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第99話の1『メッセージ』

 {前回までのあらすじ}


 俺は時命照也。恋愛アドベチャーゲームの主人公なのだが、なぜかバトル漫画みたいな世界に飛ばされた。魔王四天王から3つのオーブを奪い取り、残るは1つ。四天王の1人であったクロルさんに話をうかがってみたものの、見事に空振りであった!

 「くくく……へへへへ……笑えよ。俺は惨めだろ?なあ?」

 「こっちが逆に困るので、開き直らないでください……」


 クロルさんからは特に有益な情報も得られず、更生していただこうにもひねくれすぎて俺の手には負えない。この人を改心させようとするならば、ドラマに出てくる伝説の教師でも連れて来ないと無理かもしれない。金髪先生とか、グレート先生とか……。


 「……ッ!」


 クロルさんと俺が他愛もなく会話している中、キメラのゴウさんが急に部屋から駆け出して行った。ヤチャも何かを察知したのか、すぐにゴウさんのあとを追う。何一つとして異変を感じなかった俺は、何かしらピンと来た様子のララさんへと視線を向けた。


 「……なんか街の方で、すごい魔力を感じたわ。私」

 「敵襲ですか?」

 「え……それは、わかんないけど」

 

 ゴウさんやヤチャの反応を見るに、霊界神様やアマラさんが戯れに放った何かではないだろう。もしかすると、捕えられたクロルさんの行方を追って、魔王軍が攻めてきた可能性も考えられる。悪い予感をおぼえ、俺たちもレジスタへと続く通路を戻り始めた。


 「博士。ここ、開けます」

 「ああ、いいよ」


 研究所からレジスタに繋がっている扉を開ける。砂や土ぼこりが扉の隙間から舞い込み、俺は手を止めて目元をおおった。むせ出る咳をおさえつつ、そのまま扉を大きく開く。


 「……?」


 街の中央にある広い吹き抜けには、巨大な光の柱……いや、矢のようなものが突き刺さっている。通路や足場こそ崩壊していないが、矢の放つ衝撃で床や建物にヒビが入っている。光の矢に圧倒された様子で、ゴウさんとヤチャが街の下方を見つめている。なにが起こっているのか、俺はヤチャに声をかけた。


 「ヤチャ!どうした!」

 「……テルヤァ……大変……だぁ!」

 「……大変なのか?」

 「大変……だぁ!」

 「……ええと……ゴウさん!どうしましたか!?」

 「……危険。高圧的魔力物質……高圧的魔力物質」


 この2人に聞くより、自分で見た方が早い気もする……そう考え直して、俺も街の吹き抜けがある空間をのぞいてみた。巨大な光の矢は街の途中で止まっていて、でもまだ勢いは死んでおらず、光の波を続けざまに放ちながら振動を続けている。ガガガガガと激しい音が鳴り響いており、近くで聞いていると耳が痛くなってくる……。


 攻撃的な音が次第に弱まり、光の矢はガラスのように割れて散り散りとなった。その破片が集まっていく。光の破片が繋がって、文字らしきものが表示されていく。ぼやっとしているが、なんとか文字の意味する内容が定かとなった。


 『いそやまゆうこ』


 ……誰だよ。


 「みんな、無事だったかな?」


 街の下層からアマラさんが飛び上がり、手すりを乗り越え俺たちの前に足を降ろした。光の矢を食い止めてくれていたのはアマラさんだったらしい。俺たちがクロルさんと遊んでいる間に何があったのか。俺はアマラさんにことの詳細を尋ねた。


 「俺たちは大丈夫ですけど……あれ、なんだったんですか?」

 「どこかから放たれたようだね。もう気配はないし、すぐに2発目はこないと思うが……」


 光の矢が飛んできたであろう空を見る。レジスタのてっぺんにあるガラス天井はバリバリに割れているが、攻撃を撃ってきた敵の姿は確認できない。しかし……こんな巨大な魔法の矢を、魔王の下っ端や野生の魔物が放てるものだろうか。


 「アマラさん……この攻撃って」

 「四天王。その可能性は高いだろうね」


 そして、矢が残したメッセージ。あれが四天王の名前なのかもしれない。しかし……『いそやまゆうこ』って、ダイレクトに日本人だな。そう思いながらも再度、光で書かれた文字を見てみた。


 『いそいで やままで ゆうしゃ こい』


 時間はかかったが全文、たりなかった部分まで表示されていた。でも、それはそれとて、山ってどこだよ……。

                         

                               第99話の2へ続く

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