第86話の4『戦闘力とかレベルとか霊力とか』
「聞いていいのか解んないっすけど、勇者の秘密ってなんなんすか?」
「それなりに重大な秘密なので、申し訳ないですが言えません……」
サーヤ様には簡単に話したが、俺が戦力的に弱いことを知っているのは他にゼロさんくらいだろうか。ヤチャは俺に謎の信頼をおいているし、ルルルや仙人も実のところは俺の力を把握していないと思われる。下手に四天王を倒したり、大会で優勝したりしているので、弱いと言っても信じてもらえないのも解らなくはない。
「強さが解んのか?んじゃあ、俺をはかれよ」
「いいぞ」
グロウがゼロさんに戦闘力をはかってくれるよう頼み、ゼロさんはガラス板を持ってグロウへと向けている。この2人が話してるの珍しいな……。
「計測中だ」
「ゼロさん。それ、何をもって戦闘力として数値を出すんですか?」
「……筋力や魔力、精神力などを総合的にらしい」
しばらくして、ピピピピピッという体温計みたいな音がした。ガラス板へ表示された文字へとゼロさんは目を細め、グロウの戦闘力を読み上げる。
「戦闘力……100」
「はあ。まあまあ、いいんじゃねぇのか?」
グロウは何をもってか知らないが、その数値にご満悦である。それは高いのか?
「ミオも計る」
「えぇ?私はいいっすよ」
「いいから」
色々と機能を試してみたいのか、ゼロさんは勝手にミオさんの戦闘力も計測し始めた。まあ……ルルルが苦しんでいるであろう今、こうして遊んでいるのもなんなのだが、神妙な顔をしていたところで到着が早まるでもない。ちょっと場の雰囲気を和ませるのもいいと思う。
「ミオ……戦闘力、98」
「はっ!やっぱ俺の方が強い」
「黒い人と2しか違わないことに逆にビックリしたっす……」
魔力のあるグロウと、そうでないミオさんが2しか違わないなら、むしろミオさんの方が強い気がしなくもない。マンガやアニメなんかでも『レベル』やら『霊力』やらで、強さの目安を表記している作品はあるが、こうして数値で見れると強さや凄さが解りやすいな。
「カリーナも計る」
「はずかしいわ……でも、折角だから」
「カリーナさん……ポーズつける必要ないんじゃないっすか?」
カリーナさんは両手を頭の後ろに持って行き、ちょっとセクシーなポーズでゼロさんにガラス板を向けられている。1分くらいして、カリーナさんの戦闘力が表示されたらしい。やや口ごもりつつ、ゼロさんが読み上げる。
「1……10……100……戦闘力、3400」
「あら」
「おい!そりゃあ、納得いかねぇぜ!もう1回、俺も計れ」
「ああ」
カリーナさんの戦闘力が桁違いだった為、グロウが計り直しを要求している。今度は座席と座席の間にある中央の通路に立って、グロウは空手の構えみたいなポーズで待機を始めた。ポーズ、関係あるんだろうか?
「……出た。戦闘力は……えー」
さっきとは違う数値が出たらしく、ゼロさんは桁を数えながら数字を読み上げる。
「……20500」
「な?」
「な?」と自信満々に言われても、別に俺はグロウの強さを疑ったりも皮肉ったりもしていない……しかし、どうして最初と違う数字が出たのだろうか。やはりポーズ……と思ったが、グロウの立っている場所の延長線上に運転席があって、なんとなく原因が判明した。
「アマラさんかな……」
第86話の5へ続く






