表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
376/583

第98話の2『ここに3人の精霊がいるだろう?』

 「ヤチャ。そろそろお迎えが来てくれそうだから、服を着ておいてくれ」

 「オレサマ、このままでもいいぞぉ」

 「せめて下は履こうぜ……」


 ヤチャが丸出しにしている『それ』を、俺は身を挺して隠しているのだ。修行前の小さなヤチャと、今の鬼みたいな姿のヤチャの『それ』は全く大きさこそ変わっておらず、やはり鍛えても大きくなるものとならないものがあると教えてくれる。どうにか頼んで、ヤチャにはズボンだけは履いてもらった。


 廊下には旅館に来た全員が集まっており、青い精霊のリリーさん以外は浴衣から着替え終わっている。結局、ルルルは連れて行っていいものなのか。霊界神様に判断をあおぐ。


 「ルルルは、試練の続きをするんですよね?」

 「今しばらく、ルールルルルールールーは預からせていただく。勇者様の一行には、魔法使いが多く見えません。そこで……よろしければ、ララ、レーレ、ロッロの内、1人をお供にしてはと」

 「……リリーもいるですぞ!」

 「リリー……あなたは給仕の係です」


 ルルルは試練の件で神殿に残るとのことで、かわりに赤の精霊様か緑の精霊様か、黄色の精霊様をチームに入れてくれるらしい。後々に俺たちと合流するということでルルルも了承しているのか、俺には素直に頷いて見せている。そして、青い精霊様のリリーさんは、霊界神様の一存で残留が決まった。


 「勇者!私は炎の精霊ララよ!絶対に役に立つんだから!」

 

 そう言いつつ前に出たララさんは髪も服も赤色で、近くにいるだけで暖房器具のように温かい。見た目年齢もルルルと同じくらいなのでヒロインとしては認識されず、かつ非常に元気である。チームに入ってもらえれば、ルルルよりも協調性をもって行動してくれるだろう。


 でも、炎の魔法か……きっと岩や水の敵が出てきたら、魔法が効かなくて困惑してしまいそうに思う。鍵爪らしき武器こそ持っているが、そこまで攻撃力は高くなさそうである。そこをおぎなう方法として、俺はゲーム的なことをララさんに尋ねてみる。


 「ララさん……進化とかします?」

 「よく解ってるじゃない!私、可能性は無限大なのよ!」

 「ははあ……」

 「……あ、ワタシは緑の精霊・レーレです。戦いはトクイじゃないケド、治癒のマホウはスキですですヨ」


 レーレさんは服や髪に花の飾りがついているからして、きっと植物に関する魔法を得意としていると考えられた。他の精霊様よりも背が高く、身体的な年齢は俺と大差ないようである。性格的にも落ち着いていて、困った時には相談したら一緒に困ってくれそうである。


 しかし……植物のない場所においては、どのくらいまで力が発揮できるのか解らない。水の敵には特攻魔法も使ってくれそうだけど、もう海や水の中での冒険はとっくに終了している。なにより、レーレさんはスタイルが良いから、ちょいちょい目線を奪われるのも困りものである。


 「ロッロでしゅ……」

 「ロッロさんは……電気の精霊様ですか?」

 「土……地面でしゅ」


 ロッロさんの服や髪は全体的に黄色くて、黒い模様が入っているのも見えたからして、てっきり雷や電気の精霊様かと早とちりした。ロッロさんは地面タイプの精霊様らしい。まあ、この世界には電気で動くものがあまりないようだから、電気はメジャーな属性ではないのかもしれない。


 「……」

 「……でしゅ」


 物静かだ。ゼロさんに引けをとらない。ただ、地面や土の魔法となると、属性としての有用性は高いように考えられる。水場では燃えない炎や、荒れ地では生えない植物よりも、なるべく場所を選ばない。そういった点では、そばにいてくれると助かりそうではある。


 「全員じゃダメですか……?」

 「それは困ります……」


 欲張ったら霊界神様が困ってしまった。とはいえ、精霊様の同行をお断りするのも、あまり得策でない気もする。どうしたものか。周囲の反応をうかがいつつも、俺は答えを求めてルルルに話しかけてみた。


 「ルルル……どうしたらいいかな?」

 「リリー以外なら、誰でもいいと思うんよ……」

 「リリーも頼りになるですぞ!すばらしき水の精霊ですぞ!」

 「だってリリー、水をチョロチョロ出すくらいしかできないんよ……」


 それはそれで便利な気もするが、やろうと思えば俺も同じことができるのが難点である。しかし……よく観察していると、ルルルの視線はララさんに向いていて、レーレさんやロッロさんも、炎の精霊様のララさんをチラチラと見つめている。あ……。


 「えっと……」

 「私が一番でしょ!」

 「……」


 ルルルの試練で霊界神様を困らせたからか、俺たちの役に立つといわんばかり、ララさんの主張が激しい。それに周りも気づいているので、よって俺も空気を読むことにした。


 「……じゃあ、ララさんに来てもらっていいですか?」

 「でしょ?見る目があるじゃない!さすが勇者ね!」

 「ヨカッタです!さすがララですネ!」

 「ララなら安心でしゅ……」

 「お兄ちゃん……ララをよろしくなのじゃ」


 ……みんな優しい。いい子たちだ。


                             第98話の3へ続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ