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第94話の6『草食と肉食と雑食』

 世界の改ざんについて気になる部分は多々あれど、これ以上は霊界神様に尋ねても予想の域を出ないだろう。こうなったら、事の真相については魔王へぶつけてみるしかない。そして、もし魔王が黒幕じゃなかった場合……引き延ばし感のある第2章へ突入する恐れがある訳だが、それは個人的に俺は嫌である……だって戦うの怖いし。


 「じじい、何を買ってきたのん?」

 「サラダだ」

 「……」


 買い出しを仙人たちに丸投げしたせいで昼食が全てサラダとなり、ルルルは信じられないとばかりに袋の中をのぞいている。袋の中から出てくる入れ物は、どれも野菜の緑がキラキラ眩しい。ポテトサラダっぽいものもあるにはあるが、大体は緑緑した野菜である。なお、野菜スティックもある。これで本当によかったのかと、俺は精霊様たちの心を問う。


 「これで良かったの?ラインナップ」

 「精霊が野菜以外、食べるわけないでしょ!?お肉なんてもっての他よ!」

 

 ……おかしいな。ララさんの言い分に当てはまらない精霊様を俺は知ってるんだが……その人の名前を言っていいのか?もしかして、言ったら霊界神様の神罰がくだる案件なのか?やめておこう……ものすごくルルルが不満げな顔をしているけど、俺は気づいていないふりをして仙人に話しかけた。


 「仙人って、野菜が好きなんでしたっけ」

 「わし、セントリアルで手羽先を食べただろう?」

 「ええ……」

 「……やっぱり、野菜だなって」

 「い……犬なのに?」


 肉食の体でも、歳には勝てなかったか。それはそうと、顔を曇らせているルルルに対して、仙人が草食についての是非を聞いている。


 「精霊様は、サラダもいけるか?」

 「え……あ、当たり前なんよ!精霊、肉は食べない!これ、精霊のおきて!」

 「……ぬ?そうだったか?」

 

 仙人の何気ない質問でボロがでてしまい、精霊様と霊界神様は視線をルルルに向けている。ルルルはケガした手で野菜スティックを持つが、痛くて上手く持てないらしく、ゼロさんが代わりに持ってあーんしてあげている。


 「ルールルルルールールー。肉を食したのですか?」

 「あ……んん」


 霊界神様の疑問を受け、ルルルが肯定とも否定とも取れない声を出している。しばしの沈黙をはさんだ後、ララさんが茶化すようにして続けた。


 「ルールルルは肉の味を知っちゃったわね。もう、昔のルールルルには戻れないわ……肉食の女よ!」

 「オー……ルールルル。オニクの味をシッタのね」

 「悪い子でしゅ……悪い子でしゅ……」


 ……あれ?なんか、別に禁忌にふれるような話ではないらしい。特にお叱りを受けるでもないと見て、俺は霊界神様に尋ねてみた。


 「……精霊様が肉を食べると……どうなるんですか?」

 「体に血が巡り……魔力によどみが発生します。そして……」

 「……」

 「多少、色っぽくなります……」

 「……ほお」


 多少、色っぽくか……言われてみれば今のルルルは……いや、別に色気はないな。うん。残念だけど、会ってから一度たりとも、なんにもないよ。


 「……お兄ちゃん……今、あたちのこと、やらしい目で見てたのん?」

 「いや、見てないけど?」


 事実、そんな目では全く見ていないし、見ようと思っても無理なので安心して欲しい。


                               第95話へ続く

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