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第90話の2『人質』

 クロルの指示を受けて、まずは2体の人型の大きなメカが襲い掛かってくる。それを迎え撃つ形で、ゼロさんとバンさんが敵に対して駆け出した。敵のメカは岩のように大きな腕を振り下ろし、こちらを潰しにかかってくる。


 「……ッ!」


 ゼロさんが相手取ったメカは拳を叩きつけるより先に体を吹き飛ばされ、白い光をまといながら部屋の反対側の壁まで遠く打ち付けられた。腕の魔道具から強い魔力を放出したらしく、ゼロさんの装備は白い煙を上げている。


 「……そこ、どいてもらうぞ」

 「ううおおおおおぉぉ!」


 バンさんの正面にいたメカは組んだ両手を叩き下ろすが、内部爆発をする形で体を四散させた。攻撃を交わしたバンさんが敵の隙間から銃弾を撃ち込んだようで、メカの影からは銃を構えたバンさんの姿が現れた。なお、そんな様子を俺とカルマさんは普通に後ろで見ている。


 「どうやら、僕の出番はなさそうですね。始まる前から終わっている……」

 「カルマさんまで出番が来ちゃったら、その時は終わりの始まりなんじゃないですか?」


 そんな会話を俺がカルマさんとしている内にも、バンさんとゼロさんは立ちはだかる敵を次々と倒していく。残りは奥に控えている大きめのメカ2体だ。1体は胸に赤い光を浮かべている鳥の姿のメカで、もう1体は黄色く輝くライオンのような姿だ。その2体は俺達の方へ野獣の如き咆哮を放ち、体から放つ光を強めながら更に大きく口を開いた。


 「……勇者!くるぞッ!」

 「え?」


 ゼロさんが俺の方へと振り返り、何かマズイ気配を察したとばかりに叫んだ。そのすぐあと、鳥のメカは一直線に赤い熱光線を吐き出し、黄色いライオンは尖った岩の波を俺たちの方へと発した。それは物凄い勢いで俺とカルマさんのいる場所まで届き、俺たちはギリギリのところで壁際へと走って回避した。


 「あ……あぶなかった」


 服についた石のカケラを落としながら立ち上がると、すぐに俺は敵の方へと目を向けた。2体のメカは休む間も与えずバンさんとゼロさんに襲い掛かり、その爪や牙からは炎や岩の破片が飛び散っている。2人も回避ながらに応戦はしているが、他のメカとは違って簡単には攻撃が通らない。


 「ぼぼぼぼくは床……床なんだ……だから攻撃しないで」

 「……カルマさん!逃げ……うわっ!」


 うずくまっているカルマさんを助け起こしている最中、壊れたメカの残骸が近くに散らばっているのを見つけた。その中に……生き物の体を埋もれているのを見つけ、俺はビックリした拍子に持ち上げたカルマさんを落としてしまった。


 「この魔物……あのメカの中に入ってたのか?」

 「勇者さん……痛いです。僕に、なんの恨みが」


 てっきり自動操縦型のメカだと思っていたが、中に魔物が入っているということは……そこが弱点なんじゃないだろうか。俺は鳥のメカが放った炎から逃げつつ、交戦している2人へと叫んだ。


 「それ、中に魔物がいます!」

 「あぁ、なるほどな!」


 バンさんがライオンメカの攻撃をスライディングでかわし、内部へ通じているであろう口の中へと銃弾を撃ち込む。しかし、ノックバックこそあったものの、ライオンのメカはすかさずバンさんに爪を立ててきた。その攻撃からバク転で逃れつつ、バンさんが俺に結果を報せてくれる。


 「中まで攻撃が届かない!」

 「すみません!余計なこと言いました!」

 「目をつむれ!」


 アドバイスが役に立たなかったことを俺が謝罪していると、今度はゼロさんが腕の魔道具から光を放った。これは……敵を眠らせる魔法だ!すぐに俺はカルマさんの目元をおおい、自分も目をつむって光にそなえた。その後、ガンと床を叩く音が聞こえて、すぐに俺はゼロさんの方へと視線を戻した。


 「……大丈夫ですか!?」

 「かすっただけだ。光の魔法もきかない」


 ゼロさんのズボンが少し血で滲んでいて、足が震えているのも見て解った。敵は動きを止める様子もなく、ゼロさんに向けて2体がかりで襲い来る。


 「下がれ!」


 バンさんが煙幕つきの銃弾を放ち、視界を妨げつつゼロさんを俺たちいる場所まで連れて戻る。とはいえ、バンさんの攻撃をもってしても、相手を機能停止させるのは難しそうだ。そこで、ゼロさんがバンさんや俺に頼みを告げる。


 「魔道具の全力を用いて、敵を破壊する……時間がほしい」

 「どのくらいだ?」

 「そこまで長くはかからない」

 「解った!任せろ!」

 「できるだけ、俺も手伝います……無理しないでくださいね」


 ゼロさんが魔力を全開にして、敵を破壊すると宣言する。他に方法もない訳で、俺とバンさんは敵の注意をそらす行動にそなえて、走りだす姿勢のまま煙幕が消えるのを待った。だが、鳥とライオンのメカは俺たちの方をにらんだまま、その場から動かずにじっとしている。


 「な……なんだ?」

 『あー、そうそう。言い忘れてたな。まー、わざと言っていなかったんだけど』


 俺の疑問に答える形で部屋のガラス板にクロルの顔が映り、にやにやと笑いながら俺たちを見下ろす。もったいつけたような言い方で、クロルは俺たちに新たな情報を明かした。


 『それ。それの動力源なんだけどさあ』

 「……?」

 『神殿からさらった精霊なんですよ。魔力化して、アーマーに同化させてるんだ』

 「……ええ?まさか……もしかして」

 『勇者君。君は、察しがよさそうだ。破壊したら……解るよね?』


 うわぁ……ここで、その展開か。クロル。さすが四天王。汚い。


                                 

                                第90話の3へ続く

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