」

 「ああ。あの、前にも会ったやつか。ブシャマシャとかいう男か」

 「わしに未練はない……気にせんといて」

 「……」


 未練はないようだが涙は流れている訳で……しばし、そっとしておいてあげることにした。グロウがものすごいスピードでロボを飛ばしており、飛行船の外は風が強い。一旦、飛行船の中に入ったところで、俺は進行方向をゼロさんに尋ねる。


 「どっちに飛んだら、光の矢を撃ってきた敵のところに着きますか?」

 「調べてみる」


 ゼロさんの腕についている魔道具がモーター音を発し、内側からライトの点滅がうかがえる。数秒後、細い光の線が魔道具から放たれ、飛行船の壁へとぶつかった。


 「あちらだ」

 「グロウが動かしてるので……行き先も動いてますね」


 魔道具から放たれた光はロボの向きに応じて振り回されており、あとで改めて確認した方が間違いないと考えた。そんなことをしている内、どこかの部屋で電話の呼び出し音らしきものが鳴り始める。どこで鳴ってるんだろう。俺が周囲から音の出どころを探していると、先に発信源を察知したララさんが大きな扉に手をかけた。


 「ここじゃない?」

 「そこは……操舵室ですか?」


 ドアには魔導操舵室と書いてある。部屋は少しだけ開いていて、中には誰もいなさそうな雰囲気である。そっとお邪魔してみると、部屋の奥にあるガラスが割れ落ちており、その向こうにはロボの一部が見えていた。ずらっと並んでいるスイッチやレバーなどを注意深く見つめる。そのボタンの1つが点滅しており、そこから音が出ていることも解った。


 「……押してみます?」

 「危険ではないだろうか」 

 「多分、大丈夫だと思うわよ」

 

 ゼロさんには止められたが、ララさんから見ると危険なものではないらしい。その確証を求めて、俺たちはララさんに視線を向けた。


 「魔力も大して感じないし、発熱や発火しそうなものの気配もないし」

 

 そうか。ララさんは炎の精霊だから、爆発するものや発火するものに関してはスペシャリストだ。彼女が言うならば、きっと安全なのだろうとは思う。


 「心配なら、私が押してあげるわよ!」

 「あ……」


 ためらいもなく、ララさんがスイッチへと指を押しあてる。数秒のノイズが部屋に響いた後、若い男ものと思われる声が壁の穴から聞こえてきた。

 

 『ブシャマシャ。ブシャマシャー?いるかー?』

 「……」


 通信機を通して、相手の呼びかけが続いている。これ……きっと俺たちが声を出したら、相手にも聞こえるんだよな?通信機の向こうにいるのはブシャマシャさんの仲間か?とすると、ここで俺たちが返事をしてしまえば、ブシャマシャさんがやられた事実が魔王軍に知られる恐れもある。俺たちはアイコンタクトをとった後、忍び足で部屋から出ようと試みる。


 『もしもしー?』

 「……」

 『ん~。おかしいな……こちら魔王だけど、そっち誰もいないのか?』

 「……ッ!?」


 ……え?魔王?


                              第100話の5へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ