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第96話の6『試練って?』

 さすがにレーレさんとロッロさんの後ろには誰もいなかったので、尾行を尾行する尾行の連鎖は止まったと見ていいようである。通路は分岐が多い為、霊界神様を追っているララさんを見失わないよう、なるべく足音を立てずに俺たちはあとをつけていく。


 「……こちらへいらっしゃい。皆様。神は見ています」

 「……?」


 あたりは白い石で作れた洞窟らしき場所へと変わっている。最深部へ到達したのか、大きな魔法陣が描かれた広い空間へと辿り着いた。その部屋の中央で霊界神様は立ち止まり、じっと俺たちが隠れている方を見て、出てくるようにと促している。その声を受けてララさんは振り返り、俺たちが追ってきていたことを初めて知った。


 「……おっ!なによ!あなたたち!後ろにいたなら、い……いるって言いなさいよ!」

 「神は尋ねます。皆様、どうされたのですか?」

 「ロッロとレーレは……勇者様を見つけて、ついてきただけでしゅ」

 「ああ。私とテルヤ君は、ララさんを見つけて、心配だからとあとを追いました。だよね?」

 「……では、ララ。あなたは?」

 「……えっ!なんか、私だけ悪いみたいになってない!?」」


 ロッロさんの言い訳とアマラさんの言い分を得て、全ての罪がララさんに向かうスタイルである。でも、霊界神様は語気を荒げるでも、物音をたてるでもなく、特に怒りを表に出してはいない。こうなっては仕方ないとばかりに、今から何をするのか説明までしてくれる。


 「ルールルルルールールーには、これより神の試練を与えます」

 「……えっ?」


 本人、『えっ』とか言ってるんだけど、その心構えで試練を受けて大丈夫なんですかね……。


 「霊界神様……お菓子くれるっていうから来たのに」

 「時たまに、神は嘘をつきます」


 だましたのが霊界神様だからよかったが、小学生だったら登校初日で不審者に誘拐されそうな危うさである。それはともかく、ルルルは腕のケガを治したばかりだし、試練などを受けさせていいものだろうか。まあ、俺が口をはさむことではないお節介であろうが……話の流れで聞いてみる。


 「ルルルの腕は、もう大丈夫なんですか?」

 「……問題はないと見ていますが、ルールルルルールールー。具合は?」

 「もう痛くはないんよ」

 「よろしい……ルールルルルールールー。あなたは勇者様と共に行き、世界を救うサダメ。そのためにも、神の力を開放する必要があります」

 

 湯治を終えたら、ルルルは精霊神殿へ残るのではないかと考えていた。神様から旅のお許しが出たことに関しては嬉しいといえば嬉しいのだが、それに備えて苦痛の伴う試練を与えられるとなられは、ちょっと複雑である。俺自身、修行らしい修行や試練を与えられてこなかった人間である故、その分だけ他の人が苦労する羽目になるのは複雑である。


 「霊界神様……どんな試練なのん?」

 「……試練。それは」


 怖々と問いかけるルルルの声を受け、霊界神様は洞窟の高い場所に描かれている横線を見上げる。そして、試練の内容をルルルに明かした。


 「魔力をまとわぬ神通力。その力のみで、神の体を持ち上げなさい」

 「……神通力って何なんな?」

 「……ッ!」


 霊界神様の目が白く輝き、ルルルの体が浮かび上がる。そして、なぜか解らないが俺も!


 「このように、魔力を放つ要領で、己の力を解き放つのです」

 「そんなのやったことないんじゃよ……霊界神様、どのくらい重いのん?」

 「神の重さは……全世界、命の重み」

 「ふええ……」


 そう言って、神様はルルルの足を地に戻す。それと同時に、この試練が並大抵の難易度ではないと解った。だが、ビシバシとしごかれたり、痛い思いをする訳ではないと知って俺は一安心である。


 「ルールルルルールールー……やってくれますか?」

 「……」


 ルルルは同意を求めるように俺の方へと顔を向け、ちょっとためらいがちにも霊界神様へと視線を戻す。試練を受ける覚悟を込めて、声は控え目に頷いてみせた。


 「……あたち、やる」

 「……頼みました。


 試練について、ルルルは前向きな姿勢を見せている。がんばれ。ルルル。まだ俺は地に足がついていないが、少し高い位置から見守っているぞ。


                                第97へ続く


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