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第86話の1『いざ、出発』

 {前回までのあらすじ}

 俺は時命照也。恋愛アドベチャーゲームの主人公なのだが、なぜかバトル漫画みたいな世界に飛ばされた。敵のアジトである精霊山へ向かっている途中、霊獣のニュフフンさんと知り合う。精霊山へ向かうには、天から降ってくる謎の攻撃を避けて行かなければならないと聞き、その手段について話し合いをしている。


          ***

 

 「もしもの場合の話です。敵の軍勢を混乱させるには、こいつを爆破させるのが得策じゃあないですか?」

 「合理的なのだけど……もう少し、手心が欲しいな。もしもの場合は仕方ないがね」


 バンさんもバンさんで、これがアマラさんの車だと知ってて爆破しようと提案したらしい……別にアマラさんも怒っている訳ではないのだが、やはり損傷と全壊では気持ち違うようである。それを聞いて、車大好きグロウも反対意見を持ち出す。


 「これを爆破するなぁもったいねぇ。敵は全部、俺が殺すから爆破はやめろ」

 「そうか?すまない」

 「なるべくは乗って帰りたいからね。最悪の場合を想定して、適所適所で使用していこう」


 お互いに譲り合う形となったのか、聞く限りでは爆破も許容といった形でアマラさんが締めくくった。多分、バンさんとアマラさんは仲がいいから、それこそ遠慮なく意見を出しあえるのだろうとは思う。さすがに俺達やミオさんには爆破スイッチは押せないので、そちらに関しては責任者の方々へお願いしたい。


 「朝食も終えたところで、そろそろ出発したい。霊獣さんに聞いておくことはあるか?」

 

 全員の食事が終わったのを見て、バンさんが出発の準備を始める。ニュフフンさんに聞いておく事……は特になさそうだが、ここで話を聞いておかなかったら、精霊山への道中で俺たちはやられていたかもしれない。感謝の気持ちは伝えておこう。


 「ニュフフンさん。ありがとうございました」

 「勇者……霊界神様。精霊様を頼む……そして……」

 「……?」

 「この件が無事に終わるならば……霊界神様より、または我らよりお伝えする話がある。そういう事になっている」

 「……解りました」


 『そういう事になっている』……という不思議な言い回しが気になるが、まずは霊界神様を救い出せるか否かである。元はルルル奪還作戦だったものが、四天王を止めないと大変なことになりそうだと解り、すると兵器利用されそうになっている精霊様や霊界神様も助け出さなければならない……と、どんどんやることが増えてきた。どんな戦いになるのか、俺には想像もつかない。


 「じゃあ、出発しよう。霊獣・ニュフフン様に敬礼」


 ミオさんとバンさん、カリーナさんが礼を態度で示し、ニュフフンさんも軽く頭元を動かして見せた。運転はアマラさん、ナビゲートにバンさんが運転席へと入り、発進した車はサナギの隙間を抜けて外へ出る。空はサナギへ入る前と全く同じ暗闇であり、あれから一睡したとは考えても頭では信じられない。近くに敵がいないことを確認すると、崖の裏側から出る辺りで車の照明が強く切り替わった。

 

 改めて空を見る。黒い雲が空を覆い隠していて、星の一つも輝いていない。遠くの空、精霊山の上あたりでは雨が降っていないにもかかわらず、バチバチと雷が鳴り響いている。あそこに何が潜んでいるのか解らないが、その何かと戦闘になる可能性は十分にありうる。慎重に状態を見守ろう。


 「引き続き、こっちは私は敵が来ないか見ておくっす」

 「俺も、逆側を見ておきますね」


 ミオさんに言われ、俺も反対側の窓へ顔を向けた。サナギへ入る前と同じく、俺たちは敵の存在に気をはりつつ進む。今のところは敵がいないようであり、キメラのツーさんもリラックスして眠っている。


 「……ッ!」


 サナギを出発して1時間ほど経った頃だろうか。薄暗い森の中を魔導力車が進んでいく……その最中で、急にゼロさんが立ち上がった。窓の外へ視線を向けているが……何か見つけたのだろうか。


 「敵ですか?」

 「……どうだろう」


 いつもは魔物のオーラを感じ取ると声をあげてくれるキメラのツーさんも、見たところは眠ったままである。次第に気配は去ったようで、ゼロさんは席へと腰を下ろしつつ言う。


 「……野生動物かも解らない」

 「それならいいんですが……」


 またしばらくして、ゼロさんが窓に顔を近づける。また何かいたのだろうか。


 「ゼロさん。敵っぽいですか?」

 「いや……」


 やはり魔物ではなかったのか、またゼロさんは、ゆっくりと座り直した。野生動物でも、危険なものもいるかもしれない。そう考えたところで俺は、この森であまり野生動物と遭遇していないのを知った。


 「そういや、この辺りって、野生動物を見かけませんよね」

 「精霊山が出す濁った魔力を受けて……ここを離れたと見る」

 「なるほど……」

 「……ッ!」


 数分後、またしてもゼロさんは何か見つけた様子で席を立った。


 「ゼロさん。敵らしきものですか?」

 「いや……敵というか」

 「……?」

 「何か、見覚えのある影が見えた気がした」


 敵でも味方でもいいのだが……ゼロさんが落ち着かなそうだから早く出てきてほしい。こういう中途半端なのが一番、困る。


                                 第86話の2へ続く           


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