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第87話の6『潜入!精霊山!』

 「もうダメだぁ……おしまいだぁ。僕は死ぬんだ……」

 「カルマさん……戻ってこなくてよかったんじゃないですか?」

 「そういや、なんで君、いるんだっけ……」


 今しがた、バンさんがカルマさんの存在に気づいてくれた。実際問題、どうして危険だと解っていながら車に戻ってきたのが割と謎である。そして、こちらのセリフがカルマさんの主張である。


 「報告を済ませたので、戻って隊長に伝えないと任務完了にならないと思いまして」

 「カルマ隊員。すまないなぁ。なんか。説明不足だったようで」


 微妙にキレ気味なカルマさんにバンさんが謝っているが、まさか四天王がいると解っている場所の近くまで、報告した報告をしに戻ってくるとは誰も思うまい。普段は弱音をこぼしている割に、変なところでカルマさんは責任感が強いようである。しかし、いつから車に乗っていたのだろうか。早く気づけば、城に戻ってもらうこともできただろう。


 「カルマさん。ちなみに……どこで車に乗り込んだんですか?」

 「後ろから砂の波が押し寄せてきたところで、もう腹をくくって乗るしかないと」

 「……?」


 いつから車に乗っていたのかを俺は聞いてみたのだが、ずっと乗るタイミングをうかがっていたような返答に違和感を覚えた。あれ……じゃあ、いつから車の近くにいたんだろう。


 「えっ……いつ、車に追いついたんですか?」

 「ガケの下を出たところの辺りの近くですが?」

 「ずっとついてきてたんじゃないですか……なんで乗らなかったんですか」

 「もし車違いだったらイヤじゃないですか。万が一、魔物の車に乗ってみてくださいよ!僕に何ができるでしょう!ないですよ?なにも」


 つまり、早々と追いついてはいたものの、魔導力車に乗っているのが俺達だという確証を得られなかったせいで、車内の様子をうかがいつつ、ずっと尾行してくるという事態となったようである。もはや、行動と考えの一つ一つが合理的なようで合理的でなく、なにをしでかすか想像もつかない不確定要素の塊のような人と見た。


 「……ッ!なんだ?」


 モーター音にも似た低く強い響きが体に伝わり、俺たちは階段の上にある天井を見つめる。大勢の魔物が動いているであろう足音が聞こえてくる。魔導力車の爆発被害に対して処理にあたっているのだろうか。そんな中、ゼロさんがルルルのことを心配するように声を出した。


 「精霊様。車の爆発でケガなどしていないだろうか」

 「確かに……それは心配ですね」


 ルルルはヒロインではないから、俺のマップ探査でも居場所に名前が表示されない。見えているのはゼロさんの名前と、ミオさんも居場所が表示されている。ミオさんたちとは現在、それなりに距離が離れているな。あとは……精霊山が上に高すぎて、テッペンまでは表示されていない。


 精霊山は大規模に改造されているようで、山の内部には建物のような通路や階段が入り組んでいる。さらわれた人が捕らわれている場所といえば、地下牢か最上階と相場は決まっているが、俺たちは地下から潜入してきた訳で、あとは上に登っていく他ない。


 「な……何者だ!お前たち!」

 「みんな、伏せろ!」


 階段の出口が見えてきたところにて、そこをふさぐ形で敵の影が見えた。すかさず、バンさんが俺たちに頭を下げるよう伝え、ライフルから1発の銃弾を撃ち出す。銃弾は敵の足元をくぐるタイミングで火炎をまとって破裂し、苦しげな悲鳴を残して敵の影が吹き飛ぶ。まだ煙の残る階段の出口へとゼロさんが駆け込み、いくつかの衝撃音が聞こえた後、俺たちへ出てきていいと呼びかけをくれた。


 「敵を一掃した!こちらへ!」


 煙にむせながら俺たちも階段を上がり終え、白い鉄製の壁に囲まれた通路へと出た。付近にはフードなどに身を包んだ誰かが何人も倒れ込んでいて、恐らくはバンさんとゼロさんが倒した魔物と考えられた。すぐさま、通路の先にある階段を降りて、別の魔物の群れがやってくる。


 「侵入者だ……ッ!」


 俺たちを見つけた魔物の群れが戦闘係と報告係に分かれて行動を始めるも、すぐに全員が頭から煙を立てて倒れ込んだ。敵の追加が来ないことを目と耳で確かめつつ、バンさんが銃のリロードを行いながら俺たちに問いかける。


 「アマラさんほどの働きはできないが……引き続き、先頭は俺でいいか?」

 「……すみません。お願いします」


 人数だけで見たならば、俺たちのチームとアマラさん側のチームで別れた人数に大差はない。ただ、戦力的に見ると非常に偏っている訳で、そういう意味も含めて『すみません』と付けくわえておいたのは内緒である……。

 

                                    第88話へ続く 

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