表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
369/583

第97話の1『才能』

 {前回までのあらすじ}


 俺は時命照也。恋愛アドベチャーゲームの主人公なのだが、なぜかバトル漫画みたいな世界に飛ばされた。神様の案内を受けて聖なる泉へ傷をいやしに来たのだが、ルルルには神の力を会得する為の試練が課せられた。霊界神様を宙に浮かせられれば成功らしいが……。

 「実践あるのみです。さあ」

 「……おおおっ」

 「神通力は、腕の力ではありません。はなしてください……」


 ルルルが霊界神様の両足を抱いて、力任せに持ち上げようとしている。己の力で持ち上げろとは言っていたが、霊界神様のデモンストレーションを見る限り、そういうことではないのではないかと考えられる。なにより、俺の体が謎の力で浮かされているのが証拠だ……。


 「はぁ……無理無理なんよ」

 「ルールルルルールールー。自分の中にある力に問いかけるのです」

 「えっと……」


 霊界神様の言葉を受け、ルルルは両手を目の前であわせる。思いつく限り、自分の可能性について口に出した。


 「あたちは世界一の人気者で……スタイルがよくて……美人で……せくちーで……」

 「邪念が多いです」

 「ルールルルはダメね。私がやるわよ!かんたんかんたん!」


 ララさんがルルルの前に躍り出て、右手を霊界神様に向けてかざした。左手は目元にあてがっていてカッコいいのだが、そのポーズが神通力の強さに反映されるのかは不明である。ララさんの瞳が赤く光る……しかし、霊界神様はビクともしない。


 「あ……あれ?炎が出ないんだけど」

 「この地は魔断の際壁。魔法陣と周囲の岩壁により、一切の魔力が遮断されている。周囲の魔力を用いての魔法は使用できません」

 「ううううう……」


 ここへ来る途中、アマラさんが似たようなことを言っていた。俺は魔力については疎いから身体的に感じる変化はないが、ポケットの中にしまっておいたオーブは全て、この場所では黒い色へと変わってしまっている。あっ……。


 「おっ……あ……危ない」

 

 体がフワフワと浮いているからして、オーブの1つを落としそうになった。それなりに硬そうではあるから落としても割れないだろうが、のちのちになって壊れていたと判明してしまった場合、落とした俺の責任が問われそうな気がしないでもない。というわけで、そろそろ降ろしてもらいたい……。


 「霊界神様。お忙しいところなんですが……俺、地面に降ろしてもらえませんか?」

 「失礼しました……あまりにも軽いもので」


 軽いからといって浮かせてもらっては困る……ようやく俺も地に足がついた。やはり地面はいいものだ。その直後、霊界神様は石像でできた顔をルルルに向け、いいことを思いついたとばかりに提案する。


 「現在、最も軽いのは勇者様です。まずは、勇者様を浮かび上がらせてはどうでしょう」

 「え……一番、軽いの俺なんですか?精霊様たちもいるのに?」

 「軽さといえど、魔力の密度です。体重ではございません」


 ビックリした。この世界の人たちよりも筋肉がないとはいえ、さすがに精霊様より軽かったら自分で自分の華奢さにドン引きするところだった。ルルルとララさんはターゲットを変更し、俺に手を向けて力を発している。なお、魔力らしきものは全く届いている気がしない。


 「ララ。1つ、よろしいですか?」

 「なんですかっ!霊界神様!」

 「あなたにはできません」

 「え……」


 頑張っている最中で可哀そうなのだが、霊界神様よりララさんに対して、無能力判定が出された。まあ、ルルルの魔力が霊界神様に近いという話だったし、だからこそ神の力を解放する試練に連れ出されたであろうとは想像がつく。それでも納得がいかないとばかり、ララさんが涙目で訴えている。


 「また、そうやってルールルルを特別扱いしてる!いっつも、霊界神様はルールルルのことばっかり!私だって、がんばってるのに!」

 「みのる努力と、そうでない努力があります。ララ。あなたには、あなたにしかできないことがあります」

 「……私もやる。とめてもダメよ」

 「……とめはしません。その想いは受けとりました」


 それ以降も霊界神様はドンと構えてルルルを見据えており、ルルルとララさんは俺に手を向けたまま顔をしかめている。それをながめていたロッロさんが、微妙に眠たげな表情ながらに挙手する。


 「ロッロ……もどるでしゅ」

 「レーレもモドルです。リリーたち、シンパイしてるかも?」


 ロッロさんはルルルたちを見ているのに飽きた感じだが、レーレさんの言い分は間違いない。リリーさんやゼロさんが俺たちを探し始めない内に、2人には旅館の方へと戻ってもらった。かくいう俺も、ちょっと眠くなってきた。

 

 「ふぁ……ふぁいとー!」


 ララさんが勇ましく掛け声を発している。しかし、いつになった浮くのだろうか。そう考えながら見ていると、急に俺の体がわずかに浮いた。


 「おおっ」


 やった!で……どっちが俺を浮かせた?俺はルルルを見つめるが、あちらは首を横に振っている。ララさんの視線は俺の後ろに向いていて、そちらにいるのは……。


 「あ……すまない。できるんじゃないかと思って」


 アマラさん……なんでできるんですか。


                                第97話の2へ続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ