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第94話の2『浮遊・脱出』

 「ルールルルルールールーは、自然の力の調和をとる存在です。ゆえに、存在していなくては魔力も本来の形を維持できません」

 「ああ……そういうことなんですか」


 ルルル自体が強い魔力を持っている訳ではなくて、ルルルがいないと魔力にまとまりがなくなる……つまり、ないと困る空気みたいな存在って事なのだろうか。でも、魔法自体は会ったばかりのゼロさんだって使っていたし、魔力の調和が取れないと、どんな不都合があるのだろうか。


 「いないと、どんなことが困るんですか?」

 「自然の力……魔力の純度が下がります。よって、精霊や神の力……自然が衰弱します」


 ルルルがいないせいで、他の精霊様も力が出せなかったし、霊界神様も魔力を制御できなかった。ついでに木や水といった自然の力も枯れてしまうという話らしい。でも、霊界神様の魔力に一番、性質が近いのはルルルだと、ララさんたちが言っていた気がする。だったら、いなくても問題はなさそうだが……。


 「失礼な話ですが……霊界神様の力では不十分なんですか?」

 「神の力は衰えを見せています。そして、その力を継承できるのは、ルールルルルールールー。この子だけなのですよ」

 「……うう」


 土下座していたルルルが、悲しいのか緊張しているのかといった表情で顔を上げた。となると、ルルルは将来、霊界神様のあとを継がないといけないのか。それはそれで重圧が凄そうだが……むしろ、俺は別のことが気になってルルルに質問した。


 「……ルルル。大きくなったら、霊界神様みたいな見た目になるの?」

 「ならないんよ……」

 「神は長き時を生きる中で、その姿を移し替えながら生きてきました。現在の姿も、借りの姿でしかありません」


 なるほど。とはいえ、大人になったルルルの姿が想像できない。レーレさんの例があるから、セクシーお姉さんになる可能性もなきにしもあらずだが、お兄ちゃん心としてはルルルには、ずっとちんちくりんでいてほしいというエゴもあります……。


 「勇者様。せめてもの恩返しを。神が、地上へ降臨いたします。お任せを」

 

 ルルルと霊界神様の間にあった誤解がとけ、霊界神様も少し心が晴れたように手を大きく広げた。俺たちのいる部屋はガタガタと音を立て、足元の床がヒビ割れを始める。そのまま、俺たちが乗っている床だけが持ち上げられ、壁のない場所から精霊山の外へと運ばれる。


 「ルールルルルールールーよ。魔力の酷使で傷ついた腕、必ずや元に戻します。安全な地へ戻るまで、しばし辛抱を」

 「霊界神様……うん」


 霊界神様の力があれば、ルルルの黒くなってしまった腕も治せるらしい。よかったよかった……が、山の外へ出た俺の下には遠くまで広がる広い大地があり、あまりの高さに俺は気絶しそうになった。近くにいた仙人の毛並みにつかまったら安心感があったので、その毛の手触りに意識を集中しながら地上へ着くのを待つ。


 「うむ。勇者……着いたぞ」

 「あ……ありがとうございます」


 大体、10分くらいかけて、俺たちの乗っている床は地面へと到着し、俺は仙人の声を頼りにして目を開いた。近くにニュフフンさん飛び降りており、元の姿に戻った霊界神様へと大きな顔を近づける。


 「霊界神様。先程は、ご無礼を……」

 「ニュフフンよ。暴走した神を、よくぞ止めてくれました。感謝いたします」

 「一度は撃ち落とされた身ながら、復活を果たしました。その節、復活にお時間をいただきました」


 撃ち落された……というよりも、撃ち落したのはメカに閉じ込められた霊界神様なのだが、そこに関しては双方とも理解を示した素振りで話を進めている。そういや、霊界神様たちは精霊神殿へ戻るのだろうか。だとすると、ここでルルルともお別れになってしまうが……そう考えていると、ゼロさんが遠くの空を指さしながら俺に告げた。


 「レジスタが来た」

 「こうして改めてみると、大きいな……」


 しばらく俺はレジスタの街の姿を探していたのだが、その空いっぱいに浮かんでいるものがレジスタの実態であると気づいた。見る見るうちにレジスタの街は俺たちの方へと近づき、その位置を合図するようにしてゼロさんが両手を上げている。傍目に見たら、UFOを呼び出している人にも見えなくもない。


 「ニュフフン!生きていたのだな!ジャジャーンである。はあ……はあ……」

 「ジャジャーン。なぜ、今頃になって」


 レジスタが俺たちの上まで来たところで、霊獣のジャジャーンさんが疲れた様子で俺たちの目の前に現れた。ジャジャーンさんには精霊のリリーさんをお任せしていたのだが、今はどこにいるのだろうか。その点について、俺はジャジャーンさんに聞いてみる。


 「ジャジャーンさん。リリーさんたちは、どうしたんですか?」

 「強烈な魔力の衝突を感じ取り、やはり加勢が必要と判断した。はあ……はあ……サカナカナとリリー様は精霊神殿で待機している!ジャジャーンが来たのだ!」

 

 来たのだ。と言われても、もう全て終わったあとなので、やってもらうことはなさそうである。ゼロさんが持っているガラス板の通信機を介して、博士がレジスタへ乗り込むよう連絡をくれる。


 『エレベーターを降ろすぞ。レジスタへ入りたまえ』

 「……よろしいでしょう。あちらへお連れします。神がお連れします」


 霊界神様が再び床を浮かべ、俺たちをレジスタの入り口まで運び始めてくれる。俺は落ちないようにと、再び仙人につかまる。俺たちがレジスタへ向かったので、自動的にニュフフンさんとジャジャーンさんが、その場に残される。


 「じゃーね!ニュフフン!ジャジャーン!」

 

 ララさんに手を振られながらも、地上にいる霊獣様たちは徐々に遠ざかる。やや顔を見合わせた末、ニュフフンさんは飛び上がってレジスタへと向かった。


 「ジャジャーン……では、このニュフフン。失礼する」

 「……ニュフフン。はあ……ジャジャーンも乗りたい」

 「……失礼する」


                               第94話の3へ続く

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