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第94話の1『謝罪状況』

 《 前回までのあらすじ 》

  

 俺は時命照也。恋愛アドベチャーゲームの主人公なのだが、なぜかバトル漫画みたいな世界に飛ばされた。四天王のクロルに誘拐されたルルルを助け出し、緑のオーブも手に入れることに成功した。精霊様や霊界神様も見つけることができ、俺たちは無事に精霊山をあとにしようとしている……。

 精霊山の内部を通り、俺たちは山のふもとを目指している。山の中に敵の姿はほとんどなく、出会っても俺たちの方が人数が多いので、魔物たちは戦う前に逃げ出してしまう。なお、レジスタの街が近くまで迎えに来てくれるらしいのだけど、山に接触する程の近さまでは来られないらしいので、入りやすい場所まで歩いて移動しているところである。


 実のところ、蝶の姿となったニュフフンさんが体に乗せてくれると言ってくれたのだけど、羽を動かすたびに鱗粉が飛び散るせいで、むせてむせて仕方なく断念した次第である。それを残念に思いつつも、俺たちは精霊様たちの入れられていたメカと出会った場所、ディスコみたいな部屋へと30分かけて辿り着いた。


 「……あ」


 俺の手にしている宝石が発光を始め、どうしたらいいかと俺はアマラさんに助けを求めた。


 「これ……こちら、どうしたらいいですか?」

 「ああ、霊界神様が元の姿に戻るようだね。下に置くといいよ」


 俺はアマラさんの言う通り、宝石を床の平らな場所へと安置した。どんな人が現れるのだろうか。俺が身構えるようなポーズで待っていると、宝石は輝きを増しながら大きな姿へと変化していった。


 「勇者よ……よくぞ。神を助けてくれましたね……」

 「……」


 まとっていた光の粉が散り、その中から身長3メートルはありそうな、女性の姿をした石像が現れた。石像とはいっても体の素材はダイヤモンドみたいにキラキラしていて、普通の人間と同じように動くこともできる。そんな大きな霊界神様に見下ろされてしまい、俺は圧迫感を覚えながらも頭を下げた。


 「ど……どういたしまして」

 「そして、皆さん……ありがとう」

 

 俺以外の人たちも霊界神様の御前とあって、緊張した面持ちでお姿を拝見している。霊界神様は丁寧に俺たち1人1人へとお辞儀をした後、どこを見ているのか微妙に解らない、黒目のない目でルルルを見つめた。


 「ルールルルルールールーよ。神は心配しました。とてもです」

 「う……」

 「心配しました」


 霊界神様は怒るでもなく、ただ無表情で心配した事実を告げている。ルルルは助けを求めるように俺を見るのだが、俺は約束した通り傍で見てるだけである。その内、ルルルは諦めをつけて土下座を始めた。


 「……すみませんでしたのん」

 「よいのです。神は悔やんでおります。あなたに誤解を与え、苦しめてしまいました。顔をあげてください」

 

 もっとガミガミと怒られるのかと思ったが、見た感じは凄く優しい。声も穏やかで、顔……顔は表情がないから解らないが、激怒していないのは確かであろう。じゃあ、ルルルは何に臆しているのか……そう思った矢先、次のセリフで神様の性格の片鱗が感じられた。


 「しかし、神は悲しみに暮れています。ルールルルルールールーが、神の召喚を拒んだ事実に」

 「……ん?」

 「神の頬を涙がつたいます。ルールルルルールールー。神がいけないのです。ああ、ルールルルルールールー。ああ」

 「あっ、ルールルルが霊界神様を泣かせたわよ!」

 「ルールルル!オワビの心です!しっかりオワビを伝えてクダサイ!」


 ララさんいわく、霊界神様は泣いているらしいのだが……俺には表情の変化が解らない。レーレさんいわく、おわびの心が足りないらしいが……ルルルは土下座しているので、これ以上は頭が下がらない。いじけてしまった霊界神様をなぐさめるべく、俺は場違いながらも口を出してみた。


 「あの……召喚を拒むとは?」

 「神はご説明いたします。精霊の子は契約者が魔法陣を描くことで、自在に居場所を転移可能でございます。ですが、呼び出される側が拒否を望む場合、召喚は失敗に至ります」


 仙人の召喚には応じていた訳で、つまりは霊界神様の呼び出しだけを拒否していたということだろうか。そこから導き出された結論について、俺は確認の為にルルルへと呼び掛けた。


 「……ルルル。お母さんを着拒したのか?」

 「すみませんでしたのん……」

 「よいのです……この悲しみは海より深く、神の心に突き刺さっていますが、よいのです。全ては、神の行いが間違っていたのです」


 霊界神様は霊界神様で落ち込むと立ち直るのに時間がかかりそうだし、ルルルのしたことを理解してみると、それはそれで酷いので上手くフォローもできない。そこで、俺は話題をすり変えてみることにした。


 「……そもそも、ルルルは自分が役に立たないと思って家出したみたいなんですが、彼女は何者なんですか?」


 霊界神様はうつむいた姿勢のまま、やや考えた末に俺の疑問に答えてくれた。


 「……神がお答えします。ルールルルルールールーの存在は……簡単に言えば、空気です」


 存在が空気って……とらえ方によっては悪口にも聞こえて困る……。


                               第94話の2へ続く


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