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第32話の3『海賊団』

 ヤチャと二人でアホっぽいセリフを飛ばしつつ敵の姿を見つめていると、敵は吐気を催した様子でグネグネと動き、大量の胃酸を吐き出し始めた。この場に留まっていては胃酸に飲み込まれる!俺は、すぐに非難行動をあおいだ。


 「ヤチャ!ギザギザさん!一旦、ここを離れましょう!」

 「だが、やつのせいで、ギザギザたちのアジトが……」

 「見たところ、海賊団の仲間たちはいないようです。他を探しましょう」

 「……やろう!覚えてろ!」


 海賊団のアジトである沈没船を半壊させたのはヤチャだった気がするが、ギザギザさんの怒りの矛先は完全に化け物へと向いている。そんな化け物も毒を喰らった苦しみに負けて逃げ出しており、この場では退治するに至らなかった。


 黄色い液体が美しい海に広がる。ヤチャとギザギザさんにイカダを押してもらい、なんとか胃酸の魔の手から逃れられる場所へ到着した。まだ水面は遥かだが、限られた空気の中で一息ついている俺の横にて、またまたツーさんが大声を張り上げた。


 『何かいるよね!何かいるよね!』

 「ええ?まだいるの?」


 他にも何がいるのか?周囲を見渡してみるが、魚の一匹も見当たらない。すると、ゼロさんがイカダのささくれをむしりとり、その鋭い木の針を水中の右後ろ斜め下へと投げつけた。白くて丸い目玉のようなものが遠くに見え、それはゼロさんの投げた木屑をふらっと避けると、水中の暗闇へと消えていった。


 一体、なんだったのか。でも、今はツーさんが静かになっている事からして、あれに反応したと見て違いないはず。ただ、追いかけるにしても……俺は少しインターバルが欲しい。


 「おい!早くやつを仕留めに行こうぜ!ギザギザ、待ちきれねぇよ!」


 「しかし、敵は我々の想像を遥かに上回る謎をはらんでいました。無策に深追いするのは危険かと」


 仲間の姿が確認できていないせいか、ギザギザさんの目は不安で血走っている。しかし、戦おうにも敵の正体が謎過ぎる……なんとかギザギザさんを引き留めようと御託を並べていると、どこからか大勢の男の声が聞こえてくる。


 「リーダー!ご無事でしタコ!」

 「リーダー!イクラ!」

 「リーダー!サバ!」

 「……おおっ!お前たちよ!無事だったか!」


 5人組の魚人間がイカダへと近づき、ギザギザさんたちは再会をいつくしむように肩を叩いたり抱き合ったりしている。どうやら、この人たちが海賊団のメンバーのようだ。魚というか……イソギンチャクやタコみたいな容姿の人もいるが、なんとか人の形は取り留めている。


 「よかった。仲違いではなかったようだな」

 「ですね。本当によかった……ひとまず、誰も死なずに一件落着したようで」


 そういうゼロさんに同意する形で、俺も心撫でおろしている。俺の『よかった』とゼロさんの『よかった』は微妙にニュアンスが違う気もするが、どちらにして有意義であることは間違いなかった。

 

第33話の1に続く

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