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第31話の1『交渉』

《 前回までのおはなし 》

 俺の名前は時命照也。恋愛アドベンチャーゲームの主人公なのだが、気づけばバトル漫画風の世界に飛ばされていた。魚人間に襲われているという村で魚人間を捕獲したところ、そいつは魚人間のリーダーであった。しかも、そのリーダーが掴まっているのに誰も助けにこないし、それを今から報告に行かされる俺……。


 「ギョハハハハ!絶望!絶無!凄惨な村の様子を見て声も出まい!ギョハハス!」


 と言っているのは木に縛り付けられている魚人間こと、魚海賊団リーダーのギザギザである。手足のウロコがギザギザしているから、それでロープを切って脱出できそうなものだが、それをしないあたり、案外ウロコはデリケートなのかもしれない。


 今日は、そんなギザギザ先生の所へ報告があって来た俺である。一応、ヤチャとゼロさんが後ろにいてくれているから、暴れ出したギザギザに瞬殺される恐れはないだろうが……それにしても、昨日の夜から誰もギザギザを助けに来ていないとは、同情もあって語りにくい事実である。


 「それがですね……来ていなくてですね」

 「何が?仲間が?」

 「ええ」


 明け方の空の下、じわっと雨が降りそうで早く村に帰りたい気持ちの中、無言でうつむいたギザギザの言葉を待っている。待っているが……黙ったまま彼は動かない。すると、急にゼロさんが……。


 「君、仲間とケンカでもしたのか?」

 「ちょっとゼロさん……」

 「き……嫌われてなんかないわい!みんな気の良いやつら!」

 「そうですよ。それに、まだ海の中を探しているのかもしれないですし……」

 「そう!それ!お前、ナカマ入れてやってもいい!」


 ゼロさんの発言を受けてギザギザがあからさま動揺しており、その変になった空気を静めようとしたところ、なぜか海賊団に誘われてしまった。泳ぐのは苦手じゃないが、水中で生活できないからお断りする他ない。


 「そこまでいうならよお!つれて行ってやるぜ!海賊団アジト!」

 「落ち着いてください……それより、なんで村の人々に魚を差し出すよう求めるんですか?」

 「それは……化け物だ」

 「化け物?」


 先ほどまで、あれほど威勢の良かったギザギザが、なにやら悔しそうに歯ぎしりを始めた。化け物……と聞くと魔獣が思い当るが、ツーさんを実際に近づけてみなくては判別がつかない。化け物について詳しく語るでもなく、次にギザギザは自分の行いを正当化しだした。


 「ギザギザたちは魚しか食べないが、人間どもは草でも土でもゴミでも食うのだから、魚くらいくれてもいいだろうに!」


 「草はともかく、土とゴミは食べませんよ……」


 「じゃあ、お前!化け物を退治しろ!すれば万事解決!」


 「えええ……」


 唐突な暴論が飛び出した。そもそも村を救う理由も、魚人間を助ける理由もないのだが、思わぬ仕事を叩きつけられてしまった。しかも、これで化け物が四天王と関係がなかった場合、実にくたびれ儲けだ。そんなことを考えている俺の反応が悪かったからか、ゼロさんが再び強い一言を入れる。


 「君、人にものを頼める状況なのか?」

 「ギザギザ。お前とは話したくない!マッチョもギザギザを見るな!黒い服のやつが好き!」


 なんか解らんが俺の好感度が上がっている……いや、他の二人の見た目が高圧的だから、対比として俺が普通に見えるだけだかもしれん。寝耳に水をふっかけられたが、俺たちも海の中のことについては詳しくない。むしろ、うまくいけば協力をあおげるかもしれない。


 「解りました。化け物退治、考えさせてもらいます。ただ、俺たちは海での活動に詳しくないので、そこのところフォローをよろしく頼みたい」


 「ギョハハ!今からギザギザ、お前たちの仲間!もう、縄はいらない!」


 そう言うと、ギザギザは張り詰めた筋肉を豪快に動かし、はりつけられている木を引っこ抜く勢いで縄を千切り解いた。前回、『縄をほどけ!』と言っていたのはなんだったのか。むしろ、うまく仲間に引き込まれた手前、意外とギザギザは狡猾なのかもしれない……。


第31話の2に続く

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